はじめまして。琉球大学医学部6年の大山と申します。

NYP/Columbia University Irving Medical CenterでAttendingをされている武田浩二先生の下で昨年11月にObservershipを行なっていました。1ヶ月ほど滞在していたためワシントンD.C.にも足を伸ばすことができ、チームWADAの北原大翔先生へご挨拶に伺いました。その際に、北原先生から今回の経験について投稿依頼を頂きましたので、大変恐縮なのですが、自分の体験について書かせていただきます。

 

  • Observership

コロンビア大学の心臓外科は日本人心臓外科医として中先生、高山先生、武田先生の3名のAttendingと現在fellowをされている加久先生とを合わせて4名の日本人医師が在籍されています。また、リサーチの日本人の先生も数名いらっしゃり、米国の病院の中では比較的日本人が多い環境なのではないかと思いました。また、関西出身の先生が多く、トークがとても面白かったです。正直、面白い話を返せるほど自分は食らいついていくことができず、とても悔しい限りです。次は持ちネタやウケる宴会芸でも身につけてアメリカに来ようと思いました。

 

見学スタイルとしては、「日本人と時間を共にするより現地のレジデントと時間を共有した方がいい」とアドバイスされたこともあり、基本的に心臓外科レジデント(1,2,3年目)に付く形となりました。朝にレジデントと共にICUをラウンドし、その後にオペ見学を1日2,3件していました。オペの内容はCABG, AVR, Septal myectomy, LVAD implant, Heart transplantなどでした。弁置換では単結節による弁縫着だけでなく、連続縫合による弁縫着やコアノットの使用等と多くの手技を見ることができ、見学の度に刺激がありました。また、私は重症心不全治療に興味があるので、日本では見ることのないCentriMagやHeartMate 3といったデバイスを見学できたことは貴重な経験となりました。

米国の医療現場を初めて見学するにあたって、刺激的で楽しかったことは沢山あるのですが、あえて苦しかったことについても触れようかと思います。深夜のオペ室で誰も知らない中でなぜか一人っきりなってしまったりとか、小児病院の秘書に尋ねても相手にされない、とか色々ありましたが、一番は英語の壁が大きかったです。見学前に医学英語や日常英会話も少しはやってから行きましたが、カンファレンスなどで複数人が同時に会話しているとほとんど理解不能でした。

また、初日から少し経って、慣れ始めたある日。ネイティブしかいないオペに入ると、その日はスタッフ全員が慌ただしく、オペ室の電話が鳴っても誰一人取る余裕がない状況でした。オペ室の電話(麻酔科側ではない方)を看護師さん以外は誰も積極的に取る印象がなかったので、「今回も誰も取らずにまた掛かってくる時に取るのかなぁ」と他人事のように思っていた、その時でした。オペ看が私を指差さして「Pick up!」と。。。虚を突かれて「え?!お、俺、取るの??」とかパニックになるも、その場の空気感に押されて受話器を取らざるを得ない状況になり、気づいたら受話器を握っていました。 

 

私「 S…Speaking. (なんで俺取ってるんだろ…泣)」

相手「Hello. Are you…◎△$♪×¥○&%#?!」

 

それから先の記憶はあまりありませんが、相手も「なんでお前が取ったん?」と思ったはずです。英語で電話対応は今までした事がないので焦りました。そして、紛れもなくオペ室でただの役立たずであることを痛感しました。この電話の一件で、自分が米国で働くイメージが無くなるくらいには一時的に結構落ち込みました。次の日、私の英語力のレベルを知っているレジデントのステファニーにこの出来事を伝えたのですが、私がパニックの姿を想像できたのかメチャクチャ爆笑していました。

 

そんな中、またオペ室の電話が鳴って…

ステファニー「Uh…Can you pick up the phone? (真顔)」と。

 

やはり…コロンビアの心外レジデント採用要件にはお笑いスキルも入っているのかもしれない…と思った瞬間でした笑。

それはさておき、英語をもっと勉強しよう…いや、それでもやっぱり、天丼、かぶせ、三段落ちなどお笑いの基本的スキルをしっかり身につけてアメリカにまた来ようと心に誓いました。お忙しいところ、色々とご指導してくださいました武田先生、高山先生、中先生、加久先生、本当にありがとうございました。国試前でしたが、とても勉強になり、充実した1ヶ月を送ることができました。

 

  • ワシントンD.C.の滞在

北原先生とは以前から何度かメールで連絡を取っておりましたが、実際にお会いするのは今回が初めてでした。少しご挨拶してD.C.の街を一人で観光するつもりでしたが、なんと八村塁選手の在籍するワシントンウィザーズの試合を一緒に観戦しに行くことになりました。しかも、最前列から二列目の席であり、こんなに良い席で世界最高峰のNBAを観戦できるとは思ってもいませんでした。これが、米国心臓外科アテンディングの力なのでしょうか。また、北原先生が「よくわからないおっさん」と紹介して現れたNBAアナリストと選手控え室に行き、どさくさ紛れに八村塁選手に会うことができました。凄すぎです。これが、米国心臓外科アテンディングの力なのでしょうか。

試合も迫力満点で本場米国のバスケに感動しながら、ふと隣の北原先生へ目を向けると、北原先生の隣席の子供がポップコーンを撒き散らしながら北原先生のテリトリーを徐々に侵食しており、大変なことになっていました。しかし、そこは米国心臓外科アテンディング、動じることはありませんでした。というよりも、試合前にチームWADA Tシャツで写真を撮った段階で「これで終わった!」と言っていたので、北原先生の試合は試合が始まる前にすでに終わっていたのかもしれません。優秀な外科医は手術の前の準備でほぼ手術は終わるのだとかなんとか聞いたことがありますので、それに似ているなと思いました。それにしても楽しすぎました。北原先生、本当にありがとうございました。ただ、自分もその後にポップコーンをぶちまけてしまい、本当に申し訳ありませんでした。

 

最後に今回見学するにあたって、ご協力いただいたコロンビア大学の先生方、自大学OBの先生、北原先生、重ね重ね御礼申し上げます。