みなさんこんにちは、Team WADA学生メンバーのアンダーソンアレックス誠治です。
今回は、ミシガン小児病院の桑原功光先生のご紹介で、高橋侑也先生へのインタビューが実現しました!
高橋侑也先生
2020年岡山大学卒業。山口県の国立病院機構岩国医療センターで初期研修後、横須賀米海軍基地病院で日本人フェローシップを修了。米国ペンシルバニア州のEinstein Medical Center Montgomeryで一年間のインターンシップ(Transitional Year Residency)を経た後、現在、米国ミシガン州 ヘンリーフォード病院で麻酔科レジデント一年目として勤務中。
※Transitional Year Residency: https://bemoacademicconsulting.com/blog/transitional-year-residency
[インタビュアー]
旭川医科大学医学部医学科4年 アンダーソンアレックス誠治
Alex : 高橋先生の渡米理由について、お聞きしてもよろしいでしょうか。
高橋先生 : 中学の頃から、海外で働くことに対する憧れはありました。医学部3年生の時にイギリスで3か月間の基礎研究を行いましたが、英語が下手すぎて研究も全く上手くいかず、苦い思い出が残っています。この経験から、将来海外で活躍してリベンジしたいという気持ちが芽生えました。大学5年の時に友人からUSMLE勉強会に誘ってもらったのをきっかけに、具体的な渡米方法を学びました。在学中にStep 2 CSまでなんとか合格しました。ここまで努力したからには、絶対に渡米しようと決意しました。
※USMLE : https://www.youtube.com/watch?v=mxkXM01QTpI (Dr.セザキングchannelより)
Alex : 初期研修終了後に海軍病院で研修をし、その後渡米というスピーディーなご経歴をお持ちですが、早期の渡米に至った理由を教えていただけますか。
高橋先生 : 若くてフットワークが軽いうちに、海外に飛び込むのが自分にとっては一番だと考えました。在学中にUSMLEの勉強を終えたものの、英語力に不安があったため、まずは海軍病院で経験を積んでから渡米しようと思いました。
Alex : 在学中にUSMLE step2CSまで合格されたとのことですが、勉強中に孤独を感じることはありませんでしたか。
高橋先生 : 幸い、友人と一緒に勉強していたので孤独を感じることは無く、何とか乗り越えられました。ポリクリ後、大学で夜遅くまで勉強したり、息抜きに飲みに行ったりと、楽しみつつ切磋琢磨しながら勉強しました。
Alex : 友人の存在は本当に大事ですよね。私も友達のおかげで頑張れています。
Alex : 高橋先生が執筆された野口医学研究所の記事を拝見しました。
https://noguchi-net.com/home/program/report/6976/
Alex : 海軍病院でフェローをしながら、トーマス・ジェファーソン大学でエクスターンシップをされたということでしょうか。
高橋先生 : 横須賀米海軍基地病院では、他施設での見学をaway electiveとして一か月間ほど行うことができます。患者搬送のシフトを同期フェローと調整することで日程調整して、3回ほど渡米しました。マッチングの準備を入念にできるということは、海軍の強みでもあります。
Alex :麻酔科医になられた理由を教えてください。
高橋先生 : 志望科を決めるのには時間がかかりましたが、渡米したいという思いは常にありました。最終的に科を決めることができたのは、マッチの直前です。研修医の頃に行った麻酔科ローテがきっかけで生理学・薬理学を駆使した全身管理に魅了され、集中治療にも興味を持ちました。その一方、レジデントで渡米をしたいという思いも強く、IMGが麻酔科にマッチするのはほぼ不可能というソース不明な情報を小耳に挟み、当初は麻酔科でアプライは選択肢にありませんでした。最終的に集中治療をすることをゴールにして、内科でアプライするつもりで準備を進めていましたが、色々な先生との出会いがあり、様々なアドバイスを頂く中で、毎年麻酔科でマッチしている日本人がいることも知りました。頑張れば自分でも麻酔科にマッチできるかもと思い始め、最終的に麻酔科経由で集中治療をすることを選びました。自分が本当にやりたい診療科にマッチできて幸せです。
Alex : ヘンリーフォード病院での勤務体系やプログラムの特徴を教えていただけないでしょうか。
高橋先生 : 麻酔科レジデントというポジションではあるものの、現在はインターンとして様々な科をローテーションしている段階です。一概に、勤務体系を一般化することは難しいです。ヘンリーフォード病院の麻酔科レジデントプログラムの特徴は、インターン後半にある4か月間の麻酔科ローテーションです。一年目のインターン期間に、これほど長い麻酔科ローテができるのは珍しいです。自分の場合、すでにtransitional year をやっているので、1年目から麻酔科ローテが多いのは有難いです。レジデントの臨床経験にかなり特化したプログラムで、移植を含めた数多くの困難症例を経験できるようなのでとても楽しみです。
Alex : 現地ではどのように生活されていますか。
高橋先生 : デトロイトの北部で妻と住んでいます。治安がとても良くて、徒歩圏内にアジア系のスーパーもあります。この地域一帯は駐在の日本人も多く、くら寿司やラーメン屋もあり、いざという時の日本食には困りません。このエリアに引っ越してから2か月間で、既に3回もラーメン屋に行ってしまいました笑。桑原先生から現地の情報も沢山教えていただいており、とても助かっています。もし今後もアメリカに残るなら、このエリアで暮らし続けたいと思っています。
※ミシガン小児病院小児神経科指導医 桑原功光先生:https://connect.doctor-agent.com/article/column254/
Alex : 奥様と一緒に渡米されたんですね。
高橋先生 : 学生中から付き合っていました。渡米したいという自分の目標は早い段階から定期的に伝えていました。大変有難いことに自分のプランに了承してもらい、一緒に渡米してくれました。アメリカに行きたいというのは完全に自分のわがままです。彼女を巻き込んでここまで来ているので、中途半端なことはできません。家族のことを考えると、日本人コミュニティの存在、日本への直行便など、キャリア以外の観点も大事だと思います。自分のやりたいことだけをすれば良かった学生時代と違い、今後の家族プランや家計のやりくりなど、考えることが増えました。大人になることの大変さを痛感しますね。金銭的に厳しいなかで渡米して、TYをやりながら再アプライをしてマッチ出来たのも、精神的な安定を保ち続けることができたのも、すべて妻のサポートのお陰様です。パートナーには常に感謝を忘れず、謙虚でいたいです。
Alex : 日米の医療の違いについて、教えてください。
高橋先生 : 自分は初期研修2年の間しか日本の医療を経験していないので、日米の比較を適切に出来る立場にはありません。その前提の上で、いち研修医として分かる範囲です。
まず、アメリカはオンオフがはっきりしているので、休みの日に呼ばれることは少ない気がします。アテンディングになれば給料が高く、家族と過ごせる時間が多いのも魅力ですね。
また、こちらで働いていると、アメリカの国としての力強さを感じます。施設が大きく、患者数・症例数はとてつもないですし、それを支えるだけの豊富な人的リソースがあります。患者搬送専門や採血専門のスタッフがいたりして、コメディカルスタッフが豊富です。医療従事者一人あたりの負担が日本より少ない気がします。医療従事者全体の給料も日本と比較するとかなり高いですし、患者が負担する医療費も高いです。総じて、莫大なお金が循環している印象を受け、アメリカの国力を感じさせられます。
Alex : 学生や研修医のうちに、やって良かったことやすべきだったことはありますか。
高橋先生 : 学生中にUSMLEを取り切れたおかげで、その後の初期研修では臨床に集中できました。あとは、卒業旅行で、海外に行けたことですね。色々な文化の人たちと交流できて自分の視野が広がり、色々な国で働いてみたいという思いが強まりました。
高橋先生 : 低学年の頃から、もっと英語に力を入れておけばよかったと思います。正直なところ、今の生活のストレスの多くは自分の英語力の低さに起因しています。日常的な会話から、医療現場でのコミュニケーション、至る所で常にハードルを感じます。
Alex : 横須賀米海軍基地病院での勤務について、詳しく教えてください。
※ https://yokosuka.tricare.mil/About-Us/Fellowship-Program
得たもの
高橋先生 :英語力を確実に伸ばせました。マッチングの準備に関しても、沢山時間を割くことが出来るという点でアドバンテージがありました。さらに、アメリカ人の先生たちと一緒に仕事をするなかで信頼関係を築くという経験が出来たことも貴重です。
また、アメリカ人の仕事上でのマナーや価値観を、肌身で感じられたことも良かったです。
苦労したこと
高橋先生 : やはり、英語でのコミュニケーションに苦労しました。海軍へのマッチング自体も大変でしたね。
アプライの対策
高橋先生 : Step2CSのワークショップで知り合った、海軍病院に勤務経験のある先生からアドバイスをいただいていました。一週間のエクスターンシップで、いかに良い印象を残すかという戦略を綿密に練りました。実は、岩国医療センターの初期研修では、岩国基地の診療所でのローテーションがあります。そこでの経験が評価されたのかもしれません。
Alex : 野口医学研究所でのエクスターンシップについて、詳しく教えてください。※https://noguchi-net.com/home/program/report/6976/
高橋先生 : 沢山の先生とお話をさせていただく機会があり、将来の進路を相談することができました。その中で、自分の進路を少しずつ固められました。また、トーマス・ジェファーソン大学のような大きい病院を見学できたことで、レジデントの立ち位置がイメージできました。一方で、フィラデルフィアというアメリカの大都市に長期間滞在する中で、実際に渡米する際は、住む町の治安も大切だと感じました。
Alex : 渡米を考えている方に、何かアドバイスをお願いします。
高橋先生 : 英語を使って情報収集することが大切だと思います。海外IMGがどのように戦略を立てているのか、彼らの情報を参考にすることも一つの手です。(FacebookのIMG情報交換グループや、Xなど)。あの会場の2CSは落ちやすくて、この会場のとある患者には気を付けろといった情報まで出回っています。常に色々な情報が出てくるので、正しい情報かどうかの見極め、更にその情報が自分に適応できるかどうかの見極めはとても大事です。情報リテラシーが試されると思います。
高橋先生 : 英語を使って情報収集をしていく中で、海外IMGの先生方と医療面接の練習をする機会にも恵まれました。日本人医師からはもらえないような貴重なアドバイスを沢山いただけました。
Alex : 高橋先生、とても勉強になりました。お忙しいところご協力いただき、本当にありがとうございました!
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