初めまして、インド・バンガロールにあるNarayana Institute of Cardiac science(以後ナラヤナ心臓病院)に留学中の上川祐輝と申します。
インドの病院に留学する先生は少ないとは思いますが、自分の経験をシェアできればと思います。
まずは、プロフィールですが、2016年大学卒業後、北海道の臨床研修病院で研修後、大学に入局、現在卒後4年目です。
内容としては以下の通りです。
・ナラヤナ心臓病院に関して
・フェローシップ
・インドでの生活
・まとめ
・ナラヤナ心臓病院に関して
ナラヤナ系列病院は多くの関連病院を持つ病院で、私が留学中のナラヤナ心臓病院は、心臓血管外科、循環器内科の専門病院です。ベッド数は760床 (ICU200床, PITU80床)、手術件数は、去年1年間で7640件でした。
手術室は16室、月曜から土曜日まで、毎日30件前後手術しています。
心臓血管外科としては、コンサルタント(執刀医)16人、ジュニアコンサルタント、レジデントの構成です。ちなみに、レジデントは卒後1年目から6年目まで各学年5-7人おり、ローテーションしています。
・フェローシップ
主な仕事は、現地のレジデントと同じです。医療者の共通言語は英語ですが、患者とのコミュニケーションは現地の言葉(カンナダ語、ヒンディー語、ベンガル語)なため、一般病棟の仕事は、今のところ免除されています。この病院の心臓血管外科医としては、インド人以外の留学生は自分一人だけです。
現在は病院長でナラヤナグループ創設者のDr. Devi Shettyの手術室に配属されています。主に、大動脈症例、Ross procedure、PTE (Pulmonary Thoromboendarterectomy)、Redo症例などの高難度症例の他に、心臓移植、LVAD、ECMO症例が経験できます。後ほど、参考までに経験症例を載せておきます。
今ローテーションしている手術室は、シニアコンサルタント2人、ジュニアコンサルタント、レジデント2人(5年目、3年目)で構成されており、コンサルタントは、main procedureのみで、基本的には、ジュニアコンサルタント、5年目レジデントで手術をしております。(病棟管理は3年目レジデント)
2019年6月より、留学を開始し、早4ヶ月が経過、手術経験症例は168件です。大部分は、第2、3助手ですが、開胸、SVG採取は自分が、カニュレーション、閉胸は5年目レジデントが、というように、しっかりと役割分担がされています。最近は、5年目がBoard examでいないので、カニュレーション、閉胸も任せてもらえています。
一日の流れとしては、6時頃からICU回診、カルテ書き、ジュニアコンサルタントにプレゼンし、7時から7時半に1件目の患者が手術室に入室し手術開始。2件目は14時〜16時頃に入室し、手術終了後、病棟回診し終了という流れです。それに加えて当直が、月に7〜8回あります。
日本とほとんど変わらない生活ですが、インドにはIntensivist、PA(Physician Assistant)がおり、術後ICU管理は、Intensivistが、開胸・閉胸の前立ちはPA(と言っても所属する手術室には学生PAのみ)が行います。
・インドでの生活
正直、食事は美味しくありません。今後も慣れることはないと思います。
主な食事は、辛いカレーか、辛い炒飯みたいなもの。基本的に炭水化物(パサパサなご飯)でお腹を満たすようです。辛いものが苦手な自分としては、カロリーたっぷりの宅配ピザだけが、楽しみです。
住居は、病院の隣にある外国人患者・家族用のアパートメントに住んでいて、快適です。シャワーは時々お湯が出ないことがあります。停電が1日に何回かあります。
バンガロールは、インド第三の都市シリコンバレーと言われていますが、病院のある場所は、中心地より、1時間ほど車で来たところです。周囲は、田園風景が広がっており、野良犬、野良ウシ?が歩いています。
・まとめ
開閉胸、カニュレーション、グラフト採取(SVG、ITA、Ra)を学ぶには十分な症例
英語の環境 (インドは英語が第二言語で、医療関係者間では英語が共通語)
執刀経験はほとんど経験できない
非常に医学に対して真剣に取り組まれある方だと思います。
インドで良い経験をされて、今後の日本での心臓外科を飛躍させてください。
非常に詳細な記録ありがとうございます。とても興味深く拝見しました。今までに約20人くらいのインド人フェローと仕事をしましたが、大変な事や驚く事が多々ありました。インド国内での研修は益々大変なのではないかと推察します。細かい面白いことなどお教え頂ければとても有難いです。個人的にはインド人が細かく顔を振りながら喋るのが好きです。
コメントありがとうございます。現地では、私用の携帯電話が仕事でも使われるのですが、オペ室のフロアナースが明らかに友達と話していて、仕事をしてくれなかったりというのは日常茶飯事です。
現地の医師や看護師と仲良くするために、英語以外にも現地の言葉を積極的に習ったり、使ったりしています。(これは日本でも同じことが言えると思いますが、外人が日本語を喋ったら僕らは歓迎する)
あと、顔を小刻みに振るのも練習し始めました。