米国臨床留学の際のビザに関して、私の経験を踏まえた見解は以下です。

  • 米国の移民政策は経年厳しくなることはあっても、緩くなることはない。
  • 「臨床」研修に特化して言えば、Jビザは避けれらるものなら避けた方がよい。
  • 「日本から」「レジデント」として渡米する際は、プログラムはほぼ例外なく臨床Jビザ申請を要求してくる。
  • 「例外」は存在し、アメリカ市民に有益と認められる技術・技能が研修後に備わっていれば、最終的にビザは何とかなりうる。

 

2)と3)は一見矛盾するようですが、その理由があります。私が自分の経験を通して理解するには、臨床留学の形態、特にレジデントから入るのかフェローからの渡米なのかにより、渡米する際のビザに関する状況は異なるからです。外科系で日本から渡米する多くの先生は臨床フェローから(一部外科レジデントからされる先生も数名おられるのはライブで皆さんご存じの通りです)でnon-ACGME programでの研修になるため、研修先がビザを申請しているはずです。またACGMEプログラムでレジデント(厳密にはインターン)をしていないので州医師免許を申請するにも、institutional licenseという特例で免許が下りていることになります。これらの事情(ACGMEを通さない)のためJビザでなく、Hビザ(もしくはOビザ)で日本から渡米している例が多いのではと思います。Jビザを初めから避けられるという点において、この形での渡米は個人的にとても良い条件だと思います。

 

一方で、(内科外科を問わず)レジデントから始める場合は、例外なく3)の状況に対面します。多くの方がご存知のように臨床JビザはECFMGがスポンサーとなるためプログラムにはビザの手間が係らず好まれます。他のHやOビザに比べ手続きが容易な反面、Jビザの基本概念は交換留学ビザのため、研修後の本国への帰国義務が生じ、この義務はWAIVERを申請して免除できますが、専門医としてWAIVERを申請するのは苦労することも多いと聞いています。ただ4)に書いたように、自分が持つ技術や技能が有益で、(主に研修先のプログラムに)スタッフとして残したいと思ってくれるようなことがあれば、大学病院から移民弁護士を通して手続きが進み、「例外」としてビザは解決します。内科外科を問わず、自分の修練を弛まず続ければ道が開ける可能性があり、この意味では臨床研修の初志を全うする事が、自分の運をも引き寄せるのではと思います。

 

私は米国内から臨床研修に入ったため少し例外事項もあるのですが、(研究フェローから)内科レジデントへ移る際に臨床Jビザでなくて、プログラムからHビザをスポンサーしてもらいました。メイヨーで研究を指導してもらっていた先生や、同じく臨床へ移行することを目指していたIMG達から皆一様にHビザにすべきだと強く言われていたのですが、彼ら曰く、将来本国に帰るのか/帰るとすればそれは何時なのかは自分で決めればいいことであり、わざわざ縛りの生ずる臨床Jビザにするメリットはないと言われてました。このアドバイスは至極最もだと思い、レジデントにマッチしたらHビザを申請してもらうことを如何に交渉するかを熟考してました。Hビザ申請にはSTEP3まで合格している必要があるので、レジデンシー出願時期より前にSTEP3も済ませておきました。

 

実際にはレジデントプログラムでHビザ申請を許可してくれるプログラムは極めて限られますが(Hビザは就労ビザであり、プログラムが追加書類提出と費用負担をしなければならない)、可能性は全くないわけではないです。以前の投稿(内科レジデントへの道 後編)にも書きましたが、レジデンシーのプレマッチをオファーされた3つの大学関連病院は、オファーをアクセプトしたらHビザを申請すると確約してくれていました。

 

私がマッチしたプログラムは実際には「IMGはJビザのみ認める」と公式の応募要項に書いてありましたが、私はHビザで始めることができました。アメリカは常に「例外がある国」であることを実感していたので、マッチした後に自分でプログラムに影響力のある方に直接交渉しました。自分がなぜHビザが必要であるのか、そしていかにそれに足るqualifyされた者であるかを直談判しました。この過程の詳細はこの稿では省略しますが、結果としてHビザ申請を認めてもらい、臨床研修ではJビザを回避しHビザで始めました。