大学院生 女性からの 質問

 

PAやNPに関してご意見を伺ってみたいなと思いご連絡させて頂きました。現在私は大学院で日本版NPの育成コースを学んでいます。日本ではまだまだ制度も未熟で先輩方が手探りで活動されている様な状況です。制度として成立している海外で実際一緒に働かれてみて、 日本にも必要だと感じますでしょうか。

 

 

木南の 答え

うちの施設 サウスカロライナ医科大学 小児心臓外科(MUSC Peds CT surgery)ではかなりPA及びNPの依存度が高いです。本当にチームの一員かつ日本の感覚でいうとかなり仕事が医者よりです。まず結論から個人的には日本にこそ必要だと考えます。特に心臓外科領域の場合。①MUSCでのPA/NPの仕事ぶりと、②PA/NPが出来た場合のメリット。デメリット ③私見と日本での課題について書きますね。

 

①MUSCではうちの小児心臓外科チームには2人のPA(Physicians Assistant)とNP(Nurse Practitioner)が1人います。オフィスも我々と一緒で、日本みたいに看護部?に所属しているわけではなさそうです。NPもPAも日本での若手(10年目以下?)心臓外科がやるような仕事はほとんどやってくれます。具体的には

・オペ前の患者へのIC(説明) ・オペ前患者診察、カルテ記載 ・書類作り・オペ組み、家族に電話 ・カンファレンス参加 ・簡単な処置やドレーン抜去 ・オペ後の状態把握、Attendingへの報告 ・次の外来の予約などなど

これにプラスしてPAは・手術の第1助手があります。NorwoodもAssistします。ただ成人だとPAがsaphenous vein graft(大伏在静脈)取ったり、開胸したり、人工心肺確立したりまでやってる施設もあるみたいなのでそこまでではないですが十分すごいと思います!

 

②上記を受けて心臓外科医や施設にとってのPA/NPがいることでのメリット・デメリットを思いつくままに書きます。

メリット・医者の仕事の負担や残業時間の軽減 ・医師不足の解消(医者は自由意志で診療科も病院も選べるので大体心臓外科などは偏在したり不足が出ます) ・オペで処置が出来ていないなどがなくなり患者さんの離床・退院時期が早まる ・患者さんがより説明時間を設けてくれるので納得した説明を受けて帰れる ・経営者は医者よりも安い給料で優秀な人材を確保できる(アメリカではPAは年収1000万円くらいらしいですが、日本ではそこまでは現実的ではないでしょう色々な理由でもし可能なら良いと思いますが)

 

デメリット・若手医師が競合する(貴重な第1助手の経験を奪われる)・医者のプライオリティがなくなり医師の給料が下がる(大体NP/PAに反対してる団体はこれが理由じゃないでしょうか)・NP/PAの処置に対しての責任の所在が問われそう

・日本だとNP/PAが薬をオーダーできない(アメリカではひょいひょいモルヒネとかオーダーしてくれます)・NP/PAのトレーニングに時間がかかる また日本での指導できる人材の不足(海外経験者や実質的には医師が指導にあたることになるでしょう)

 

③私見と日本での課題

・NP/PAはぜひ推進した方が良いです!特に心臓外科に限らず人材(医師)不足が言われている分野では特に。そしてその人たちにはアメリカほどでは無くても給料という形で待遇を変えて欲しい。それに伴い日本全体で若手医師の教育制度を考えなきゃなりません。働き方改革もあるし。(つまり”外科医”手術をやる人を育てるには?)

・日本はやたら医師と看護師(キュアとケア?)を分ける傾向にある気がするのですが、いい加減やめたほうがいいと思う。どっちも大事なのはわかってるけど急性期と慢性期でニーズは当然違うし ICUとかERのスタッフが急変対応できないのはおかしいですよね?どう考えても なので本来現場ごと(診療科またはユニットごと)に人事権があるのが適切だと思います。

・なんで今後のNP/PAさんには”医者なんだから”とか”看護師なんだから”をある程度ぶち壊してくれることを期待しています笑 もちろんそれは患者さんのニーズ、現場の人材不足に応じてが鉄則だと思いますし ここまではダメっていう線引きも大事だとは思いますけどね

 

ぜひ頑張ってください 誰がどこで反対しても患者さんのニーズがある限り必ずNP/PAは増えますよ