手稲渓仁会病院で初期研修2年目の塚越隼爾と申します。昨年の夏にシカゴ大学でお世話になり楽しかったのに味をしめて、今年度も長期休暇を利用してアメリカ東海岸で胸部心臓外科医としてご活躍されている日本人の先生方のお話を伺いに (彼女がいない寂しさを真面目な名目によって紛らわすために)、数施設の見学に行かせていただきました。機会をいただきましたので、旅の内容を投稿させていただきます。

 

まず、旅の概要を供覧致します。

お会いした日本人の先生方、移動手段、観戦したスポーツをについてまとめました。

 

Day1: 東京→ボルチモア (飛行機)

Day2: ボルチモア→ワシントンDC (バス)

 ☆NFL…Baltimore Ravens vs San Francisco 49ers

Day3: ワシントンDC

 ★Medstar Washington Hospital…北原先生

 ★Children’s National Hospital…前田先生

Day4: ワシントンDC→フィラデルフィア (バス)

 ☆NBA…Washington Wizards vs Orlando Magic

Day5: フィラデルフィア→ニューヨーク (バス)

 ★Temple University…豊田先生、重村先生、南方先生、柳田先生、砂川先生

Day6: ニューヨーク

 ★Columbia University…中先生、高山先生、武田先生、加久先生、山部先生、林先生、甲斐沼先生

 ☆NBA…New York Knicks vs Denver Nuggets

Day7: ニューヨーク

 ★Mount Sinai Medical Center…板垣先生

 ★Westchester Medical Center…甲斐先生、大平先生

 ★Northwestern University…中野先生

 

『真面目な内容』

とにかく多くの先生方のお話やキャリアパスをお伺いすることができ、また更にその繋がりから紹介していただいた繋がりが生まれました。自分の医師として、人間としての現状を見直す上で、また今後を考えていく上で非常に実りの多い時間を過ごさせていただきました。日常診療の合間を縫ってお相手してくださった先生方に、この場をお借りして改めて心より感謝申し上げます。

簡素で恐縮ですが、見学させていただいた際の思い出を多少述べさせていただきます。

 

〇Medstar Washington Hospital 北原先生

北原先生に、昨年シカゴでお世話になったのに続いてお世話になりました。「『フェローからアテンディングになられ、きっと生活水準が一段スケールアップされているのではないか』という一般的な期待とは裏腹に、北原先生は不変のスタイルを貫いていらっしゃるのではないか」というのが僕の仮説でしたが、見事に外れました。駅まで先生がお迎えに来てくださり、ありがたいことこの上なかったのですが、先生のお車にまず衝撃を受けました。ブログを拝読できていない時期にもし紹介されており、皆さんご存知だったら申し訳ないのですが、Teslaでした。車にはほぼ興味のない自分でも驚嘆する乗り心地でした。液晶画面やフロントガラスの大きさ、後部座席も天井が窓、開け方のわからない後部座席のドア (縦開き) など、革新的なデザインが多く施されていました。青色は太田先生に不評なようです。シカゴではよくUberを使われ、以前のブログでも自転車が盗まれてしまう記事を記憶していた手前、イケてる車というアメリカンドリームを目の当たりにした衝撃で、翌日の見学は気もそぞろでした。一方、先生ご自身は優しくキレのある変わらぬスタイルを貫いていらっしゃいました。

更に追い打ちをかけるように、翌日は北原先生とWashington Wizardsの試合を2列目で観戦させていただきました。最近NBAにはまっている僕としては、Beal選手や八村選手をこの距離で生観戦させていただく機会に大興奮でした。一方北原先生は既に次のレベルの思考に移られており、八村選手のお金の使い道や恋愛事情、Evan Fournierという相手チームの選手が禿げているのかいないのか、といった部分に気が向いておられました。スケールの違いを感じました。その後先生の人脈のお力で、試合後に八村選手とお会いさせていただける人生最大のラッキー/アメリカンドリームに恵まれましたが、移動時間の関係でお断りせざるを得なかったことは、今年3番目くらいに悔しい経験でした。

 

 

前述のBeal選手、八村選手、Fournier選手が皆うつっています。恐ろしい臨場感でした。ラウンジの出入りはサイドライン真横を移動しないといけないので近すぎてヒヤヒヤしました。

 

Wizardsのマスコットは正直けっこう汗臭かったのと、関係者の方が神妙な面持ちで「中身は女性なんだぜ」と北原先生に耳打ちしていたのが印象的でした。

 

同じ日に偶然国立国際医療センターの百瀬先生と一緒に見学させていただいたこと、夕食をChildren’s National Hospitalで研究をされている前田先生とご一緒させていただき、前田先生の恋愛遍歴のお話に引き込まれすぎてTPOをわきまえずに大笑いさせていただいたことも忘れ難い思い出です。続きが聞きたいです。

 

 

〇Temple University 豊田先生、重村先生、南方先生、柳田先生、砂川先生

アメリカ最大の肺移植数を誇る同大学で活躍されている先生方の元で1日見学させていただきました。

余談ですが、朝病院のロビーで砂川先生と待ち合わせをしている時の出来事で、大荷物を持参してスーツ姿がバチバチに決まった若者が大勢集まって僕の周りに座りだしました。どうやら何かの面接に集ったエリート達のようで、会話から察するに初対面にもかかわらず、グイグイと社交していました。僕は萎縮してひたすら携帯とにらめっこしていたところ、迎えに来た偉い人に「迷子みたいなこの子も一緒なのかい?」といじられました。将来もしアメリカのインタビューに呼んでいただけるまでこぎつけたとしても、こんな社交モンスター達と英語で戦うのかと思うと、その後一日中気もそぞろでした。

残念ながら当日の手術はキャンセルになってしまいましたが、フェローをされており心身ともに漢気溢れる砂川先生に1日院内を案内していただき、他の先生方とも直接お話しする時間をいただいた点で、よりプラスであったと感じました。移植医療に身を置きたい自分としては、胸部心臓手術はもちろんのこと、先生方が周術期管理をはじめあらゆるカンファレンスでリーダーシップをとられている姿、そもそも日本人がこれだけ同じ場所で集うだけの信用を現場で勝ち取られている様に深い感銘を受けました。

 

豊田先生と1枚。ワイシャツの下にWADA Tシャツ着用。砂川先生が「すごすぎる」とおっしゃっていた豊田先生の手術を見学できず残念でしたが、レクチャーをしていただき、また車で送っていただき心より感謝申し上げます。後日北原先生からは、ロッキーポーズで撮影しなかったことでダメ出しを頂戴しました。

 

〇Columbia University 中先生、高山先生、武田先生、加久先生、山部先生、林先生、甲斐沼先生

高山先生にご快諾いただき、名門の同施設も1日見学させていただきました。朝一で武田先生と加久先生の心移植、中先生や高山先生をはじめとするアテンディングとI6レジデントの会にてエリートレジデント達に日本を代表する先生方がレクチャーされる姿を拝見させていただきました。手術手技も凄まじく、また教育や学術的な点でも高いものが要求されるアテンディングの真骨頂を目の当たりにしました。

一方で関西出身の先生方が多いからなのか、コロンビアの採用基準に含まれているのか、日々の同施設での研鑽の賜物なのか、ユーモアも一流であったのが印象的でした。内容はとにかくとして、面白くあること、人生を豊かにしていくことにもより一層意欲的に取り組んでいきたいと感じました。内容はとにかくとして。

 

高山先生のパワフルさと人間的な魅力に圧倒されました。白衣の上からチームWADA Tシャツを着用させていただき、同シャツの知られざる伸縮性の高さにも舌を巻きました。1日中つきっきりで面倒を見ていただき、本当にありがとうございました。

 

〇Mount Sinai Medical Center 板垣先生

アメリカ胸部心臓外科のI6プログラムを修了された板垣先生の元でも1日見学させていただきました。具体的な渡米に向けた戦略のオプションを教えていただいたり、院内を見学させていただいたり大変お世話になりました。アテンディングをひとつの到達点と捉えていた自分としては、先生の立場になられてからの今後の話も非常に新鮮に感じました。ただ実は最も鮮烈だったのは、それなりの人数の先生方とお話しさせていただく中で、彼女がいない話になった流れで、「こっち来てから金髪美女と付き合えばいいじゃん」とお伽噺のようなことを食い気味に提示してくださった初めての先生であったことでした。とうの昔に捨てた野望でしたが、当然のように言われてしまうと夢じゃないんじゃないかと期待を持ってしまう自分がいました。そんな先生はNYで日本人の先生とご結婚され、奥様も同じI6プログラムで研修されており、子宝にも恵まれていらっしゃいます。悔しいです。

 

〇Westchester Medical Center 甲斐先生、大平先生

 Northwestern University 中野先生

同じ出身大学で同じ部活の先輩でいらっしゃる甲斐先生をはじめとする先生方のお食事会にご一緒させていただく機会に恵まれました。突然にもかかわらず快く受け入れてくださり、ありがとうございました。同じ学生時代の環境からどうやって甲斐先生のようなカッコいいプロフェッショナルになれるのか、道筋がまだ見えません。

 

 

『真面目ではない内容』

研修医2年目になり、昨年よりも多少お金もたまり、豊かな休暇をと思っていましたが、結果的にはよりサバイバル要素の強い1週間となりました。もし今後なにかの参考になればと思い、いくつか自分の中で斬新だった点をご紹介させていただきます。

 

  • 1. バス

今回の旅で、ボルチモア→ワシントンDC→フィラデルフィア→ニューヨークと東海岸を移動しました。飛行機を使うには近く、時間も融通が利きそうだったことに加えて出費も控えめという理由でバス移動を採用しました。Megabus、Greyhoundなどの長距離バス会社がアメリカに充実しています。デビュー戦はなぜか出発時間が20分早まっており、バスの外装も違って乗り逃しました。苦い経験もありましたが、落とし穴さえ注意すれば、アメリカにしては時間も比較的正確で悪くない交通手段でした。逃しても70分後のバスをネットでその場で簡単に予約できました。コンセントも席によってはありそうで、Wi-fiもありました。でもお金に余裕があればもう使わないことは確実です。

 

Megabusは前方だけ予約席でした。予約なしの時は満席だったのに、予約したときは予約席よりも予約なし席の方がスカスカでした。

 

  • 2. Laundromat

パンツ、シルキードライ、靴下の枚数は元々不足しており、豪雨の中のアメフト観戦で臭くなった靴下もあったので、DCで一番評価が高そうなコインランドリーに行きました。初アメリカンコインランドリーでしたが、サンタクロースばりのひげを蓄えた無口な従業員さんに助けてもらいながらなんとか遂行することができました。利用者は地元の黒人の方ばかりでしたが、あまりジロジロ見られたり絡まれたりすることもなく、並んで携帯をいじりながら仕上がるのを待っている時間はなんとなく溶け込んだ感じで心地良い時間でした。洗剤を買ったりしましたが5ドル強でできました。乾燥機が25セントで5分稼働するシステムでしたが、結局高い温度設定でもパンツが許容範囲まで乾くのに4回くらい回す羽目になったので、そこだけ誤算でした。こちらはお金に余裕があってもまた来たくなりました。

 

  • 3. HI NYC Hostel

ニューヨーク入り当日未明に宿がとれていないことに気付き、慌ててホテルを探し直しました。一番安くても数100ドルするので、ケチって人生初のホステルをとりました。評価はやたら高かったのですが、腐ってもホステルという印象でした。ホステルは当然相部屋です。その中では高めのプラン (3泊で2-3万円) にしたのですが、2段ベッド3つで6人の相部屋となりました。初夜は白人男性と2人でしたが、徐々に4人、6人と日を追うごとに同室者が増え、しかも追加メンバーは全員東アジア人だったので、白人男性がなんとなくアウェーで不憫でした。

ホステル自体は5フロアあり、1階がロビー、客室は4階分でワンフロアに部屋20以上、洗面所数個、シャワーも数台あるのを共有して使うシステムでした。個人的には朝早いのでバッティングすることはなかったですし、シャワーの出もよかったのであまり苦ではありませんでした。シャワーは普通レバー1つの場合、回す距離が大きいほど冷→温になるのが世界の常識と思っていましたが、ここでは温→冷だったので手を焼きました。1階には食堂やムービーシアターみたいな小部屋、中庭など共有スペースも充実していていい感じでした。

ただやっぱり癖はあります。

・ベッドはパイプ製でしっかり軋む

・同室のおじさんはワールドクラスのいびきと睡眠時無呼吸

・何故か夜中3時台になると廊下からサンバ風のお祭りミュージックが鳴り響き、ヨーロッパのどこかっぽい言語で若者が夜な夜な盛り上がっている

・時差ボケ

合わせ技でこれでもかというほど断眠でした。なんで1階の共有スペースで盛り上がってくれないのか不思議でした。異国の地で女性と仲良くなるなどの熱いイベントも発生しませんでしたし、こちらもお金に余裕があればもう使わないことは確実です。

 

夜中に静まり返ったフロント。寝室以外の内装はかなりイケてました。

 

長々と駄文を失礼致しました。今回お世話になったすべての方に改めて感謝申し上げます。