◎CSで求められる「完璧さ」とは?

 

では、その「完璧さ」とは何でしょうか。それは「ネイティブとほぼ同レベルの英語を喋ること」です。月岡先生の記事に「中途半端ではダメ」とありましたが、まさにこれがその所以であり、多くのIMGがその「完璧さ」を得ずに本番に挑み、そして玉砕しております。日本以外のアジア諸外国の受験生も同じようにSEPに苦しめられており、ある時期には8人のネパール人が受験して、7人が不合格になったと聞きました。

 

では、帰国子女でもない我々は「完璧な英語なんて無理」と嘆き、諦めるしかないのでしょうか。実はそんなことはなく、戦略次第で十分に攻略することが可能なのです。これは、私が元々英語を苦手としていたからこそ編み出せた戦略なのですが、それを他者に伝え、その多くの方々が合格していることで、有効なものだと確信するようになりました。特に海外留学経験の無い純ジャパで、TOEFL80くらいの英語力だった方が、CSの準備開始と同時に私のコンサルトを受けて一発で合格されたことは以下の戦略の有用性を証明する一例となりました。

 

◎SEP合格6大条件

 

その戦略を一言で表すと「試験中のみネイティブのように演じ切ること」です。この戦略は6つに細分化することができます。

 

  • ①完璧に近い発音
  • ②アドリブなし
  • ③完璧な英語の完璧な暗記
  • ④聞き返しなし
  • ⑤言い直しなし
  • ⑥ゆっくりはっきり話す

 

純ジャパはこの6つの条件を完璧に満たすことでのみ合格可能と考えてください。繰り返しになりますが、「伝わる」英語では全く不十分であり、「完璧」でなければなりません。その「完璧」に近づくために、この6条件を満たしていくのです。

 

詳細を語ると文字量が膨大になってしまうので、興味のある方は私のブログ(Dr.瀬嵜のUSMLE対策)を参照して頂けたらと思いますが、ここでは簡潔に紹介していきます。

 

  • ①完璧に近い発音

最も重要な条件であり、CSではめっちゃくちゃ発音が重視されます。脅しではなく、本当に重要です。だから日本人訛りの英語ではダメなのです。アメリカで日常会話に困らないレベルであり、周囲のネイティブから「お前の英語は問題ないよ」って言われていてもダメです。分かりやすく言えば、言語を英語から日本語に置き換えると、芸人の厚切りジェイソンの日本語でもギリギリ合格するかどうかです。

 

さらに言えば、イギリス英語も駄目ですし、オーストラリア英語も避けるべきです。とにかくアメリカ英語に寄せていく必要があります。何故なら我々日本人が、その地域特有の訛りを詳細に判別することは困難であり、イギリス英語を話していても、時にはアメリカ英語が混ざってしまことがあり、それがネイティブに違和感を与え得るからです。普段は標準語なのに、会話の中で突然関西弁や東北弁が混ざったら変だなと感じると考えれば、その違和感も理解しやすいかと思います。

 

そこで誰もが一度基礎に立ち返り発音の本を一冊仕上げることを推奨しています。そして、「アメリカ人」に極めて厳しく発音指導をしてもらうことです。

 

Majorをメジャーと発音してませんか?

Bowelをボウウェルと発音してないでしょうか?

 

どれも誤りなのです。とにかく足元を固めていきましょう。

 

  • ②アドリブなし

CSの試験中に話す英語は全て事前に準備されたものでなければなりません。アドリブは厳禁です。帰国子女でなければ、とっさに喋った英語の文法や発音が完璧なものではなくなる可能性がかなり高いためです。

 

「でも、予想外のことを聞かれる時もあるでしょ」と思われる方もいると思いますが、そう思ってしまうこと自体が準備不足と言えます。私は、「予想外のことを聞かれたらこう答える」というレベルまで準備をしていました。

 

実際に、本番では患者の質問を聴き取ることができないことが2度ありました。その一つは背中を痛めた思春期の患者からの質問で、「〇×△too young?」と聞いてきたのです。止む無く一度聞き直しましたが、やはりtoo youngの部分しか聴き取れませんでした。ここでの戦略は、「診断にかかわるような質問は全て曖昧な返答すること」です。そこで、私は以下のように暗記していたフレーズを口から発しました。喋ったのではありません。脊髄反射できるまでに中枢神経に浸み込ませたフレーズをただ口にしただけです。

 

I understand your concern. But, we are not sure what is causing your problems exactly right now. In order to figure out what is going on, we need to run some tests. After that, I should be able to you the more accurate answer. Is that OK?

 

実臨床ではこのように誤魔化し続けることは推奨されませんが、試験に限ってはこのように回避することが可能です。アドリブを使うということは、準備不足に他ならないのです。

 

  • ③完璧なフレーズの完璧な暗記

フレーズを覚えることの重要性は既にお伝えしましたが、その覚えるフレーズ自体に問題があってはお話になりません。覚えるべきフレーズは文法的に完璧でなければなりません。2020年春に医学書院より発売予定の私の本(通称セザ本)には、具体的なフレーズの添削方法を詳しく載せていますので、興味のある方は是非手に取って頂ければと思います。https://usmlego.com/%E5%91%8A%E7%9F%A5%EF%BC%81%E3%82%BB%E3%82%B6%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%AE%E6%9C%AC%E3%81%8C%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E6%9B%B8%E9%99%A2%E3%82%88%E3%82%8A%E5%87%BA%E7%89%88%E6%B1%BA%E5%AE%9A%EF%BC%81/

 

一つだけ具体例を挙げると、Let me summarize.はアウトです。Summarizeは他動詞であるため後ろに目的語をとる必要があるのです。ブログや本ではさらに詳しい添削方法を紹介しています。

 

  • ④聞き返しなし

CS本番中は決して聞き返してはいけません。何故なら聞き返すことで英語を聴き取れていないことがばれてしまうからです。どれだけ聴き取れなくても、さも全てを理解しているような振る舞いをします。情報が聴き取れないことで減点となるのはICEであり、聞き返すことで減点されるのはSEPです。これはトレードオフの関係にあるため、日本人にとって最大の障壁であるSEPを乗り越えるためには、戦略的に敢えて聞き返さないのが正解です。

 

またここでは紹介できませんが、聞き返さなくも情報を補完することができる技は他にも存在します。とにかく戦略あるのみです。

 

  • ⑤言い直しなし

これは多くの日本人の課題だと思いますが、話している途中で言葉が詰まってしまい、「あー」とか「そーりー」とか言って誤魔化し、間違いを恐れてもう一度同じ英語を話そうとする人がいます。

 

アメリカ人は言い間違えることよりも、言い直すことを嫌います。言い直すくらいなら間違っても言い切ったほうがいいのです。また、言い間違えたとしてもとっさにリカバリーできるように準備すべきです。

 

例えば、

Has there been any change in your body weight?

と言おうとしたのに、間違えてHaveと言ってしまったらどうすべきでしょうか。「そーりーそーりー」と言って、もう一度同じ英語を話すのではなく、

 

Have you noticed any change in your body weight?

 

と言い換えるべきであり、これがまさにCSで求められる英語力なのです。

 

  • ⑥ゆっくりはっきり話す

最後になりますが、これも非常に大事な条件です。これは相手に良い印象を与える作戦なのです。明確な採点基準があるとは言え、採点するのは人間です。多少はその人の感情が影響するに違いありません。

 

大局的に見れば、模擬患者は我々がアメリカで医師なるための門番のような存在です。彼らは「この人なら診てもらってもいいかな」という目線で我々をみるはずです。では、訛りのある英語を自信が無さそうにぼそぼそと喋る日本人や、汚い発音で早口で喋るインド人を自分の主治医にしたいと思うでしょうか。きっと思わないはずです。

 

そのため、試験中は常に笑顔で自信がありそうな振る舞いをし、ゆっくりはっきり話すべきなのです。シンパシーを表現するときは役者になりきり、いかにもそれらしい表情をしましょう。ERを思い出してください。くさいほどの演技をするのがベターです。

 

恥ずかしさのためか、演技を苦手とする日本人が多いようです。英語自体は完全に合格レベルなのに不合格になってしまう人の中には、そのような演技力が欠如していることがあります。「あいむそーりーとぅひあざっと」とお経を唱えるように喋ってはならぬのです。

 

簡潔ではありますが、SEPで合格するための6条件をお伝えさせて頂きました。CS受験は泥沼化すると本当に抜けだせなくなります。対策方法を誤り、何度も不合格になった人も見てきた立場が故に、皆さまには気持ち良く一発で合格してほしいと願っています。

 

微力ではありますが、私も活動を続けて、皆様の努力を支援していきたいと思っております。(続く)