医学部医学科6年

氏名:姜 ヨハネ

派遣機関:ヴァンダービルト大学

派遣期間:4/3 ~ 4/28

 

この度、ヴァンダービルト大学のSICU (surgical intensive care unit)への臨床留学をさせていただいたので、その経験をシェアさせていただきます。

 

ヴァンダービルト大学について:

まずヴァンダービルト大学、知っている人はいないと思います。僕も全然知りませんでした。テネシー州のナッシュビルというよく知らないところにあり、なんだそれFランか?と思いがちですが、、、実はすごい大学です!医学部ランキングでアメリカの10位に入ることもあり、南部では最強の大学です。特に研究が強く、潤沢な研究資金と設備があります。病院のサイズのでかさ、設備の充実、スタッフが多く仕事の分担がしっかりしている点にまず驚きました。またそれによって医師、医学生は全米から優秀な人たちが集まるためとんでもなく優秀な人が多かったです。特にインターンは一年目なのにプレゼン、処置などを完璧に行い、ディスカッションでも堂々と自分の意見を述べており、感動しました。さらに学生のレベルはとんでもなく、自分は3年目の医学生と一緒にローテーションをしていたのですが、いつも完璧なプレゼン、さらに答えられない質問はないというレベルで、自分との差に愕然としました。そんなとてつもなく素晴らしい病院だということを伝えた上で、ぜひ来年以降後輩がたくさんヴァンダービルト大学に留学に来てくれればと思います。

 

実習内容:

僕が実習した科はSICU (surgical intensive care unit) という、術後の重症患者さんを管理する科でした。この科を選んだ理由としては、もともと麻酔科に興味があったのですが、麻酔科はヴァンダービルト大学では海外学生向けに実習を許可していないため、最も関係がありそうなのがSICUだったからです。そもそもどんなことをするのかもあまりわかっておらず、かなり軽い気持ちでローテーションする科を決めてしまったので、慎重に調べて考えることをお勧めします。

それでは実習の1日のスケジュールを共有します。

4:30 起床 朝ごはん食べる、出発する準備。

5:00 家を出る 家が病院から遠いので30分ほど歩く。

5:30 病院に着く ついてからはカルテで患者さんの情報を何となく眺める。

5:45 サインアウト ナースプラクティショナーが当直中に患者さんに起きた出来事を共有。

6:00 プレゼン準備 自分が割り当てられた患者さんのプレゼンを準備。

8:30 回診 アテンディング、フェロー、レジデント、インターン、ナースプラクティショナー、看護師、薬剤師、学生で回診。

11:00 情報共有 回診中に決まった今後の方針、行うべき処置などを全員で共有。

12:00 ランチ カフェテリアにいろんな種類の出店が入っているので、買って食べる。

13:00 レクチャー フェロー、時々アテンディングがSICUに関する授業を行う。

14:00 のんびり 患者情報のチェック、CV留置等の処置の見学、新患の対応見学など。

15:00 実習終了 その後は図書館、カフェとかに行き自習のまとめなど。

19:00 帰宅 ご飯は日本から持ってきたパスタ、パックご飯などを適当に。

22:00 就寝

このスケジュールを見て分かる通り、かなりハードなスケジュールです。特に朝がめちゃくちゃ早くて、最初の一週間は慣れるのにかなり苦労しました。僕は一緒に実習にきた友人とrotating roomというサイトで見つけたインターンの家の一室を借りて住んでいたのですが、学校まで徒歩30分という距離のせいでこんな早起きを強いられました。

そして実習の内容としては充実しており、特にお勧めポイントとしては、海外からきた学生にも回診中のプレゼンテーションをやらしてくれる点です。回診は、SICU全体で20人ほどいる患者さんのうち、より重症な10人をサインアウトで選び、2時間ほどで回ります。行う内容は、学生やインターンが行うプレゼン、その後フェローやアテンディングがフィードバックを行最終方針が決まる、という形です。プレゼンに関しては、ICUならではのby systemのプレゼンで、患者のHPIと24時間で変化したことを軽く説明したのちに、体の上から下まで重要な器官ごとに今後の治療方針をそれぞれ発表していきます。このプレゼンを、最初は一人、慣れてきたら二人(新患一人、継続一人)行うのを自分は心がけました。プレゼンのための準備としては、6:00 ~ 8:30までの間に、カルテで前日のインターンが書いた患者まとめノートを見る、そこから変化したことを確認、インアウトバランス、ラボデータや画像検査などを確認、現在の呼吸管理、循環管理の設定の確認、輸液、薬剤の確認などを行います。確認が終わったら実際に病室に行き患者、看護師と話して現状を確認します。例えばバイタルはどうか、痛みはどうか、呼吸、心音はどうかなどの情報を集めて戻ってきて、今後の情報の治療方針を決めます。その後自分のプランをインターンに提案し、色々話して確定していきます。

正直これはかなり難しくて、人工呼吸器の設定の違い、循環作動薬の違い、疼痛管理の方法、抗菌薬の使い方、入院に伴う合併症を防ぐための方法等の知識がないとうまく方針を決められないため、最初は大変戸惑いました。それこそインターンが作ってくれたものをただ読むだけ、というのが最初の週でした。そこから、ほぼ毎日ある講義、帰ってからの予習復習をしながら少しずつICU管理について学んでいき、少しずつ何をするべきなのか自分で考えられるようになりました。

 

アドバイス

留学を充実させるためのアドバイスは、留学を楽しみたい人、将来渡米したい人でだいぶ変わってきます。自分は渡米したい側だったので、自分が思った留学を充実させる方法を残せればと思います。

まず大事なのは目的を明確にすることです。例えば僕は、最も大きい目標は推薦状を得ること、にしていました。というのも、将来レジデンシーマッチに応募するには、アメリカ医師が書いた推薦状、できれば自分が応募する科の医師のものが必要となります。しかし推薦状をもらうというのはだいぶふわっとしていて、何をすればいいのかはあまり知られていないです。僕もいろんな人に相談しても結構バラバラな意見があり、どうすればいいか迷っていました。そんな僕が自信を持ってお勧めするのは、アテンディングにアピールする機会を作ることです。推薦状をもらう相手はあくまでもアテンディングなので、直接関わる機会をできるだけ作り、推薦状に書けるようなネタを作るのが大事になります。そこで、毎日プレゼンでアピールする、その日学んだことを毎日アテンディングにメールで送る、積極的に回診中や講義の質疑応答に応える、頻繁にフィードバックをお願いして、できれば週の最後にカフェとかでお話をする時間を作る、という工夫をしました。個人的にはSICUは二人のプレゼンをできるという点で恵まれていて、アテンディングに認知してもらいやすかったと思います。それ以外にも、フィードバック、メールを送る、という点はポジティブに捉えられることが多かったため、お勧めです。また最後にカフェに行って自分のことを話し、将来渡米するためには推薦状が必要なんです、とお願いすると、推薦状を書いてくれる流れになると現地の学生に教えてもらい、実践することができました。とりあえず自分のできることを色々考えて実践することが大事だと思います。

続いてたくさん観光に行く、現地の学生と話す、日本人のアメリカにいる医師と話すこともお勧めです。

僕がこの留学で一番楽しかったのは、実習の合間の土日月を使って友人とニューヨークに旅行に行ったことでした。限られた時間しかないこともあり、怒涛の観光となりました。ワールドトレードセンター、海沿いサイクリング、セントラルパーク、ブロードウェイでのミュージカル、ヤンキースの野球観戦などを詰め込みながら、現地の日本人の医師の方と会うこともでき、色々アドバイスをいただくことでき、非常に良かったです。実習があまりにもきつくて息抜きが必要でしたが、ところどころ観光に行くことでストレス解消になり、来週も頑張ろう、となることができました。また日本人のお医者さんとお話しすることで、かっこいいなーという憧れができ、実習を頑張るモチベーションとなりました。ナッシュビル自体も、ダウンタウンという飲み屋が多くて有名な場所だったり、12 south というおしゃれな街だったりと観光するところは意外と多く、楽しむことができました。

あとは、現地の学生と実習で同じになった際に、アメリカの医学生と日本の医学生の違い、普段の過ごし方、勉強方法、実習へのモチベなどを聞くことができ、こんなに違いがあるんだなーとか、ここは共通なんだ、と勉強になることが多かったです。

 

企画者:国際医療福祉大学医学部 茅原武尊(Takeru Kayahara)