お邪魔いたします。シカゴ大学太田です。
弘法筆を択ばず
手術道具は外科医にとってとても重要です。脳から発した指令を、自分の手を介し、道具へと伝達し、対象(臓器)に正確に伝える。道具の不具合により自分の想像した通りに指令が伝達されないと非常にストレスを感じます。一連の伝達がここ一番でうまく機能しないと患者さんの命取りになり得るからです。だから外科医は道具にこだわるのです。外科医は脳内でのイメージを一連の物理的伝達を通じて作用発現する。脳内で正確なイメージを作り上げれるように、またそれを正確に手に伝達できるようにトレーニングするのです。技術者は道具が外科医のイメージ通りの動きができるように、伝達の逸脱を最小限なるようにデザインし開発していくのです。
しかし近年、この外科医の「脳」、「手」、「道具」を兼ね備えた”道具・技術”が開発されつつあります。心臓領域で言えばTAVR(TAVI)、消化器領域で言えば自動吻合器などがそれにあたるのではないでしょうか。外科医個人の技量に左右されない「誰でもできる」再現性の高い技術開発は世の当然の流れと言っていいのではないでしょうか?それらの”一般化された道具・技術”は一定のレベルに達した「脳」や「手」を持たない外科医でも、もしくは外科医ですらなくても本来の手術治療の作用発現を可能にするのです。今現在はまだ道具中の「脳」の部分が人間のそれには敵わない、もしくは一般化された簡易な操作を可能にするため治療の達成度の低さを受け入れざるを得ないトレードオフが存在するため、従来の外科医の「脳」「手」「道具」システムと最新の”一般化された道具・技術”を使い分ける時代であると思います。この先、AI技術の躍進で「脳」の部分が飛躍的に進化を遂げたり、「道具」が”ちょっとしたコツ”を習得するようになったら、我々外科医の仕事はどう変わっていくのでしょうか?そして人間の外科医は何を必要とされるのでしょうか?
いやいや、そんな難しい哲学言われてもわかんないっす。私を含めほとんどの外科医はそんな感じではないでしょうか?少なくとも私の場合は、脳でイメージを作り伝達する物理現象で患者さんが劇的に良くなるのが好きなんですよ。だから外科医をしているのです。だから難しいことはどうでもいいのですよ!!
とはいうものの、私もその昔の職人気質の外科医を極めようとする一方で、最新の技術開発や未知の領域の研。。。。あ、すいません、ここでいつものパターンです。そんなこと言いたかったんじゃないんです。
マラソンです。ウェブマラソン。チームWADAマラソン部にてサンディエゴ・ロックンロールマラソンをみんなで一緒に走破しよう!という企画がコロナの関係で延期になったので、臨機応変企画として「第一回チームWADAウェブマラソン」を企画し、先日無事に実施することができましたのでご報告したいと思い筆をとったら、こんな感じになってしまいました。
もはや収拾不能ですが、とりあえず言いたかったのは、動画編集についてです。ウェブマラソンを動画に収め、ブログ報告のために動画編集をすることにしました。それでMac Bookに備え付けのiMovieをとりあえず開いてみたのですが、これが素晴らしいソフトでした。動画編集については全くの素人の私が、説明書も読まないままただソフトを開いて適当にいじってみると動画がどんどん編集されていくのです。こんなソフトを開発したアップルさんは本当にすごいと思いました。このソフトには「脳」「手」「道具」が一般化して一体化しており、編集に関しての「脳」も「手」も持ち合わせていない私がそれなりに編集できてしまうのです。おそらく動画編集のプロフェッショナルがアップルシステムエンジニアと手を組んでこのような素晴らしい”一般化された道具・技術”を開発してくれたのでしょう。まさに弘法さんと筆がセットになってるわけです。そのアップルさんの努力の結晶を享受し、ちょっとした動画をトレーラーと本編の2つ作りましたのでどうぞご覧ください。
第一回チームWADAウェブマラソン トレーラー
第一回チームWADAウェブマラソン 本編
「誰にもできない」難しい手術ができる卓越した外科医が後進を指導し、自分の「脳」と「手」を後進に伝えるのはとても大事だと思います。事実、若手外科医はその「脳」と「手」に憧れて日々鍛錬するのです。しかし、その「誰にもできない」難しい手技を一般化し「誰にでもできる」技術として多くの患者さんに奉ずるのも、その大外科医に託された使命なのではないでしょうか。
いやいや、また哲学!!大外科医でもなんでもないからよう分からんわ。
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