こんにちは!Dr. NogiとのClinical Dojo運営メンバーの山﨑響です。

Clinical Dojoとは、アメリカと日本で豊富な臨床経験を持つ総合診療科の現役医師の指導のもと、ALL Englishで問診方法(history taking)から臨床推論(clinical reasoning)までを学べる企画です。年に5回程度開催され、これまでの累計開催回数は19回、累計参加人数は200名以上にのぼります。

 

今回は、2025年4月27日に開催された、2025年第2回Clinical Dojoの様子をレポートします!

 

今回は、症例に入る前にDr. Nogiによる「臨床医のAI活用術」セッションからスタートしました!

先生が普段どのように複数のAIサービスを組み合わせて臨床現場で活用されているのかをリアルに共有してくださり、AI技術の進化のスピードを肌で感じる時間となりました。

私たち学生にとっても、これからの時代を生き抜くために、AIを正しく使いこなすための知識と基盤作りが必要だと強く実感しました。

 

【症例】

73-yaer-old male with stage IV lung cancer, presented with hypotension and fatigue

 

【Assessment】

73 y/o male with stage IV lung cancer, presented with hypotension and fatigue. Dehydration is suspected due to poor intake and diuretic use. Morning cortisol low; adrenal insufficiency considered. After fluid resuscitation and hydrocortisone administration, clinical status improved.

 

【実際の問診の流れ】

今回は主に「症状 (Hypotension, Fatigue)」と「背景疾患 (Lung Cancer, Diabetes, COPD)」をそれぞれ整理しながら問診を進めました。

高齢者であり、合併症 (Complications) が多いため、延々と続く薬のリストを一つひとつ聞き出すことに苦労しました。

 

Dr. Nogiからは、

「薬の聴取はアメリカでは特に重要。薬価が高いので無駄な処方が少なく、用途も明確に聞く」

というアドバイスもいただきました!

 

また、一定期間変化していない「Foreground」の所見に、新しく生じた「Background」が乗ったという視点を、前回に続き意識して問診を行いました。

 

低血圧(70/50
→ 現在の薬(フロセミド、アミオダロン、エントレストなど)が影響していないか?医原性(iatrogenic)の可能性
→ 起立性、脱水、内分泌異常(副腎不全)の可能性を探る

倦怠感
→ 食事、便秘・下痢(自律神経症状!)まで深堀り

肺癌既往
→ 転移部位(脊椎、副腎)に注目して関連症状を確認

 

  • 問診ポイント
    • 循環血液量減少(Hypovolemia)
      • Fluid loss (嘔吐、下痢)
      • Poor intake
      • 出血(抗血小板薬・抗凝固薬使用に注意)
    • 糖尿病(Diabetes)の3大合併症
      • Microvascular(腎症、網膜症、神経障害)
      • Macrovascular(脳梗塞、心筋梗塞、PAD)
    • 脳卒中(Stroke)の評価
    • 出血性?梗塞性?(bleeding/clotting)
      • “What was the type of stroke?”
      • “Are there any residual symptoms you still feel?”
    • 心不全(Heart Failure)・心筋梗塞(MI)の後遺症管理
    • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
      • Emphysema型/Chronic bronchitis型を区別する

 

【学生からでた主な鑑別】

肺血栓塞栓症(PE)、貧血、放射線治療の副作用、心不全、副腎不全、免疫不全、状態による敗血症、脱水、起立性低血圧

 

【野木先生からの事後情報】

2Lのボーラス輸液後、血圧が改善。

フロセミド使用と食事摂取量低下に伴う脱水が主因と考えられた。

朝のコルチゾール値が「2」と著明に低下しており、副腎不全(adrenal insufficiency)と診断、ヒドロコルチゾン補充療法を開始。

肺血栓塞栓症疑いでCTアンギオ施行済み。抗凝固療法中で追加治療不要。

血液培養は陰性で、菌血症は否定された。

 

【おわりに】

Clinical Dojoでは、毎回、教科書を超えたリアルな臨床推論力が求められます。

また、今年も秋にDr. Nogiをお招きした対面オフライン会を開催予定です!

今回は多くの方にご参加いただき、ブレイクアウトルームで2つに分けたディスカッションも大変盛り上がりました。

さらに、AIに関する知識も深まり、医学生なりの実践的な活用法を模索していきたいと強く思いました。

最後になりますが、毎回、最高に楽しい学びの場を作ってくださる野木先生、本当にありがとうございます!