アメリカでは生活するだけで、面白いことが起こるのでブログに書くネタは尽きない?のですが
たまに、真面目に手術で思ったことや疑問に感じたことを挟んで行こうかと思います。
2弁置換術の時に、これまでは大動脈弁輪に全周糸かけて、弁sizeを決めて実際に人工弁に糸をかけてから、そのまま人工弁は落とし込まず術野に置いておき、続いて僧帽弁に移行して僧帽弁置換を植え込んでから、大動脈人工弁を降ろすという手順で学んできました。
太田先生は大動脈弁輪の無冠尖(NCC)だけ糸を弁輪にかけて、弁は選択せず、その後、僧帽弁入れてから大動脈弁の残りの糸をかけて、弁を選択して降ろされます。
以上、これまで学んできたことと、今学んでいることの違いから思ったことは、
・大動脈弁を先に降ろすと、僧帽弁の視野が非常に悪くなるので、やはり僧帽弁→大動脈弁の順が一番良い。
・NCCのところは大動脈弁と僧帽弁の糸が干渉する可能性があるということでRCCやLCCの部分は最初にかけなくても、後でも良さそう。
・さらに、大動脈弁輪に糸をかける前に僧帽弁を先に入れた場合(特に生体弁の場合)、strutが邪魔で大動脈弁輪のNCC側に糸をかけるのは難しくなるのでやはり最低でもNCCはかけておくべきだと考えました。余談ですが、シカゴ大学のChiefはA弁に全く糸をかけず、僧帽弁→大動脈弁の順で手術されます。
・しかし僧帽弁のsizeが大きいとLVOTに突き出して(生体弁の場合)、あとで大動脈弁が入らないことがあるのではないか?(これはA弁をSupra positionに入れる限り100%起きないのでしょうか?)
・もしA弁が入らないことがあるなら、両方とも弁輪に糸をかけて両方ともsizingして弁を決めるというのが一番なのでしょうか?
・それとも、これらは全く経験・知識の浅さから起きている疑問なのでしょうか。
患者さんの家族用待合室に置かれているCPR体験機器。
2弁のときは大動脈弁を切除して、糸をかけて、僧帽弁をできればワンサイズダウンくらいで置換して、大動脈弁をおとすように日本のとき、ならって、出会ったときらそのままするつもりでいます。
僧帽弁のサイズは大動脈弁に比べるとクリティカルになりにくいという話をききますし。
フィールドがぐちゃぐちゃしがちですが、それが一番安全で考えなくてすむかなと。
元々私が習ったのは、まず大動脈弁を切除しデブライドメント等が必要なら行い、糸かけの直前まで終了した段階で、僧帽弁に移行し人工弁を置換後、大動脈弁に戻って、糸かけをし大動脈置換を完了するというものでした。シカゴに来た当初はそのやり方でやっていましたが、僧帽弁に頑張って大きめの人工弁を入れた場合やプロファイルの大きめのデザインの弁(On-X Comfort cuff)などを入れた時に、僧帽弁輪やカフが大動脈弁側に左室流出路の組織ごと大動脈弁側に突出し、大動脈弁の糸かけ(NCC部分)や弁のサイズ選びに苦労する症例があることがありました。それ以来、NCC弁輪部の糸かけは僧帽弁より先にし、僧帽弁のサイズ選びもオーバーサイズしないように気をつけています。特に僧帽弁後尖側のMACを完全に取りきらずに弁置換するときは、オーバーサイズすると人工弁が前方つまり大動脈弁側に押し出される(?)傾向があるためサイズを決める時にはそういうことも考慮して慎重に判断しています。皆さん、どうされていますか?