こんにちは。Team WADA学生インターンの新井葉奈です。
10月12日にRossi先生による医療面接の勉強会に医師役で参加させていただきました。今回は英語を第一言語としていない患者とのコミュニケーションをテーマに勉強をしました。
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Crucial conversations scenarios: Language Barrier
Case
60才 男性 トルコからの移民 (Asylum seeker) ESL
Muscular dystrophy の診断
トルコでは専門家にかかっていない、イギリスのドクターなら治せると言われた
対症療法(在宅でのbipap使用) に対しての疑問、受け入れられない
経済的な不安 (トルコではconstruction workerとして勤務)
イギリス永住権申請中→申請後はイギリスの保険加入
最終学歴:中学
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メモ
Bipapとは (Googleより)
二相性陽圧呼吸[Biphasic(Bilevel)Positive Airway Pressure]という、NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)の人工呼吸器の換気モードのひとつです。NPPVを指す言葉として使われていることがあります。設定した時間サイクルで高圧相と低圧相という2つの気道内圧レベルを交互に行うことで、その内圧の差で換気が補助されます。高圧相・低圧相のPEEP(呼気終末陽圧)時には自分の力で呼吸することが可能です。
CPAP (Continuous positive airway pressure) machineとの違いは?
- CPAPは一定の空気圧を持続的に送り出します。一方、BiPAPやBPAPは、吸うときと吐くときに異なる2つの空気圧を送る仕組みになっています。
- CPAP 使用例: Obstructive Sleep Apnea (OSA), Milder Respiratory Conditions, Heart Failure (Mild), Consistent Pressure Needs
- BiPAP 使用例: Respiratory failure, COPD, neuromuscular disorders, Hypercapnia (high CO2 levels), severe respiratory conditions
Hypercapnia (高二酸化炭素血症) 症状
- 頭痛、めまい、発汗、錯乱、高血圧
- 睡眠障害、朝起きられない、日中の疲れ
- Low QOL
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振り返り
良かった点
- 患者が何を理解しているのか、何に困っているのか、このセッションで何を得たいのかを聞き出すことができた
- Support groupやeducational workshop、スペシャリストの紹介
- 患者の言っている事を復唱した
改善点
- 通訳の提案 。トルコ語のオンライン通訳を提案しようと思ったが、日常会話は理解していたので、提案を辞めてしまった。医療用語は特に難易度が高いし、misunderstanding が起きると良くないので必ず提案する。( UKでは Language line というプラットフォームを使うことが多いそうです。しかし、通訳者それぞれの当たりはずれもあるので、グーグル翻訳などに頼るしかない時も…)
- Referrals to pulmonologist and Psychologist
- 患者が asylum seekers (難民申請者)なので、症状だけに特化した問診ではなく、包括的なトリートメントプランを提案する。
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レクチャー – ケースを扱った後、Rossi先生が患者とのコミュニケーションをより向上させる為にはどうしたらいいのかレクチャーをしてくださりました。
Kehler’s drivers model (ケラーのドライバーズモデル)
行動に影響を与える「ドライバー(動機付け要因)」として、
Be perfect, Be strong, Please others, Try hard, Hurry up の5つが挙げられます。
これらを理解して患者や自分がこのドライバーのどのタイプの人間なのかを理解することで、患者の気持ちに寄り添ったコミュニケーションが取りやすくなり、医療現場でのやりとりがより円滑になる。そして患者の治療にも役立つ。(Treatment coherence, Hospital visits…etc)
Be Perfect
- 特徴: このドライバーに従う人々は、細部にこだわり、正確さや注意深さを重視します。
- 詳細で分かりやすい説明を心掛ける。
- 例: 薬の服用について話す際には、正確な服用スケジュールを丁寧に説明し、書面での指示も提供する
Be Strong
- 特徴: 自己完結型で、弱さを見せたり助けを求めたりするのをためらう傾向
- 安心感を与えつつ、無理に感情を引き出そうとしないことが重要。自立性を尊重しながら、必要に応じてサポートを提案する。
- 例: 診断について話す際には、患者の強みを強調し、状況を管理する能力があることを認識しつつ、必要なときにはサポートを提供する。
Please Others
- 承認を求め、人にどう見られるかに敏感な傾向。
- 信頼関係を築き、共感する。ポジティブなフィードバックをする。
- 例: 「健康管理をしっかり行っていて素晴らしいですね」といった言葉で、患者の努力を言語化する。
Try Hard
- 努力を惜しまず、多くのことに挑戦するが、時に自分を追い込みすぎることがある。
- 無理をせず、達成可能な目標に集中するようアドバイスする。健康を優先し、無理に多くのことをこなそうとしないように励まします。
- 例: 複数の治療を管理する際には、タスクを細かく分け、一つずつ着実に進めることが重要であると説明する。
Hurry Up
- 早く結果を求める傾向
- 簡潔にポイントを伝え、効率的な対応を心掛ける。現実的なタイムラインを示す。
- 例: 患者が即時の回復を期待している場合は、治療効果や回復にかかるおおよその時間を説明して、過度な期待はさせない。
ACP (advanced care planning)について
ACPとは治療方針や延命措置、終末期ケアなどに関する希望をあらかじめ話し合い、記録しておくプロセスを指します。将来、病気や障害で意思表示ができなくなった場合に備えて、どのような治療やケアを受けたいかを明確にすることを目的としています。
今回扱ったケースはMuscular Dystrophyの診断を受けた患者さんだった為、今後徐々に意思を持つことが難しくなっていきます。これからの治療法などは意思表示ができる間に話し合いをするべきだとRossi先生は仰っていました。経験を積んだドクターでもACPは難しいと言われているそうです。特に終末期ケアなどはドクターにとっても患者にとっても話しずらいトピックですし、患者の治療に対するモチベーションを奪うことにもなりかねないので、ここでもドクターと患者の長期的な信頼関係がとても重要だと感じました。
Team WADAのYouTubeにも出演してくださったコロンビア大学緩和ケア科 中川俊一先生の著書、“あなたのACPはなぜうまくいかないのか?“をRossi先生がおすすめしてくださいました。
医療事故について
ダブルチェック、Health care workers同士のコミュニケーションとドキュメンテーションの大切さ。フライト前のブリーフィングを参考にコミュニケーションスキルを身につける事が大切だと仰っていました。NHSでは患者1人1人に対して初診から退院までのチェックリストを作るそうです。また、患者と医療従事者どちらの身を守るためにもドキュメンテーションは欠かせないと感じました。
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最後に
このように私たちはイギリスの第一線で活躍されているRossi先生による医療面接の勉強会を開催しています。医師役としての参加だけでなく、オブザーバーとしての参加も可能ですので、ご興味のある方はぜひお気軽にご連絡ください!
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