文責:Alex Seiji Anderson(旭川医科大4年生), Hana Arai (マサリク大3年生)

 チェコ共和国マサリク大学卒&現在UK勤務のDr. Ashwin Manivannan による講演会に、先日2人(Anderson, Arai)で参加してまいりました。Ashwinさんの許可を頂いたけたので、内容をシェアしたいと思います✨

※Aswinさんが、講演会の際の動画をYoutubeに掲載しています!
🇬🇧 DAY IN THE LIFE EP.01 : UK 🇬🇧 (youtube.com)

<基本情報>

 

講演会タイトル:Day in the life of a junior doctor in the UK

主催:MIMSA (Masaryk International Medical Students Association)
Masaryk International Medical Students Association | MIMSA | Czechia (mimsaonline.com)

演者:Dr. Ashwin Manivannan

  • イギリス出身
  • 2023年6月 マサリク大学医学部卒
  • 在学中はMIMSAの副代表を経験
  • 現在、 Whiston Hospital でJunior clinical fellowとして勤務

※一般的には、Foundation Year 1 (F1) doctorという肩書になると仰っていた。
※私(Alex)が調べたところ、Residency一年目、初期研修一年目に相当するらしい。

 

 

 

 

<仕事内容>

 病棟業務の90%が書類業務。

血液検査を拒む患者がいた場合、その患者に関して法律的な書類を書いてもらったりする業務が発生する。訴訟の問題からも、書類業務を疎かにすることはできない。

通常は12-15人の患者さんを担当。人手不足の際は25人の患者さんに対応することも…

基本的な臨床スキルをトレーニング

  • 血液検査、挿管、血ガス、血液培養、肝機能試験、心電図、読影など。

→上級医に意見を聞く事が重要 (Escalate)

  • 薬の処方。(入院患者に対する抗血栓薬など)
  • ABCDE approach (Airway, Breathing, Circulation, Disabilities, Everything)
  • SBAR methodを意識 (Situation, Background, Assesment, Recommendation)


※講演会の資料より

課外活動
病院側が真剣に重視するポイント。

  •  病院側がプラスに評価してくれるし、新たなチャンスや機会を生む。
  •  将来の進路に沿った活動をすることが大事。
  •  教育系の課外活動が効果的。自分自身も勉強になる。
  •  口頭のプレゼンテーションに慣れたほうがいい。
  •  学生中に、research paperに関われたら、最高。


勤務体系

  • NHS(National Health Service、 国民健康サービス)の医師として働いている。
  • 基本的に、午前9時から午後5時までが勤務時間。
  • 1年が4ヶ月ごとのローテーションに区切られている。
  • 勤務時間外や週末にオンコール勤務を行い、その間平均12人の入院患者を担当する。

※補足:NHSについて
NHS England » An introduction to the NHS

イギリスの医療費は無料?イギリスの医療費や医療事情について / イギリス医療費 イギリス医療費は無料 (medifellow.jp)

 

<Pros Cons: UKで働くメリット、デメリット>

 

メリット

  • 無償での医療を、NHSで行える。
  • ワークライフバランス(44-48 hours/week、 残業代もきっちり出る。)
  • 十分な休暇(4か月のローテーションごとに10日間の休みを得られる。)
  • 自己研鑽や課外活動をする環境が整っている。
  • 福利厚生が充実していて、色々な割引を受けることが出来る。
  • Ice cream shop structured training
    様々な診療科(アイスのフレーバー)を試せて、長期の休暇も取りやすい。つまり、自由に研修をカスタマイズすることができる。
  • 専門科に進むタイミングを比較的自由に決められる。
  • 人種的な多様性に恵まれている。

※補足:NHSで働く30%以上の医師は、UK citizenではない。
    -参考 : More than a third of NHS doctors in England now foreign nationals | Evening Standard

 

デメリット

  • 給料が低い。

「給与:約 £ 2400 (48万)、手取り: 約£ 1500 (30万)、毎月の貯金額: 約 £ 800(16万)」

  • 人手不足。医療従事者によるストライキも起こっている。
  • 家賃が高い。(Londonは特に。)
  • Burnoutが問題になっている。
  • 書類業務の多い。
  • 病院内の職場に、ヒエラルキーのようなものを感じる。
  • 季節性うつ病(冬季うつ病)が深刻。

 

→実際の給与明細

※補足1
1£(ポンド) = 198円(2024年5月21日時点)

日本よりイギリスの方が物価が高いので、単純に日本とは比較できません。。。

※補足2
個人的な感想ですが、
「ストライキが起きている」≠「イギリスの労働条件が悪い」

むしろ、働き方や給料に対する意識が高く、声高に改善を求める文化があるということではないでしょうか。

 

※補足3

季節性うつ病:冬の日照時間が少ないことが原因。

 

 

 

<将来の選択肢について>

 

  • 初期研修2年目に進んで、さらに様々な科で研修をすることができる。
  • Specialityを決めて、一つの診療科の割合を増やすこともできる。
  • Locum doctor(非常勤医、代理医師)として働くこともできる。 (ストライキ等で人手不足の際にカバーに入る) お金は稼げるが、雇用が不安定で失業の可能性あり。
  • NHSからPrivate sectorに行くこともできる。お金を稼ぐことにフォーカスできる。
  • パートタイム (自分のライフスタイルに合わせた働き方)
  • オーストラリアなどの英語圏に移住して、働くこともできる。
  • 長期休暇(Sabbatical)を取りやすい。
  • リタイヤする人もいる。

 

<将来UKで働きたい医学生が今すべきこと>

 

1、2年生:学科試験に真剣に取り組む。大学生活を楽しむ。

3、4年生:将来医師としてやってみたい事を見据えた課外活動。

 

5,6年生:臨床スキルをマスター、UKでの学会に参加、UK based sourcesを使った勉強、UKMLA受験

6年生: 様々な検査結果の解釈ができるようになること(動脈血ガス分析,心電図, レントゲンなど)

 (IMG医師にとって、異なる単位や人種間の違いが難しく感じるかもしれない。)

 

補足:UKMLAとは?
 UK Medical Licensing Assessment: ( UKの医学生が受ける医師国家試験 )
IMGはPLAB(外国人医師向けの試験)に合格しなければ、UKで医療行為が行えない。
→USMLE合格者であっても、PLABは免除されない。
このPLABは2024年8月からリニューアルされ、UKMLAと内容が一致するようになる。

参考:UKMLA | UK Medical Licencing Assessment | Overview | Geeky Medics

<おすすめサイトや、勉強になるYoutubeチャンネル>

 

GEEKY MEDICS
Geeky Medics | free medical student revision notes, OSCE guides & MCQs
Geeky Medics – YouTube

 

Pass Medicine
Passmedicine 

UKの病院にアプライする際に用いるサイト
trac.jobs

<インタビューの際に重要なこと>

 UKに定住することや、同じ病院で働き続ける意思を示すことが重要。UKのセミナーや学会に参加したり、イギリスの病院実習シャドウイングの経験があれば、有利になる。NHSで就職したい場合はNHS Core valueを知っておく事も大切。

 インタビューに自信を持って臨むことが大切である。 病院側はあなたに多くは求めていない。あくまでも、これからの成長する器かどうかを見ている。インタビューに自信を持って臨めるということは、緊急の状況でも冷静に対応できることを示している。

 

 以上が、講演会のまとめとなります。漏れや間違いがあるかもしれません。御了承ください。冒頭でも述べたように、講演会の動画がYoutubeにアップされています。ぜひ、チェックしてみてください!

ここまで読んでくださりありがとうございました。

 

アンダーソンアレックス誠治

新井葉奈