こんにちは!Team WADA学生メンバー、Clinical Dojo運営の三重大学医学部5年大野晃広です。6/21に第3回オンラインセッションを野木先生と開催しました。今回は4年生から6年生までの方が参加してくださいました。

 

 

【どんな企画?】

Clinical Dojoとは、アメリカと日本で豊富な臨床経験を持つ野木先生の熱心なご指導のもと、ALL Englishで問診方法(history taking)から臨床推論(clinical reasoning)まで学べる企画です。Clinical Dojoでは、野木先生が実際に経験されたリアルなケースを扱うことで、私たち学生も自然と身が入ります。年に5回程度開催されており、秋には対面でのセッションを開催予定です!

 

 

【症例】

52yo woman with nausea/vomiting for 1 week

 

 

【問診・身体診察】

野木先生が患者役をしてくださるのでたっぷり問診しました。普段から問診は1時間くらい続きます!

今回の問診ではnausea、vomiting、fatigue、weight loss、dizziness、headacheと様々な症状を聞き出せましたが、疾患特異的な症状はありませんでした。全身性(systemic)と考えたら内分泌臓器を疑いendocrineは聞かないといけないとのフィードバックをもらい、endocrineの問診をしましたが空振りでした。既往歴にはpolycythemia vera、hypertension、high cholesterolがあり、内服薬はOlmesartan (ARB)、Esomeprazole (PPI)、Clotiazepam、Vit B12、supplement (online purchased) to lose weight, unknown contentsとのことでした。このsupplementによって、2ヶ月で6 kgも体重減少しているとのことでしたが、中身のわからない漢方のようなものとの情報しか聞き出せませんでした。

身体診察は収縮期血圧が高値なくらいで、特に目立った所見はありませんでした。

 

〈野木先生からフィードバック&Take Home Messages〉

  • 嘔気・嘔吐で腹部症状を聞くなら

→腹部の手術歴を必ず聞く!腸閉塞の可能性あり

  • 嘔気

→腸閉塞、頭蓋内出血も外せないのでGI tract、neuroをしっかり聞く

  • 排便習慣(bowel habit)

→regular bowel movement、便の性状(color、watery、bloodyなど)を必ず聞く

 

 

【アセスメント】

A 52 y/o woman with history of polycythemia vera, recently started weight loss after medications, presents with polydipsia, polyuria, subacute nausea, fall, and fatigue, and later developed non-bloody vomiting resistant to antiemetics. Physical examination was notable only for dizziness.

 

 

【DDx】

今回はブレイクアウトルームを使い、2チームに分かれて鑑別疾患を挙げてもらいました。

問診では多彩な症状があり、身体診察では特に目立った身体所見がないという今回の症例で、学生から挙げられた鑑別疾患は、electrolyte disorders、weight loss supplement、pancreatitis、Wernicke encephalopathy、Type 1 DM、side effects of GLP-1 agonists、acidosis、alkalosis、head traumaでした。

これと言った決め手に欠き、どの疾患に関しても、ありそうな、なさそうな感じで、なかなか鑑別疾患が挙がらず、いつも以上に時間がかかりました。

 

 

【検査結果・診断】

血液検査ではナトリウムが低く、低Na血症(hyponatremia)の状態でした。血清ナトリウムの低下を見たら、次に何の検査をするべきかを聞かれ、すぐに尿検査が思い浮かばなかったのは反省点でした。尿検査ではナトリウムとカリウムの排泄が増加していました。これらの検査結果から、患者がオンラインで購入したサプリメントによる低Na血症との最終診断でした。

問診の中で聞き出したsupplementですが、オンラインで販売されているdietary supplementには利尿剤が混ぜ込まれていることがあり、サイアザイド系利尿薬投与時に起こる低Na血症と似た症状を起こすことがあるみたいです。

 

〈Take Home Messages〉

低Na血症はCOMMONで高齢者に多いですが、症状が多彩で嘔気、倦怠感等で経過するので診断が難しい!

 

 

【おわりに】

今回は電解質異常の症例で、疾患特異的な症状がないため鑑別疾患を考えるのが難しいものでした。腎臓内科は苦手!と言う学生が多いですが、「血清を代償するように腎臓が働くはずだけど、うまくいってないときは、尿細管のチャネルとかがおかしいのかな?」など腎臓の気持ちになって考えると良いとのコメントを野木先生からいただきました。

 

最後になりますが、野木先生、ご多忙の中、毎回最高に楽しいレクチャーをしてくださり、本当にありがとうございます!