医学部6年 男性からの 質問

 

医学部6年の学生です。消化器外科志望で大腸ガンや炎症性腸疾患に関心があります。医師として留学するとなると消化器系で特に臨床系はかなり現実的には厳しいのかと思っています。先生はどのような経緯で消化器外科留学をされたのか教えてください。

 

 

高橋 の答え

 

 

初めまして。ニューヨーク州、バッファローの高橋です。Roswell Park Comprehensive Cancer Centerで腫瘍外科のフェローをしています。
私は日本での外科研修後、Cleveland Clinicで5年間のGeneral Surgery residencyを行いました。
臨床での留学はやはりかなりの努力が必要ですが、不可能ではありません。
すでに大腸癌、炎症性腸疾患という興味がある分野が決まっているのであれば、フェローシップから渡米することは可能です。近年、こちらのフェローシップも細分化する傾向があり、大腸癌、炎症性腸疾患に関してはColorectal Surgeryのフェローシップが一番分野としては近いと思います。Colorectal Surgeryは1年間のフェローシップです。参考までに、その他の一般的な外科系のフェローシップは、trauma/critical care, pediatric surgery, surgical oncology, minimall invasive surgery, bariatric surgery, cardiac surgery, vascular surgery, transplant surgeryなどがあります。
フェローシップから渡米する場合には、日本での数年間の臨床研修(大腸癌、炎症性腸疾患の経験がある方が望ましい)と日本の外科専門医、そしてUSMLEが必要です。フェローシップには正規(ACGME accredited)と非正規(Non ACGME accredited)のフェローシップがあり、正規のcolorectal surgeryのフェローシップに直接入り込むのは近年のcolorectal surgeryの人気から考えて、おそらく不可能だと思います。具体的にどの病院に非正規またはinternational fellowshipがあるのかはご自身でのリサーチが必要ですが、Cleveland Clinicには少なくとも年間4−5人のinternational fellowの枠はあります。フェロー終了後の進路は、大抵の場合は、日本への帰国となると思います。
 
もし、アメリカに長期滞在が希望なのであれば、外科residencyを終了後、正規のColorectal surgeryへのフェローシップに入るのが良いかと思います。外科residency終了後には、こちらでの一般外科専門医(general surgery board certificate)を取得することができ、その後は外国人であっても特に制限もなく就職することができます。
ただし、外科residencyに入るためには、かなり入念な準備と下調べが必要です。フェローシップと同様USMLEの取得は必須ですが、フェローから始めるのとは異なり、USMLEでの高得点(>240)、一回で合格していることなどは必要条件になってきます。近年、アメリカ人、外国人ともにUSMLEの平均得点は向上しているとも耳にします。
また、アメリカでの臨床経験やアメリカ人からの推薦状も重視されます。在日米海軍病院(沖縄、横須賀)が日本人医師に向けて提供している1年間のフェローシップはアメリカでの臨床経験としてカウントされますし、推薦状ももらえることが多いので有意義な一年になると思います。
これらの条件を満たした後、外科residencyへのMatchingに参加します。日本の研修医マッチングシステムはアメリカのmatchingを参考にしており、よく似ています。まずは、9月中旬に行きたい病院にApplicationをオンライン上で提出し(有料)、インタビューに呼ばれれば、インタビューに行きます。インタビュー後に、応募者、病院ともにranking listを提出し、結果はコンピューター上でマッチするというシステムです。最終結果は毎年3月中旬に出ますが、その数日前には自分がマッチしたかどうか(どこにマッチしたかはわからない)はわかるようになっており、万が一マッチしていない場合は、最終日までにもう一度マッチのチャンスがある救済システムもあります。
 
他の先生方のコメントにもあるように、留学の目的、期間、その後の進路の希望によって、海外での留学の形態は様々であると思います。ご自身の希望に合わせて、留学の形態も変わってくると思います。上記はあくまで私の知識と実経験を参考にしており、これしか方法がないわけではありません。