昨晩、解離の手術がありました。

ということで、脳保護の話。

 

Emory時代に大変お世話になったDr. Lの論文。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30448484/

Deep Hypothermia With Retrograde Cerebral Perfusion

Versus Moderate Hypothermia With Antegrade Cerebral Perfusion for Arch Surgery

 

大動脈手術時の、脳保護についてのRCT。

DHCA+RCPと、MHCA+ACPの比較。

RCTで、術後にMRIとneurologyの評価をしている。

ちなみに手術はAsc. Ao/Hemiarch replacement。

ACTはrt. SCAに人工血管建てて、innominateとlt. CCAをclampする方法。

 

この手のstudyも大分されている。

このpaperの新しいところは、術後に全例MRI+neurologyで評価しているところ。

 

pre-opeのpt demograpgicsは、mean Age 56前後と若め。HTN、HLが8割、DMは少ない。

DHCA+RCP group: n=11、MHCA+ACP group: n=9とサンプル数は少ない。

 

intra-opeのdataとしては、大体両者有意差が出ていない。

同時手術は半分くらいでAVR ± root。

循環停止時間は20分程度、CPB/AOT timeは170-200 /150 min程度で同じくらい。

循環停止時の体温はDHCA群で低い。

術中輸血は7割くらい、EmoryはGlueなし、フェルトなしです。

 

post-opeとしては、mortalityなし。

諸々、両者有意差はありません。

2,3日ICUにstayして、8日前後で退院。

術後のchest tube outputは meanで1000 ml、7-9割は輸血してる。

繰り返しますが、EmoryはGlueなし、フェルトなしです。

 

問題のNeurologic Outcomeですが、

 

  DHCA+RCP(N=11) MHCA+ACP(N=9)
stroke, TIA, MRI lesions 5(45%) 11(100%)
stroke 1(9%) 1(11%)
Transient neuro-dysfunction 0 2(22%)
S-100 有意差なし
MRI lesion 5(45%) 9(100%)
Neuroの評価 有意差なし

 

まとめると、上の表のような感じ。

太字は有意差あり。

MHCA+ACP群の方が、悪い結果でした。神経学的な差はなし。

しかも全例でMRIで病変あり。

このstudyでは、6Mで、もう一度Neuroが神経学的にチェックしている。

 

MRIの病変の分析ではembolic eventであったと。

脳保護の温度の問題ではなく、ACPとRCPの影響が疑われたと。

頸部分枝のmanipulation/clampが原因ではと考察しています。

 

このstudyではAsc. Ao/Hemiarchで、脳分離体外循環時間も短時間です。

Nも少ない。

あとは、ACPもselectiveにcannulaを挿入しているのではありません。いわゆる一側送血ね。

 

No touchがbetterということでしょうか。

Total Archみたいな、脳分離が長時間になる場合はどちらが良いか。

あとは、日本でよくやるselecive antegrade perfusionだとどうなるか、等、疑問はあります。

 

アメリカのシステムだと、Surgical PAはいますが、Residentは入れ代わりになるし、

(日本の様に)常に同じ面子で手術できるわけではありませんので出来るだけsimpleな手術にしたいですしね。

 

No touchがbetterではあると思います。

Dr. Otaもよくgentleとおっしゃっていますね。

 

そういえば、昔、Thaiにいた時に、手術はSimply、Quickly、CheaperといっていたAttendingがいました。

 

March 14, 2021

AN