今回は、看護学生の時に、特に印象に残った科目HAUORA MAORI(ハウオラ マオリ)について書きたいと思います。HAUORA とはニュージーランドの先住民マオリ語の言葉で「健康」という意味があります。
マオリの事を知らない人もいらっしゃると思いますが、NZのラグビー選手が試合の前に行う「ハカ」をご存じの人は多いのではないでしょうか。ハカはマオリ人の伝統芸能のパフォーマンスです。
ニュージーランドの人種は主にヨーロッパ系74%と先住民のマオリ人15%です。マオリ人はイギリス人がNZに入植する以前から住んでいたポリネシア系の民族です。
HAUORA MAORIの科目はマオリの歴史、植民地時代がマオリ人に与えた影響、そしてその植民地時代に受けたストレスが今の時代にも負の影響として続いていて、マオリ人の健康悪化にも繋がっているという事、それに対するNZ政府の対策について勉強しました。
NZに住んでいると、度々ニュースでマオリ人の貧困・健康・失業・メンタルヘルス問題を耳にします。国民の健康統計を見ると、明らかにマオリ人の健康状態がヨーロッパ系の民族より悪いのが数字でも示されています。
HAUORA MAORIのコースでの課題は、エッセイの提出とプレゼンテーションでした。エッセイは2500ワードで人口統計の基づいてのマオリの健康実態、植民地時代がマオリの健康に及ぼした影響、現在の政府が実行しているマオリへの健康対策を書きました。
プレゼンテーションは、実際にマオリの人に会い、その人の健康状況についてプレゼンし、その人が興味のあるヘルスプロモーションを紹介するというものでした。プレゼンテーションは15分間でもう一人のクラスメイトと一緒にしました。
因みに、エッセイを書くのはいつも手こずっていたのですが、私が通っていた学校には、STUDENT SUCCESS チームと言って、生徒のエッセイのアドバイスをしてくれるスタッフがいました。エッセイの提出間際になるとSTUDENT SUCCESS チームに足しげく通っていて、無事単位を落とすことなく卒業できたのも、彼らのおかげだと思っています。
マオリに関しての色々な医療の指標が、ニュージーランドの白人に較べて劣っているのを『医療従事者が(無意識にでも)差別しているから』とよく言われます。私は同意できませんね。私もこの国では外国人として住み、働いているので、どの人種であっても同じように接しているつもりです。『医療従事者』の問題以前に、マオリの文化(多くの家族が一つの家に住み、たくさん食べ、人にたくさんの食べ物を提供する事が楽しみであり、それを変えるのが難しい)や教育、それによる収入の差(お金がなくて医者にかかれない、再診するように言ってもしない、薬を取らない、または薬が買えないなど)、色々、医者に来る以前の問題が山積みです。美樹さんはどう思われましたか。
これは、本当に難しい問題ですよね。看護学校の時に、マオリ人の先生の講義で、「ナースが自分の受け持っている患者さんに接する時、自分と同じバックグラウンド(人種)の患者さんに接する仕方と、そうでない患者さんに接する仕方は、無意識のうちに違ってくる」という事を、おっしゃってました(その先生が書いた論文の中の調査で、看護師にアンケートを取ったそうです。)私も、全く差別をしているつもりはないのですが、やっぱりマオリヘルスはマオリの人たちを先導にして進めていくと、改善されるのかなっと思っています。マオリの人口が15%に対して、マオリのナースは7%らしいです。私の通っていた学校では、マオリ人の生徒には、(他の人種では申し込みができない)特別なスカラーシップを取得できたり、勉強以外のサポートも手厚かったと思います。これからマオリの医療従事者、健康機関が増えると、良い方向に変わってくるのかなと思っています。
誰と接するかによって、接し方が違う事自体は問題ではないと思います。例えば、私たち日本人が、外国で日本人に会ったら、その外国の人と接するのとは違う接し方をするのは、ある意味自然な事だと思います。同じバックグラウンドを共有しているから、それだけで親しみを感じるでしょう。
ただその接し方の違いが健康に関するOutcomeに違いに繋がる事が問題です。例えば白人とマオリの人が同じ問題で医者にかかった時、白人の患者さんには内視鏡をするよう病院に紹介状を書くがマオリの患者さんは紹介しない、などです。
医者も看護師さんと同じで、医学部の入学にはマオリ枠があります。
私は、もっと根本的な教育や文化の問題をどうにかしないといけないと思っています(が、私には大きな問題すぎて、自分ができる範囲で努力を続けるしかないと思っているのですが)。
のりこ先生、コメントありがとうございます。そうですね、教育や文化の問題が底辺にあるので、すぐには解決できない大きな問題ですね。
内視鏡の事は、びっくりしました。なぜ、マオリの人には紹介状を書かないのでしょうか?
内視鏡の事は「例えばそう事をするのは差別ですよ」と言う話です。誤解を招いてしまったらすみません。ただ、(内視鏡だったか何か忘れましたが)マオリの人が白人よりも病院に紹介される事が少ない、と言う統計の結果はあるようです。でも私の個人的な経験からの印象は、同じ症状でもマオリの人を紹介しない、と言う事はないですね。ただ紹介されても患者さんが検査の日に行かないとか、フォローアップで診察に来るように言っても来ないとか、そう言うのはよくあると言う感じがします。
なるほど。そういうことなんですね。
なんだか、色々考えさせられます。。。