皆さん、こんにちは。岐阜大学6年の塩見です。

最近はコロナで色々と大変ですが、この記事では半年前に帰国した留学についてお話したいと思います。

 

2018年12月〜2019年11月の期間、アメリカのミシガン大学・心臓血管外科センターで、福原先生のもと、研究・実習をさせて頂きました。

留学するにあたり、大学は1年休学しました。私の大学では体調不良以外の理由でも休学が認められるので、有り難かったです。戻ってきた時には学年が一つ変わるので少し悩みましたが、このチャンスを逃したく無いと思い渡米しました。実際に、帰国後学年が変わったことに不便は感じていません。大学のことは学年LINEでの連絡で事足りますし、今はSNSが普及しているので、国家試験の情報も比較的容易に得ることができます。むしろ同級生が一つ上になったことで、様々なアドバイスを得ることができています。

 

研究については、第一著者では無いですが、計3本の論文を出すことができました。最初はカルテから簡単な情報を集めることから始め、徐々に統計ソフトを使っての解析もしていきました。まだまだ統計は勉強不足で、これから日本でも研究活動には携わりながら、統計の勉強もしていくつもりです。

また、アメリカでは大学生や医学生が研究をするのは一般的です。将来メディカルエンジニアになりたくて、研究をしに来ている高校生もいました。

 

実習では、手術、外来、ICU、勉強会など、様々なものを見学させて頂きました。また、ご献体での手術手技練習なども参加させて頂きました。

手術では、一般的な心臓血管外科のオペから、比較的難易度が高いオペなど様々なものを見学させて頂きました。一般的なものでは、TAVRやTEVAR、弁置換術、CABGなど多岐に渡ります。難しいオペでは、Ross手術、David手術などを見学しました。手術中はとても雰囲気が良く、例えばクイーンのボヘミアンラプソディが流れていて、外回りの看護師さんたちが歌っていたり、ちょっとリズムにのせて踊っていたり、医師やPAがジョークを言って笑いが起きたりしていました。雑談もしながら行っていますが、オペ自体は難易度がとても高いものだったりして、ギャップが凄かったです。

ご献体での手術手技練習は、計2回参加しました。1回目はアメリカに到着した直後で、勉強不足なまま参加してしまい、100%学びに活かすことはできませんでした。ですが、2回目には練習する手術の手順やそれに使う手術器具の名前を覚え、縫合をミシガン大学医学部のサークルで練習しました。その結果、大伏在静脈採取は皮切から縫合まで全てやらせて頂きました。

 

ミシガン大学病院の心臓外科の医師は、女性が一人で、あとは男性でした。唯一の女性医師は、大学院生をしながらオペもこなしており、臨床と研究のバランスが取れていて、私の理想とする姿でした。学会ではいつも女性心臓外科医が集まる会があり、私も少し参加させてもらいましたが、皆さん活気に溢れていて、強さを感じました。レジデントには女性が割といるのですが、レジデントの働き方が改革され、女性外科医が増えているのだろうと思いました。レジデンシーの途中で妊娠・出産をこなした人もいましたし、チーフレジデントをやっている方もいました。

また、アメリカの医師はユーモアが大切で、時には冗談や面白いことを言って笑わせています。アメリカで臨床をされている先生方は、ユーモアのある方がほとんどだという印象でした。

 

ここで少しアメリカの医学部の話をしようと思います。

アメリカの医学部は、大学ではなく大学院です。そのため、それまでの経歴が医学部入学に関わってきます。幼少期から習い事をしたり、高校生になる頃には、ボランティアなどを積極的に行います。もちろん学業も大事ですが、アメリカの大学は学力以外の面でも評価されるので、そういった活動をしてきた人が有利になります。高校卒業後、大学に入る前に1〜2年間、ボランティアや研究、世界一周の旅など、様々なことを経験してから大学に入学するギャップイヤーというものを取る人も多いです。 

晴れて大学に入った後、医学部を目指す人たちはPremedと呼ばれます。基本的に専攻は何でも良いのですが、50%程の人が生物などのサイエンス系を選ぶそうです。1年生の頃はPremedであっても、2年、3年と上がるにつれてPremedをやめる人もでてきます。それだけ成績を保つことは難しく、医師になるには相当な努力が必要となります。

そうして卒業した後、医学部に入学するにはMCATという試験を受けなければなりません。この試験がとても難しく、ここで断念する人もいます。

また、医学部入学前にも数年間ギャップイヤーを取る人も多いです。公衆衛生大学院に通ったり、研究やボランティアをしたり、外科助手や看護助手をしたり、病院をローテートしたりします。中には医学部の学費が高額であるため、働いて資金を貯めてから医学部に入学する人もいます。ギャップイヤーをとるメリットの一つに、精神的な成長があります。アメリカの医学部は競争が激しく、また医師になるまでの道のりも長いため、途中で精神を病んだり、ドロップアウトする人も少なくありません。

以上のように、医学部に入学するまでに相当な努力と覚悟、また資金力も必要なため、なんとなく医学部に入ろうと思った人や、学力だけで医学部に入る人は少数派になります。

 

最後に、アメリカでの生活についてお話ししようと思います。

アメリカの学生は、ルームシェア・ハウスシェアをするのが一般的です。賃貸は基本的に9月から8月までの一年契約です。交渉することも可能ですが、大学街なので需要があり、中々短期で借りることは難しいです。私は最初に住んだアパートをサブリース(又貸し)で契約しました。このサブリースというのはアメリカでは一般的で、これを利用することで、事実上短期でアパートに住むことが可能になります。サブリースをする側は、家賃を値下げするのが一般的で、私の時は交渉して半額にしてもらいました。

 

基本的に、街での移動は徒歩か自転車です。少し離れたスーパーや本屋さんに行く場合はバスに乗ります。バスを降りる際には、窓側にある黄色い紐を引っ張ります。最初は降りる方法が分からなくて、周りを見ながら紐を引っ張ってみましたが、割と強く引っ張る必要があり、降りられないこともありました。また、あまりバス停の手前から紐を引っ張っておくと、バスの運転手さんが止まるのを忘れてしまうので、直前で引っ張るのがコツです。その他には、UberやLyftというアプリでタクシーを呼ぶこともありました。日本に比べると料金が安いので、アクセスの悪い場所に行く時や冬に道が凍って歩けない時には、頻繁に利用していました。

 

外食に関しては、アメリカの方が日本より格段に高いです。例えばランチでカレーを食べようと思うと、最低でも1000円はかかります。なので、時間がない時はテイクアウトでピザやハンバーガーなどの安いファストフードを食べます。これがみんな太っている原因なのかと実感しました。あまりに外食が高いため自炊をする人は多く、ランチボックスを持ってきている人はとても多かったです。日本人より自炊しているのではないかと思いました。

 

ミシガンは冬には最高気温が氷点下になることもあるほど寒いですが、建物の中は24時間暖房が効いているため、もこもこのダウンコートに中は半袖なんて人も珍しくありません。私はさすがに半袖は着ていませんでしたが、ヒートテックを着ることは無くなりました。

ちなみに雨の日は、少々の雨だと傘をさす人がいません。ミシガンで傘をさしている人を見かけたのは、年数回でした。

 

何気なく過ごしていると、道端で知らない人に突然声をかけられ、服装や髪型を褒めてくれることがありました。エレベーターの中でも、一緒に乗った人と会話をすることもよくありました。こうして、知らない人でも気さくに話せるので、なんでもない毎日がとても楽しく、アメリカが大好きになりました。

 

長々と書いてしまいましたが、総合して言えることは、留学してよかったということです。視野が広がりましたし、自分の進路についても明確にすることができました。

これからまだまだ道は長いですが、目標に向かって突き進んでいこうと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。