(前編より続く) フェロー応募では、大学病院のレジデント、臨床研究の業績、全米に名が知られる先生からの推薦状というアイテムは揃った。他の候補者にはない自分のオリジナルな点は、消化器の臨床研究に特化した米国でのリサーチ実績があり、更に日本で消化器研修をしていて基本的内視鏡手技まではしていたという点だった。

 

1点だけ、この時点でどうしても克服できない事、それはビザの問題だった。

Hビザで臨床研修を開始したのだが、このビザはフェロー応募に際し多少足枷になった。外国人でもpermanent resident(green card保持者)はNIH grant がサポートするリサーチトラック(T32というもので基本4年間の研修期間となる)に応募できるが、自分は応募の時点ではHビザのままだった。自分の興味はアカデミックな大学病院のプログラムにしかないのだが、ある程度リサーチの時間を確保できるacademic trackではなく、基本的には主に臨床家を育てるclinical trackにしかチャンスはなかった。フェローの時にできることなら臨床研究(医療統計・疫学)の大学院で学位を取得したかったので、面接に呼ばれたらプログラムディレクターと交渉しようと決めていた。

またプログラムもHビザを面倒に感じる(書類手続きと多少のコストがプログラム側に生じる)のは事実のようだった。大学病院の殆どは、外国人の場合はpermanent residentか Jビザに限定していた。実際に3つ程のプログラムから直接コンタクトがあり、HビザからJビザに変えることが可能であれば是非面接に招待したいう連絡もあった。わざわざ好んでJビザに変える利点は全くないと考え、それらのプログラムからのお誘いはお断りした。

 

大学病院のプログラム限定で家族・地理的条件等を加味し40程のプログラムに応募した。内部候補者として確実に面接まではして頂けるピッツバーグ大学の他にHビザでも良いという6つの大学病院プログラムから面接に呼んで頂いた。

 

1.​University of Chicago

2.​Northwestern University

3.​University of Colorado

4.​University of Pittsburgh

5.​Mayo Clinic Arizona

6.​Mayo Clinic Florida

7.​University of Iowa

 

その中で、大学院での学位が取れそうなプログラムは4つ、その全てのプログラムの面接で、直接プログラムディレクターに交渉した。一番の問題になったのが大学院の授業料だった。T32トラックであればNIHグラントを通じてプログラムから全額補助できるが、クリニカルトラックの場合はそれができず授業料の補助が確約できないとのことだった。その中でシカゴ大学は唯一、非常に興味を持ってくれた。プログラムディレクターからは、大学院に行きたければ時間・金銭共に全面的にサポートするという口約束を取り付ける事ができた。アカデミックな環境と自分へのサポートを申し出て頂いた点でシカゴ大学に惹かれマッチングリストの1位にランクした。そして希望通りにシカゴ大学のGIフェローシップにマッチした。

 

後にプログラムディレクターに、なぜ自分に興味を持ちサポートをしようと思ってくれたのかを聞いた。彼曰く、人と違うオリジナルなバックグランドと興味を持っている候補者を特に欲しいのだということだった。そういう人材をプログラムに迎えることで、他のフェローに刺激を与えプログラムをより発展させることができると。人と違う自分のオリジナルを追求することはアメリカでは正解なのだと再認識したのも、このフェローマッチの時だった。