ベルギー(一時帰国中)の澁谷です。

 

先週のテレビ朝日出演後のお話です。

(前回の記事と重複もあります。)
 
5月7日テレビ朝日の朝のニュース番組グッド!モーニングで私がコロナウイルス診療に関してインタビューされたものが放送されました。ただ、実際の報道内容が私のインタビュー内容とは大きく異なる意見として受け取られる形で編集・放送されたことに疑問を感じ、SNSでその事について言及させていただいたところ多くの反響を呼びました。今回簡単に経緯に関して述べさせていただきます。
 
まず、放送前日に、テレビ朝日の方から取材の依頼が来て、リモートでの取材という形で依頼をお受けしました。取材の依頼内容は、コロナウイルスへのヨーロッパ と日本の対応の違い、また、現在の医療現場の生の声を聞きたいとのことでした。私は専門が心臓外科であり感染症や公衆衛生の専門家ではありませんので、一医療従事者の声としてしか答えられませんとお断りした上で取材に応じさせていただきました。
 
取材は、ヨーロッパ での感染状況に関して、私がベルギーから日本に戻ってきてコロナウイルスに関する診療をするに至った経緯、帰国時に感じた日本の診療体制に関する率直な意見、また日本で再度働き始めて1ヶ月経ち現場はどう変わったか、現在の医療現場の様子、日本のPCR検査への対応に関して、現在医療現場で必要とされているもの、最後に一言、といった内容で40分程度質問に答える形で進んでいきました。番組放送前に事前に放送内容に関してチェックはできるかと質問させていただいたところ、映像編集を深夜に行い翌朝放送直前に出来上がるので事前のチェックはできませんと断られてしまいました。
 
インタビューでは、PCR検査に関してこれから検査数をどんどん増やすべきかと言ったテーマに繰り返しコメントを求められました。私は今の段階でPCR検査をいたずらに増やそうとするのは得策ではないとその都度コメントさせていただきましたが、放送では完全にカットされてしまいました。(※大規模検査が必要ない理由に関してはここでは割愛させていただきますが、ご興味ある方は是非ご自身で調べていただければ幸いです。)
 
インタビューのカットだけではなく、実際の放送では、私がヨーロッパ 帰りということで、欧州でのPCR検査数は日本よりかなり多く日本は遅れている、といった論調のなかで私のインタビュー映像が使用されました。PCR検査を大至急増やすべきだという一連の論調の一部として私の映像が使用され、自身のインタビュー内容とは大きく異なる意見として視聴者の方に受け取れるように放送されてしまいました。
 
また、インタビューでは現場の生の声として、必要な物資の手配と、医療従事者への金銭面や精神面での補助に関してもコメントさせていただきましたがそちらも全てカットされてしまいました。特に、最前線での医療従事者への危険手当などの補助の必要性は強く言わせてもらっていました。家族などへウイルス感染を持ち込んでしまうことを恐れて1人病院に泊まったり、病院の近くにホテルやマンションを借りて自主的に隔離をしているスタッフも知っています。かかる費用はもちろん補助もなく、みなさんご自身で払われております。愛する家族子供とも会えずに、身体的精神的な負担だけでも計り知れないのに、金銭面の負担までのし掛かるのは本当に残酷でしかありません。医療従事者のプロフェッショナルとしての気概だけで現場を回すのには限界があると思い、そういった部分に行政などからサポートを入れて欲しいとコメントさせていただきましたが、こちらも全て放送されることはなく本当に残念でした。
 
忙しい最前線の医療スタッフは取材に応じる時間も気持ちの余裕も全くありません。私は現場の生の声を多くの方に知ってもらえればという思いで今回取材に応じさせてもらいましたが、実際には放送でそれらを全く届けることは出来ず不甲斐なく思いました。
 
放送終了後に自身のFacebookで事の経緯を述べさせてもらったところ想像をはるかに超える反響となりました。その後、テレビ朝日側から私のインタビューの主旨とは異なった印象を視聴者に与えてしまった可能性があると謝罪があり、本日同番組内でインタビューされた内容の一部紹介と私のコメントを再度届けさせていただきました。
私個人としましては、ただただ現場の声を届けることができればという思いでしたので、このような形とはなってしまいましたがメッセージを届けることができ十分に満足しております。本業に支障がでてしまいますので、追加の取材などは一切断らせて頂いておりますがご容赦頂ければ幸いです。
 
最後に、私のメッセージをお伝えさせてください。たくさんの方が外出を控えていただいたことで、たくさんの方が救われています。家にいなければいけないつらさ、隔離疲れたよといった声ももちろんわかります。ただ、生きるか死ぬかのところで今もまだ必死にがんばっている医療従事者とその家族達もいます。どうかみなさん長く辛いところではありますが、引き続きご自分の行動を見つめ直していただければ一医療従事者として大変ありがたいと思います。
 
澁谷泰介