みなさんこんにちは!富山大学医学部3年の西岡です!

普段は、TeamWADAでは、海外の患者さんの話を聴くという活動をしています。

聴くのはできても、そもそも話せないことには治療もままなりませんので(というか門前払い)、当たって砕けろの精神でインタビューアーとしてチャレンジさせて頂きました。

 

3年生。海外経験なし。医学知識もそんなにない。一般医学生の医療面接の模様をお届けします。

 

【今回のお題】

・脳神経外科にて

・35歳女性。脳の病理検査で、転移性多発脳腫瘍

・乳がんの既往歴。昨年、乳房切除と化学療法

・妊娠の希望

*これらを踏まえて、告知、コンサルテーション、治療プランの説明

 

【面接前の想定】

1. 乳がんの既往歴もあるため、再発の告知は非常に慎重に
i. まずは今の心情などを聞いてリラックスしてもらう
ii. 波長があってきたタイミングで告知
2. 相手の感情を観察し、妊娠希望を伺う
i. 年齢、家族背景も聞き出す
3. 妊孕性温存のための治療の紹介
i. 外科的切除か放射線の説明。メリット・デメリット含め
ii. エビデンス的にも妊孕性温存に、放射線をそれとなく進める。
4. 放射線科にコンサル!

 

果たして、僕は想定通りに面接できたのでしょうか??

 

 

【実際の面接】

1. 乳がんの既往歴もあるため、再発の告知は非常に慎重に
i. まずは今の心情などを聞いてリラックスしてもらう→○
ii. 波長があってきたタイミングで告知→○

検査後からの心境を聞き、理解を示すことで、良い関係性が築けたかと思いました。

 

 

しかし、、、

 

 

ここで、再発の告知(しかも多発脳転移)の重さを、軽く見過ぎていました。

「がんの再発? 治ったと思ったのに、、」

「あの辛く長い治療、怯える日々をまた過ごさないといけないの?」

「しかも、脳転移。私の人生はどうなってしまうの?」

 

ロッシ先生の告知で奈落の底に落とされた患者さんの演技は、アカデミー賞主演女優賞レベルでした。

 

その場で、妊孕性温存や治療の説明に行くよりも、まず何より患者さんの感情に配慮するべきでした。サッカーの国際試合でたまに起こる、なんとかの悲劇のように、途中までいい勝負していたのに、一つのきっかけでガタガタと崩れていきました。

 

患者さんと医療者間のコミュニケーションで一つボタンを掛け違えてしまうと、なし崩し的に後のセクションもチグハグになってしまうことを実感しました。

もちろん、治療の紹介、妊孕性の温存の話はしたのですが、患者さんとの温度差が違うと、どうも伝わっている気がしない感じでした。

 

焦った僕は、挙句のはてに卵巣(Ovary)という英単語もど忘れする始末。(終わった後に気づきました)
下垂体(pituitary gland)も忘れ、苦し紛れにgland in the brainと言ってしまい、どこやねんそれ。とツッコミが入りそうでした。

 

【レビュー】

そんなこんなで、レビューでもロッシ先生に「患者さんへの共感が足りなかったね」と言われました。告知された瞬間もそうなのですが、患者さんの家庭背景、治療後のQ O L、妊孕性以前に、そもそも後どれくらい生きられるの?

などの重要なポイントにおいて、患者さんの意見を引き出し、提案し、合意をStep by step

で積み上げていくことの大切さを学びました。

 

Rossi先生のUCLHでは、患者さんと話す前にMDT(multidisciplinary team)という異なる診療科、看護師、ソーシャルワーカーなどが集まり治療方針を話し合う場を設けているそうです。そして、想定できうるストーリーを用意した上で、患者さんと面接するときは家族なども一緒に同席して、話し合っていくそうです。

 

今回、脳神経外科という身分だったので、患者さんの感情への配慮を想定していませんでしたが、かえってそれが失敗の要因となってしまいました。重たく複雑なコミュニケーションにおいては、診療科は超えても緩和ケアの重要性を非常に感じた面接でした。

 

 

【お題の背景】

今回の例は実際の事例だそうです。

彼女はサウジアラビア人。Grade4の脳腫瘍。

宗教がら、自分ではなく家族に決定権がある現実。

妊娠を諦め、積極的な治療を選択せず、緩和ケアを受け、そして亡くなっていったそうです。

 

日本ではあまり考慮に入れなくて良い、様々なバックグラウンドを考慮する必要性も感じました。

 

【最後に】

隙間の時間でも、「ちょっとなんか相談したいことある?」と患者さんに言える医師でありたいと思います。