みなさんご無沙汰しております。国立国際医療研究センターの百瀬です。

冠動脈吻合日本一への挑戦」に参加させていただいた時にブログを書かせてもらっていたのですが、今回、冠動脈外科学会主催の「第1回冠動脈吻合技術競技会〜オンラインOFF-JT OLYMPIC〜」に参加しましたので、そのご報告をさせていただきたく久しぶりに筆を取りました。

 

その前に「冠動脈吻合日本一への挑戦」が終わってからのことについて触れたいと思います。

2020年9月に企画最終回を迎えるまではほぼ毎日のようにBEAT, YOUCANに向かう日々を送っていました。他のチャレンジャーからの刺激であったり、指導してくれた日本医科大学の高橋先生、企画の主催者である北原先生に恥ずかしいところは見せられない、という使命感からそうしていたのだと思います。(もちろん上手くなりたいという思いは人一倍あったと思いますが。)

しかし企画終了後、一気にBEAT, YOUCANに向かう頻度が少なくなってしまいました。元々コツコツタイプではなく一夜漬けタイプであった性格が出てしまったのだと思います。

 

ただ、臨床の現場ではつい最近緊急が重なったタイミングで人生初の開心術の前立ちをする機会がありました。元々その日は外回りの予定だったので、恥ずかしながら朝から手術に入る心構えは全くしていなかったのですが、急遽入室直前にそのような状況になってしまいました。しかし術式はCABGで、この企画を通して色んな吻合を見たりYOUCANを縫いまくったりしていたため不思議と緊張半分自信半分という気持ちになっていました。もちろん術者には辛い思いをさせてしまったと思いますが、なんとか無事手術が終わり、感謝の気持ちから術後ふと北原先生の顔が浮かんだのを覚えています。

 

そんな中、冠動脈外科学会主催の「第1回冠動脈吻合技術競技会〜オンラインOFF-JT OLYMPIC〜」という大会があるのを知り、即決で出場を決めました。(ウソです。実は最近練習まともにやってないし、正直自信もそんなにないなぁ〜と躊躇したのが本音です。)

この競技会はクラス別となっており、D,Cクラスが医学生〜初期研修医、Bクラスが外科専攻医、Aクラスが心臓外科修練医、Sクラスが医学生〜教授までの無差別級となっています。学年的にはBクラスに属するのですが、ちょっと背伸びをして興味本位でSクラスに出場することにしました。

久しぶりのYOUCAN吻合。吻合の順番だったり、流れは体が覚えていたようですが、針のハンドリングがめちゃめちゃ劣化してました。これはやばいぞということでEBM社からYOUCAN,グラフト, 針糸を購入してまた練習の日々が始まりました。半年みっちりやっていたおかげか、割とすぐハンドリングの感覚も戻ってきました。

そんな中1月23日にBクラスの本戦があり、非常にレベルの高い戦いの末、大学時代国試の勉強を一緒にしていた同級生が優勝したのを見せつけられました。しかもこの本戦に出場している人たちは1000吻合,2000吻合を当たり前のようにしていて(大きな声では言えませんが僕はまだ500吻合くらいです・・・)焦りに焦りまくりました。

なんとかSクラスの本戦に出場することができることとなり(本戦出場は本戦の3,4日前に発表されるので、それまでそもそも本戦に進めるかもわからない状態で練習を続けるという悶々とした日々が続きます。)他の本戦出場者の予選動画を見てまた焦りました。部分的に左手を使って縫う先生がいたり、曲がった持針器使う先生がいたり強者揃いの予感。焦りました。

 

そして本戦当日。午前中に髪を切って、昼過ぎに来年度に向けて車を購入しました。リフレッシュ完了です。車購入の帰り道あたりから心拍数が100前後で推移していました。電車の中で大きく深呼吸をしたり変な人だったことでしょう。

家に帰って、ひたすらYOUCANを縫いました。手が震えてました。まだ本番でもないのに。メンタル弱っ。

そして本番が始まりました。僕の出番は5人中2番目。1番目の先生が全く手の震えもなく、100点満点の86.3点という全クラスを通じて過去最高点を叩き出しました。。。「は?やめてくださいよ!!」とミュートになっていることを3度くらい確認してから大声で叫びました。しかし時間は待ってくれません。

自分の名前が呼ばれました。心拍数は優に120を超えていたと思います。手に人の字を書いて3回飲み込みました。(こんなんやったの小学生ぶりです。)そして吻合開始。やっぱり手は震えちゃうんだなぁ〜と思いながらなんとか最小限に押さえつけ吻合を終えました。吻合中スーパーサージャンの先生方からお声かけいただきましたが、吻合に必死すぎてぶっきらぼうに答えてしまいました。本当に申し訳ありません。ただ、多少手の震えやハンドリングミスがあったものの吻合形としては満足いくものができたと思います。結果は86点。0.3点負けた。めちゃめちゃ悔しかったです。ですが、緊張感から開放され、点数的に見ればこのまま僅差の準優勝じゃねと高を括っていました。最後の参加者がさらっと89点という圧倒的な差をつけて優勝しました。レベルの違いをまざまざと見せつけられもはや悔しいという気持ちは湧かず、これからまた練習してあのレベルに到達してやるという闘志が湧いてきました。

名だたる先生方に自分の吻合を評価していただき、コメント(特に多くのお褒めのお言葉)をいただき、また他の参加者の先生方の吻合を見て多くを学ばせていただきました。この場を借りて、この企画に携わった方々に深く感謝申し上げます。

 

ということで、結果からみれば3位という順位ではありましたが、大変満足いく経験をさせていただくことができました。

改めてこのような企画に積極的に参加していくことの大切さを学ぶことができました。これからもチャレンジを続けていきたいと思います。

また、こんな僕に質問であったり、アドバイスなどあれば、なんでもwelcomeですのでご連絡いただければと思います。個人的にはこのような大会で活躍している特に同世代の先生方と交流ができると嬉しいなと思っております。よろしくお願いします。

 

それではまた会う日まで。

 

 

Fig1. セッティング
→オンラインOFF-JTキットA2のセッティング。BEATの中に埋め込んで、手元は普段通りBEATに手を置いて吻合しました。
 
Fig2. セッティング内部
→オンラインOFF-JTキットA2のセッティング内部。キットの下に段ボールを入れて高さを普段のBEATでの吻合と同じになるように調整しました。