昔々、ロンドンに常日頃ダイエットに励んでいる乙女がおりました。

ある日、何を血迷ったのか友人と冗談でロンドンマラソンに応募してしまいました。乙女と友人は参加資格を貰えるのは、宝くじに当たるより難しいと聞いていたので、かなり気楽に過ごしておりました。

 

10月も半ばに過ぎた頃、一通の封筒が乙女の元へ届きました。

 

“何かしら?(ウキウキ)”

 

帰宅したばっかりの乙女は、シャワーを浴びてからゆっくりしてから見ましょうと、封筒をダイニングテーブルの上に置きました。

 

ご主人との夕食中、封筒の中身は何かと聞かれた乙女は“まだ開封してないと”答えました。何やらその分厚い封筒がどうしても気になるご主人は、早く開けて中が見たい様でした。乙女は仕方なしに、食事中でしたが封筒を開けました。そこには…..

 

“Congratulations!! You have a ballot place in the London Marathon 2012”

 

乙女はご飯を思わず吹き出してしまうという失態をし、冷汗が止まりません。

おまけに、頭の中は一晩中 “ Oh…Sxxt…..” の文字がぐるぐる…..

 

後日、一緒に応募した友人に話すと腹を抱えて本気で笑っていました。

そうです、友人は“ハズレ”たのです。あの友人の爆笑した姿は、今でもハッキリと覚えています。

 

それからと言うもの、乙女は鈍足なりに、一生懸命に練習しました。

 

本番3週間前、ゼッケンを取りにロンドン市内のイベント会場に行きました。

そこには、“ハズレ”だった友人の姿もありました。一緒に会場を回ってお茶を飲んでいる時、彼女からとんでもない事を聞きました。

 

“まだ、職場のみんなには行ってないけど、私、乳がんになったの…….再来週から長期の病欠を取るのよ。応援には行けないけど、私の分まで頑張ってね”

 

乙女はなんと声を掛けたら良いか、しばらく沈黙してしまいました。

 

本番当日は、4月にも関わらず夏日の様に暑い日でした。乙女は、辛い癌の治療中の友人を思い、私も負けるもんかと一生懸命に遅いながらも完走する事が出来ました。

 

乙女はちゃんと完走する事が出来たと、後日友人に連絡すると一緒に喜んでくれました。幸い、友人の手術も成功し、これからはしばらく抗がん剤の治療が始まると教えてくれました。

 

 

この後、乙女は走るのを暫く辞めていました。ですが、ブクブクと太ってしまい、ヤバイと思いながらも、なんか気に乗りません。と今年になって、何を思ったか乙女のご主人がロンドンマラソンに秘密で応募していたではありませんか!

 

結果、“おめでとう御座います。当選です”

 

乙女はいい機会と思い、新しいランニングシューズを買い、また走り出しました。

友人は抗がん剤治療の副作用で髪が全て抜けてしまいましたが、なんとか現在は職場に復帰しています。彼女の持ち前の明るさに、癌に負けないと言う気持ちには、頭が上がりません。

 

 

おしまい