お邪魔いたします。シカゴ大学太田です。
先日、川崎医科大学の渡邊先生がシカゴ大学に遊びに、、もとい見学に来てくださいました。渡邊先生は日本で毎年行われるChallengers’ live demonstrations(冠動脈バイパスの吻合の上手さを競う大会)の3年連続(?)で最終本戦まで勝ち抜いている強者であるとお聞きしておりました。見学に来ていただいた先生には毎回何か記憶に残るようなイベントを提供しようと思っていること、かつ一度その実力を目の当たりにしてみたかったということで、今回はChallengers’ live demonstrations in Chicagoを開催することにしました。参加者は私、西田先生(クリニカルフェロー)、幸田先生(リサーチフェロー)、そして渡邊先生というメンツでした。吻合用のいわゆる”羊羹”を渡邊先生に急遽日本から郵送してもらい、大会の様子を動画に撮りながらいつもの通り和気あいあいと面白おかしくやろうかなと思っておりました。しかし、結局みんな一端の外科医でありまして、いざ吻合が始まるとマジモードに突入し、黙々と吻合を遂行するなんのおもしろみもない動画に相成りました。見学の先生方と行う「シカゴ特別イベント」としてましては、近年稀に見る「盛り上がりに欠けるしっとり感たっぷりなイベント」となりました。審査はDCの北原先生に完成した吻合部の写真を送り、術者の名前は伏せたまま順位づけをお願いしました。さてしっとり感溢れる大会の結果はどうなりましたでしょうか?渡邊先生による報告をご参照ください。
以下本文
International Coronary Congress発表、シカゴ大学病院見学、Challengers’ live demonstrationsの参加についてブログ作成のお話をいただいたので、人生で初めてのブログを書かせていただきたいと思います。
そもそも病院見学に行く時の旅費欲しさにICCとタイミングを合わせてスケジュール調整して演題提出しました。自分の症例はシリーズになるほどの症例を持っていなかったので、自分のケースからケースレポートとして2本演題登録して、1本通ればいいかと思っていたのに2本ともoral presentationで通ってしまい焦りました。ありがちですが、出発前になると急に忙しくなりスライドの作成は直前になってしましたした。初めての海外学会での発表で原稿を発表者ツールに入れて発表しようとしていたら当日申し込み時に使えないことが判明。。。優しい受付のお姉さんが原稿部分をワードに入れて印刷してくれました。
発表は紙を読んでいるだけという情けない有様。。Dr.Taggartが何か教育的な話をしてくれている雰囲気は感じ取れましたが、何を言っていたのかはほぼわからず。。Thank youとしか言えず。。なんともしょっぱい感じの初海外学会発表となりました。
自分の発表が終わってしまえば安心していろんな講演を聞けました。日本の学会よりも圧倒的にプレゼン上手ばっかりです。。演説みたいでした笑。
TECAB含めRoboticなどは全く違いましたが、全体的に内容としては日本の冠動脈疾患学会や冠動脈外科学会で聞く内容と大きく変わらない印象でした。
発表の日の夜にはbroadwayのミュージカルをみに行きました。他は内容がわからないのでアラジンを見たかったのですが、その日はやっておらずオペラ座の怪人を見に行きました。想定外に3時間もあったのと、時差ボケがあったのとで途中やや記憶のないところも・・・迫力だけはしっかり感じ取れました。
学会最終日にシカゴに移動しました。
シカゴ大学
施設見学と手術見学。
滞在中にはRobotic MVP, HeartMATEII交換, CABG, TECABを見学できました。
初日にchallengers’ live demonstrations in Chicago開催。順番に吻合してワシントンDCの北原先生が採点。1位は西田先生、自分は4位(4人中)でした。。。そして太田先生にフォローと指導をいただきました。。本番では何番目を狙って、こうやって吻合した方がコンテストとしては見え方がいいなど手直しとアドバイスをいただきました。おかげで本番ではいい結果を残すことができました。
シカゴは日本人の先生方が働いているからか声をかけてくれるスタッフの方がたくさんいることに驚きました。日本の病院見学に行っても医者以外の人から声かけてもらえることあまりないことが多い気がします。防護用のゴーグルをすっと渡してくれた綺麗な看護師さんに一人で感激していました。
日本の方法と全く違っていたり、日本では使えないdeviceや手術内容があったりと純粋に見学していて面白かったです。Robotic MVPやTECABはトレーニングに来ている人がITAをとって吻合前までしていたりと、一部の執刀医の先生たちだけがconsoleをしていて若手に指導する状況はまだまだ先な日本の状況と比較すると何十年も先に進んでいる印象を受けました。VADも東洋紡の体外式しか見たことがない自分にとっては目新しいものばかりでした。デモで置いてあったHeartmateIII、小さかったです。。。優しいMEさんがdeviceの特徴を教えてくれました。件数が少ないのが問題ですが手術のトレーニングに関しては現在の施設で、いい環境で研修をさせてもらっていると実感した部分もありますが、こういった新しいdeviceの知識や技術を得ようと思うと日本で待っているよりも勉強しに行って持って帰るのが一番いいと感じました。
Challegers’ live demonstrations
シカゴから12月13日の最終便で夜に岡山に到着した翌日14日、岡山で開催されました。時差ボケで深夜帯は目が冴えていて夜中に最終練習。。
本戦には3回出場させていただいていますが、聖路加の吉野先生とはその3回とも一緒に参加させていただいていて、学会などでもお話しさせてもらえる顔なじみになれました。
吻合の順番はくじ引きで決まりました。引いたくじに書いてある数字の順に好きな番号を選べるというものでした。自分は8を引いたので(参加者8人)8番目に順番を選びました。つまり選択権なしです。。。
太田先生との作戦も虚しく、クジ運が悪すぎて順番は結局1番になってしまいました。参加者の方々どの方も上手で、他の人の吻合を見ないうちに最初に自分の吻合を終えてしまえたので、結局緊張しないで済んでラッキーでした。3回目にしてようやく練習中と同じように吻合できたように思います。最初に吻合を終えた後は楽しんで参加するだけでした。
優勝できたことは素直に嬉しかったですが、3回出場している分、全国の他施設の先生や審査員の先生方、またチームWADAの先生方と知り合いになれたことが自分の人生の中で一番の収穫になっていると思っています。
CLDに参加してTシャツをもらいチームWADAの存在を知り、チームWADAに今後の目標をもらいました。今後も努力を続けていきたいと思います。
渡邊 達也
渡邊先生すばらしい投稿をありがとうございました。そして、優勝おめでとうございます。由緒正しい大会で優勝を飾った先生を”シカゴから輩出”できたことを誇りに思います!またいつでも遊びに、、、見学に来てください。
ちなみに、少し遠慮されていたのかと思いますが、Challengers’ live demonstrations in Chicagoでの最終順位は、1位西田先生、2位幸田先生、3位私、4位渡邊先生でした。と言うことはですよ?シカゴ4位の渡邊先生が本番で優勝されたということはつまりですね、シカゴ3位の私はChallengers’ live demonstrationsで優勝できるのでは。。。
太田「僕も来年Challengers’ live demonstrations出よっかなー」
幸田「いやいや、先生はシカゴで大人しくしといてください」
太田「なんでよ!出るのはタダやろ」
幸田「いえ、飛行機代もかかりますし、そもそも予選会から出ないとダメですし」
太田「もちろん予選から出るよ!」
幸田「っていうか先生無理です。卒後10年目までの先生しか出れませんから」
太田「な?!そうなん?なんで?気分はまだまだ20代やで」
幸田「いえいえ、もう40代のおっさんっす」
太田「大会委員長になんとか特別に出場させてもらえるように口聞いて来るわ」
幸田「委員長にクチ聞けるような人が若人に混じるのはよしてください」
太田「なんでー僕なんか今年専門医試験受けたんやで?まだまだぺーぺーやで?っていうか一緒に受けたやん」
幸田「確かに、一緒に受けましたけど。。。」
太田「で、どやったん?受かったん?」
幸田「はい、なんとか合格しました」
太田「お!そうなん!?誰になんぼ払ろたん?」
幸田「いやいやいや、賄賂て。払ってないっすよ」
太田「いやー「お主も悪よのう」の越後屋みたいな顔してるやん!」
幸田「どんな顔っすか」
太田「ま、ええんやけど、越後屋は来年Challengers’ live demonstrations出るんかい?」
幸田「いや、越後屋じゃないっす」
太田「桔梗屋?」
幸田「いや、それ一休さん!」
太田「なかなか反応早いね。どしたん?その鋭さがなんで論文作成に繋がらんかね?」
幸田「痛いとこついてきた。とりあえずChallengers’ live demonstrationsですよ」
太田「え?いや僕CABG好きちゃうから縫うのんまっぴらごめんや」
幸田「切り替え早え~な」
見学の最終日にみんなでステーキを食べに行きました。西田先生は心移植のため欠席ですが、急遽シカゴの納豆ねーさんが駆けつけてくれました。
Challengers Live懐かしいです。自分が参加した時は月岡先生が2位で自分が3位だったそうです。お世辞抜きで月岡先生は物凄く上手いなと客観的に思ったのを覚えています。太田先生が3位ということはChicago大会のレベルの高さが示唆されますね。
SOさん。コメントありがとうございます。北原先生の採点は出来上がりの写真のみで行ったので、渡邊先生の4位というのはちょと実際のそれとは異なるかもしれません。渡邊先生の吻合は確かに上手に縫っていたと思います。ただ、面白い(?)のは渡邊先生は練習キットでは沢山縫っているけれど実際の人間の冠動脈は縫ったことがないということでした。日本っぽいなあと思いました。確かに、「縫う」のはCABGを完遂する上で、一部の必要条件にすぎないとは思いますが、立派に鍛錬を積み重ねてあそこまで縫えるようになっているのは素晴らしいと思いました。
CABGは吻合以外にグラフト採取、長さ決めや取り回し、心臓のポジション、CAGに基づくコロナリーの同定、剥離、真ん中で切る、中枢の吻合の位置や向きなど色々他にもファクターありますよね。
中枢の方が針の角度が限定されてむずかしい場合もある気がします。Partial clamp使ってやる場合の中枢も難易度が上がるような気がします。