さて、本題です。

 

2021年1月から2022年12月までの2年間シカゴ大学でCardiothoracic Transplantation Fellowとして働いてました。

北原先生、西田先生に続く3代目のFellowです。

 

大体の概要は今までの皆さんのBlogや、Twitterなんかで十二分に分かると思いますので、

プロFellowの私の目線から書いていきたいと思います。

 

①心不全、Robotに特化したProgram

シカゴ大学自体は、年間症例数600程度の中規模のProgramです。

その内、1割の60例は心移植です。多分VADと合わせて100例くらいだと思われます。

150-200程度はRobotになります。

肺移植は私の在籍した2年間で、Total 30例も行われていないと思います。

私の場合は、Robotをcoverする余裕はありませんでした。

 

ということで、非常にSickな症例ばかりです。

前にFellowしていたEmoryなんかと比べると、けた違いにSickです。

Sick, Sicker, Sickestでいうと、Sickestです。

他の施設でDeclineされた患者さんが多く来院されます。

そしてBossはそれを嬉しそうに話しています。

 

また、2018年にHeart Allocation Systemがupdateされたのですが、

その後、心移植は増加しており、

私の1年目は61例、2年目は66例でした。そして、DCD transplantも開始しています。

 

②FellowのDutyはOR及び外科的手技中心

正規Residentは各学年1人ずつです。

Thoracicであることが多いです。

Cardiacのローテーション中の彼らのDutyもいまいちはっきりしないので、

正直、正規Residentとの関係性はやっぱり微妙です。

症例の割り振りなんかもだいぶ曖昧。

コミュニケーションなんかもいまいちな奴が多かったです。

 

ICUは、ICUをCoverするPAがいて、術後も、hand offすると、そこからは帰宅できます。

ECMOやLVAD、RVADが回る場合、ECMO Specialistと言われる人が張り付くことになります。

心不全に特化したProgramなので、この辺は分厚いサポートでした。

IABP抜去なんかも、Surgical PAがやってくれましたね。

 

同意書取り、Noteの記載なんかは全くしませんでした。

逆に、緊急手術、ECMOなんかは24/7でCoverすることになります。

 

③それでも症例はrichにある

私の場合2年間で、total 600例にScrub、main部分の執刀は170例でした。

太田先生のご配慮で、手術室で放置playにして頂けることが多かったです。

Bossも結構なウェットさでいなくなる人でした。

そのくせ、『まだ閉めてないんかい』、と確認には来ます。

 

心不全関係がMainではありますが、一般的な開心術も十分でした。

やはりそこはアメリカでのトレーニングの良いところです。

ただ、Sickな患者が多い。まず、心機能がNormalな患者さんはあんまりいません。

透析患者さんなんかも多いです。

小切開手術、大血管手術なんかはあまり行われていません。ステントグラフトはvascularが行います。

TAVRなんかも行われていますが、私がcoverすることはありませんでした。

 

Attendingによる持ち回りのLectureなんかも行われています。

こちらは完全に正規Resident向けでした。

 

④Chicagoは寒い、とても寒い。1年の半分くらいは冬

自分の場合は、チェンマイ(タイ)⇒Emory(アトランタ)⇒シカゴと異動(北上)したこともあり、

寒さが堪えました。

病院のあるハイドパークに住んでいたのですが、雪が降ったりすると病院まで歩くのは辛かったです。

カフェテリアの激安メニュー。All American Breakfast

ポテト、スクランブルエッグ、ソーセージx2で税込み5.5ドルでした。よー食べた。

 

病院のカフェテリアは24/7で開いており、また、軽食の自動販売機もあったので、食事には困りませんでした。

ICUのFloorにSurgical PA用の当直室が一部屋あり、彼らは使用しないのでよく寝泊まりしました。

物価はやや高く、Emory時代のような職員用の割引もなかったので厳しかったです。

よく、Dollar Treeという1ドルショップのお世話になりました。

 

治安はやはり良くありません。

私がFellowを始めたころ、Regent Parkという、日本人が結構代々住んできたマンションの近くで中国人留学生が強盗に射殺されるという事件がありました。

結構問題になったようで、その後ハイドパークのセキュリティーの見回りが厳しくなりました。

また、Code Silverといって、銃関係の危険性があるときにActivateされるCodeがあるのですが、

一度緊急のA解離の手術がその為になくなりました。

アメリカに5年いましたがCodeSilverを耳にしたのは初めてでした。

最後であることを願っています。

 

私のような心不全をやりたいという人にも、アメリカデビューの方にもお勧めできるProgramかと思います。

 

イリノイ州は、正規Residencyを終了しなくてもFull Licenseが取得可能で、

Facultyのpositionを頂けたのは幸運でした。

というか、そこに尽きると思います。

Offerを頂いたとき、非常に冷静で、体は熱くなりませんでした。

 

March 14, 2023

AN