お邪魔いたします。シカゴ大学太田です。

 

中学の体育祭でのこと。私は花形の100m走に出場した(ジャンケンで負けただけ)。一番最初の組での出走で特に注目を浴びる状況だった。横一線に7−8名並んで正式名称スターターピストルの乾いた鉄砲音で一斉にスタートする。二つ隣のレーンには運動神経抜群の西島くんがいた。間違いなくこの組の単勝一番人気は西島くんだ。実質、足の速さに定評のある西島くんと私の一騎打ちだ。何をやらせても万能な西島くんは、髪の毛が直毛で当時全男子の過半数を占める「スポーツ刈りの男子」の中でも、ピンピンに髪の毛が立っててカッコよくて羨ましかった。私はもちろんスポーツ刈りだったけどヘニャっとなってて嫌だった。短くすればピンっと立つと思って、散髪屋で極限まで短くしてもらったけど結局どこからどう見たってただのヘニャハゲ坊主になって、女子から失笑を浴びた。苦い思い出だ。チラ見してコソコソ話してクスクスするのはやめてくれ。。。どうせならもっとイジってくれ!多感な中学生タケヨシ太田にはちょとキツかった。ただでハゲてなるものか。小学校で道徳の時間をほぼ全て使って「笑い」の学問を徹底教育されている生粋の関西人として「どんなに恥ずかしいことも笑いにしてフィニッシュすべし」の反骨精神を発揮した。コソコソクスクス女子の一人三井さん(仮)はクラスの中でもお淑やかお嬢様系の人気者だ。給食の時間「俺は女子なんか興味ねーんだわ」とばかりにハゲのくせに硬派タケヨシよろしく、スカしてコッペパンをかじりながら三井さん(仮)が牛乳を飲むタイミングを見計らい目の前で大きく目を見開き鼻の穴を全開にして桂三枝(現 桂文枝)のいらっしゃ〜い風のジェスチャーと共に「なんか今日は滑りええわぁ、つるッ!!」と独語をつぶやく。ブホバッ!三井さん(仮)は見事に唾液鼻汁ミキシングした牛乳を口鼻から周囲に爆裂に撒き散らす。鼻から牛乳の三井さん(仮)はクラスの注目を浴びた。クラスから笑いと悲鳴と叫喚が混じり合った騒めきが起こる。ヘニャ坊主タケヨシは男子からの羨望と嫉妬の眼差しを浴びる。ちょとやりすぎた感は確かにあった。いや思いのほかブホバッが豪快すぎたのだ(人のせい)。でも三井さん(仮)のミキシング牛乳を浴びてなんだか新しい至福に浸る(変態の初め)。みんなの世話役的存在である班長の乾さん(肝っ玉)がすかさず三井さん(仮)にハンカチを渡してフォローに入る。私が変態愉悦に浸っていた刹那、状況を理解した全女子が班長を筆頭に烈火のごとく坊主タケヨシを非難罵倒し始める。三井さん(仮)は目を潤ませ半泣きになっている。まだ鼻からミキシング汁は垂れている。さっきまでヘニャ坊主をヒーローとばかりに持ち上げていたその他男子どもは雲行きが怪しいと悟るとさっさとハゲの泥舟から降りていった。カオスな場にあって私は落ち着いていた。いにしえの笑いの原神関西人の意志を継ぐものとして使命を全うしたにすぎないのだ。動じる要素なんてどこにもない。角刈りで下唇がいかりや長介風な散髪屋のおじちゃんが私をヘニャ坊主にした意味はここにあったのだ。ヘニャ坊主から始まった前フリを三井さん(仮)の鼻から牛乳へと昇華し、その時、誰も注目していなかったお嬢様と坊主の2人の日常の空間からクラス全員が一点集中する言わば宇宙におけるビックバンを起こしたのだ。後悔などあろうはずもない(イチロー引退会見風)。私の心臓外科手術におけるこだわりと信念を貫く冷静沈着な手術運びはこの時にビックバンされたのである(意味不明)。

 

皆さん、盛り上がって参りましたが、そろそろラジオの時間です。でもここで一つ言わせてください(うん、まだしゃべらせて)。

同期・同級生というのはいいものです。無数にある運命の糸が一点に集まり皆一斉に同じスタートラインに立った同志です。スタートを切った後、必ずしも同じ方向に走り出すわけではないけれど、スタートの瞬間から今に至るまで全く同じだけの時間量を共に過ごしているのです。世界中に散らばった同志達、どこで何をしているのか知らない人がほとんどですが、自分自身と全く同じ時間軸を過ごしているであろう彼ら彼女らに想いを馳せると逆に今の自分自身を見つめなおす良い機会になり自分がどこへ向かって進むべきか見えてくるような気がします。皆さんの中で鼻から牛乳三井さん(仮)や直毛ピンピン西島くんにあたる人が思い浮かびましたか?もし浮かんだのなら、まさに今がその時です。皆さんとおっさんずラジオの運命の糸が交錯しスタートラインに並んだ奇跡的な瞬間が今なのです。宇宙におけるおっさんずラジオの惑星直列です(頭イッテしもとる)。

 

それではおっさんずラジオvol.10「長谷川くんと西島くん」お楽しみください。

 

 

追記1:その後、三井さん(仮)と私の運命の糸が交錯することは全くありませんでした。鼻から牛乳が悪かったのか、坊主が悪かったのか、世は無情なのです(多分それ以前の問題)。

 

追記2:100m走はソウルオリンピックのベンジョンソンとカールルイスぐらいの差(古いな)で私が勝ちました。。。勝ってしまいました。

 

え?!勝ったの?勝っちゃダメでしょ。オチとしては最低やないか。なんで勝つかね。話の成り行き上、スポーツ万能の西島くんが1位で私がドベ(注:関西弁で最下位の意)でないとイジリようもないやないか。

 

すんません。もしタイムマシーンが発明されたなら、一番最初に100m走のスタート前の自分に言ってやりたい。多分こんな感じだ:

 

今太田「おい、タケヨシ!30年後のブログでオチがなくなるから勝つんやない、ドベでいけ」

昔太田「誰やねん、しかも呼び捨てかい。だいたいブログってなんやねん」

今太田「そか、ブログなんて今の時代ないな。。。まあ詳しい話は30年後にわかるから、とりあえずドベやぞ!」

昔太田「ようわからんけど、冷静に考えてみ?多分それドベになってもオチへんで」

今太田「ん?んー。。。そやな。オチへんな。どっちにしろスベるな」

昔太田「大体なんでも見たらわかるねん、おっちゃんスベリそうな顔してるからな」

今太田「いや、ほっといてくれ。てか、いつもスベってるみたいに言うな。そもそもスベってんのは将来の自分やぞ」

昔太田「そやな、おっちゃん、まあ任かしとき。うまいことやったるわ」

今太田「頼もしいな。任せたで。さすがヘニャ坊主やな」

昔太田「いや、ヘニャ坊主言うな!!気にしとんねん」

 

 

スベッとる。。。

やっぱりか