こんにちは。マサリク大学医学部4年の新井葉奈です。

このポストを読んでくださっている皆さんの中には、将来ノルウェーで医療従事者として働きたいと考えている方もいるかもしれません。

今回は、マサリク大学の同期で、卒業後にノルウェーで働く予定の2人にインタビューをさせていただきました。その内容をシェアしたいと思います。

<基本情報>

 

Interviewer: Hana Arai (マサリク大学4年)

 

Interviewee 1 (右) : Marita Seljesaeter

  • 年齢: 28歳
  • 学歴: ファッションデザインの学士号取得
  • 職歴: 幼稚園、老人ホーム、整形外科および内科でのナーシングアシスタント

 

Interviewee 2 (左) : Elise Ravnaa Eidem 

  • 年齢: 26歳
  • 職歴: ウェイター、おもちゃ屋、ホテルメイド、バー、障がい者専門施設および老人ホーム、病院でのナーシングアシスタント

 

<目次> 

 

  1. 医学部について
  2. 初期研修、専門医資格取得について
  3. ワークライフバランス
  4. 医療の現状
  5. IMG
  6. まとめ

 

1.医学部について>

 

ノルウェーの医学部は、日本と同じく6年間のカリキュラムで構成されていますが、ノルウェー人とEU/EEA圏内からの学生は授業料が無料なので、医学部の人気はとても高いそうです。

ノルウェーで医学を志す学生の約50%が、今回インタビューした2人のように海外留学を選択するようです。

また、ノルウェーでは、多くの学生が医学部に入学する前に学士を取得したり、働いたりするためにギャップイヤーを取ることが一般的で、中には、高校時代の試験を受け直して成績を向上させる人もいるようです。

今回インタビューをした2人は、ファッションデザインの学士号を取得したり、様々な職業での経験を持ったり、また、マサリク大学の他のノルウェー人学生の中にも看護師の資格を持ったり、学生団体に所属していたりと、様々なバックグラウンドと社会経験を積んでいる生徒が多い印象です。

 

医学部では早い段階での臨床実習が重視されていて、低学年からPBL(問題解決型学習)、グループプロジェクト、そして臨床実習を組み込んだカリキュラムが導入され、学生たちは早くから現場での経験を積むことができるよう工夫されています。

試験形式も特徴的で、MCQやオープンブック試験がほとんどだそう。このため、単なる丸暗記ではなく、理解力や応用力が試されるような試験方式が多く採用されています。

 

2.初期研修、専門医資格取得について>

 

医学部の6年間を修了すると、日本の初期研修にあたる LIS 1(Lege i spesialisering)と呼ばれる初期研修医プログラムに参加します。

医師不足にかかわらず、プログラム数が少ないので、競争が非常に激しく、平均して半年ほどの待機期間が必要になるそうです。その期間中は、「Doctor without a specialization」として働くことになります。

一般的には、1.5年間の内科、外科、GPでのローテーションが含まれ、各分野での指導を受けながら実践的な経験を積むことができます。

その後、LIS 2およびLIS 3を自分の進みたい専門分野で研修を終えると、晴れて専門医として働けるようになります。かかる期間は専門によって異なりますが、LIS 1から3までの合計で平均して5〜6年です。

 

3.ワークライフバランス>

 

インタビューした2人は、ノルウェーのワークライフバランスが他国に比べて良いと感じていると述べていました。通常の勤務時間は病院によって異なりますが、一般的には約8時から17時までの8時間です。また、月に3-5回のオンコールシフトがあるそうです。

LIS1での給与は630000 NOK (日本円で約870万円)、専門医資格取得後は専門にもよりますが、平均して900000 NOK (日本円で約1250万円)

https://www.legeforeningen.no/jus-og-arbeidsliv/avtaler-for/leger-ansatt-pa-sykehus/offentlige-sykehus/minimumslonn-sykehus/

医師としての働きやすさと適切な報酬が提供されているため、医療従事者の満足度が高いそうです。

 

4.医療の現状>

 

①メンタルヘルス

→メンタルヘルスはノルウェーで重要な課題となっており、特に冬の季節にはSeasonal affective disorder (季節性情動障害)がより深刻になるそうです。治療、カウンセリング、サポートグループなど、メンタルヘルスの問題を抱える人々に対処するためのさまざまなサービスが提供され、メンタルヘルス問題の認識向上やスティグマの軽減が進んでいます。

 

②Internal medicine/Geriatric medicine

→高齢者の割合が増加しているため、高齢者医療や内科的ケアに対する需要が高まっています。

 

③一般医療とPrimary care

→ノルウェーでは、国民保険制度を通じて無料の医療サービスが提供されているので、すべての市民が経済的な負担なく必要な医療を受けることができます。しかし、これによって、病院が混雑したり、専門医に見てもらう事が難しくなったり、特定の地域では医療従事者が不足しているそうです。

 

5IMG

今回インタビューをした二人のように海外留学をしたノルウェー人やEU/EEA圏内で卒業したIMGは、比較的簡単にノルウェーで医師として認証されますが、EEA外で教育を受けた場合の認証を受けるには、医学部での成績に加えて、以下のことをすべて行わなければならないようです。医師全体の約15%がIMGで構成されていて、医師不足な分野や地域では特に歓迎される傾向にあります。。

 

<まとめ>

 

ノルウェーで医者として働くための道のりや医療の現状、働き方について等々、インタビューを通じて多くの事を得ることができました。

将来的にノルウェーでの医療に関わることを考えている方にとって、役立つ情報となれば嬉しいです。

 

長くなりましたが、ここまでのご清覧ありがとうございました。

 

新井葉奈