こんにちは。Team WADA学生インターン金沢医科大学4年生の面美来です。
この度米国でMed-Peds(内科・小児科)分野にてご活躍されている伊藤先生から貴重なお話を伺う事ができました。Med-Pedsに関する情報がまだまだ少ないのでMed-Pedsレジデンシーの概要と伊藤先生から教わったことをブログにて共有させて頂ければと思います。
みなさん2021年7月10日に配信された世界のDr.ライブ、「小児、成人、妊婦まで診る循環器内科・成人先天性心疾患について」をご覧になられましたでしょうか?
このライブでは現在ワシントンD.C.で成人先天性心疾患をご専門とされているMed-Pedsレジデンシーをご経験された伊藤誠治先生がご登壇されました。
Med-Pedsに興味のある私にとってとても興味深かったです。もしまだご覧になられてないようでしたら是非こちらからどうぞ!
https://www.youtube.com/watch?v=AYkRzdhG2sA&t=47s
私がMed-Pedsの存在を知り、興味を持ったのも伊藤先生が執筆に携われた「米国医師留学のすべて」(日本医事新報社)という本を読んだからでした。
まずは伊藤先生のご経歴をご紹介いたします。
伊藤 誠治 先生
2004 愛媛大学医学部医学科卒業
2004-2006 沖縄県立中部病院
2006-2007 横須賀米海軍病院
2007-2011 University of Missouri Kansas City, Internal Medicine and Pediatrics Residency Program/内科小児科レジデント
2011-2014 New York University Medical Center, Pediatric Cardiology Fellowship Program/小児循環器科フェロー
2014-2015 University of Washington Medical Center, Adult Congenital Heart Disease Fellowship Program/成人先天性心疾患科フェロー
2015- 現在Children’s National Hospital (Washington DC) Cardiologist/循環器科スタッフ
Assistant Professor of Pediatrics, George Washington University School of Medicine and Health Sciences
伊藤先生は現在ワシントンD.C.にあるChildren’s National HospitalにてCardiologist として成人先天性心疾患を持つ患者を中心に新生児から成人までの全ての患者の診療に携われております。
週3日専門外来を担当され、週1日は心臓のMRIを、また同時に病棟や外来の成人先天性心疾患患者のコンサルトやフォローアップなどをされております。医師17年目でその内14年も米国の現場でご活躍されていらっしゃいます。
Med-Pedsレジデンシーとは
Med-PedsはInternal Medicine and Pediatricsの略で内科・小児科レジデンシーのことです。
4年間のレジデンシーであり、内科と小児科をそれぞれ2年間ローテイトします。
Internal MedicineやPediatricsのレジデンシーの存在を知る方は多いと思いますが、Internal Medicine とPediatrics両方を学べるMed-Pedsというcombinedレジデンシーがあるのです。終了すると内科専門医と小児科専門医試験を受験することができ、両方合格すればdouble boardになることができます。その後はプライマリーケアに進む人もいれば、Subspecialtyに進まれる人もいてSubspecialty はカテゴリカルのInternal Medicineレジデンシー、Pediatricsレジデンシーを終えられた人がアプライできる専門全てに応募することが可能です。
定員やプログラム数
2021年のマッチでは77プログラムあり、定員は385人です。一学年の定員が4~6人のプログラムが多く、そのためアットホームでレジデント同士仲が良い印象です。2021年のマッチングでマッチしたIMGは23人で全体の約6%です。その内US-IMGが7人、Non US-IMGが16人で、毎年IMGの全体に対する内訳が6~8%の印象です。
Med-PedsレジデンシーはInternal Medicine とPediatricsのレジデンシーをすでに設けている施設が提供するため、比較的大きな施設が多く、大学病院プログラムや関連プログラムが多いようです。
もともと歴史的にMed-Pedsレジデンシーが東海岸で始まったこともあり、アメリカの東側にプログラムが多いそうです。一方でアメリカの西側はFamily Medicineが強く、グループによっては病棟管理もすることもあるそうです。
IMGとしてのマッチ
2021年のレジデンシーのマッチでは家庭医においはIMGが全体のマッチ数の約25%、内科では約40%、小児科では約19%をしめたため、Med-PedsレジデンシーにおいてIMGが全体の約6%であったことは想像以上に低いものでした。
しかし、この理由としては、そもそもMed-Pedsに応募するIMGが少ないからではないかと伊藤先生が考察されていました。Med-Pedsレジデンシーに参加された日本の医学部を卒業された医師は伊藤先生が知る限り3〜4人とのことです。
Combined specialty であることもあり、まだまだIMGからの認知度が低いのかもしれません。そうであればこの6%という数値を不必要に恐れる必要はないのかもしれません。
Family Medicineとの違い
Family Medicine は3年間のプログラムで、Med-Pedsとは違ってmaternity care, gynecology, general surgery がカリキュラムに盛り込まれています。
Family Medicineはどちらかというと病棟管理よりも外来管理に重点がおかれることが多いそうです。OB以外の臓器別専門科フェローをやりたい人や病棟管理に重点を置きたい人にMed-Pedsを選ぶ人が多いそうです。循環器科、集中治療、感染症科、遺伝科、アレルギー科などの専門科は小児と成人がオーバーラップすることも少なくなく、Med-Peds 卒業生でこういった専門科に進む人もいるそうです。
Med-Pedsに関する概要の説明は以上です。続いては伊藤先生の体験談について書かせていただきます。
伊藤先生の体験談 USMLE編
先生は、同級生に誘われて4年生から少しずつUSMLEの勉強を開始され、4年生の後半から時間が取れるようになり、力を入れられたそうです。
勉強法としては、Question Bankや問題集を解き進められたとのことです。始めはわからないところがあっても解説を読む程度にとどめて立ち止まらないことを意識されたそうです。そうすると自分が同じところで間違えていることに気づくことができ、どこがわかっていないかがわかってくるので、苦手分野などを英語の教科書を読んで理解を深められたそうです。これを繰り返すと出題範囲を網羅することができ、5年生の終わりまでにこのプロセスを終わらせて、6年生からはひたすら問題集、教科書のチェックをし、First Aid (FA)を徹底的に理解し、蛍光ペンを引き、メモを見直したそうです。
試験1〜2ヶ月前は試験本番の時間や試験形式に沿って7ブロックを朝から夕方までかけて演習を積まれたそうです。夕方に終わるとどれだけできたか確認し、間違えたところの復習、FAの参照、書き込み、教科書などを用いて復習をして理解を深められたそうです。
Step 1を6年生の始めに受験され、当時の評価基準における90点代後半を得点されました。この高得点は後々のマッチにおいて言うまでもなく、役に立ったそうです。
6年生の11 月に卒業試験を終えられ、当時国家試験が3月頃であったため、その間にStep 2CKの勉強をされ、6年生の12月に受験され、こちらも当時の評価基準における90点台と高得点を取得されました。
伊藤先生の体験談 Med-Pedsレジデンシーに進まれた理由/マッチングに関して
伊藤先生は日本にいらした時から成人先天性心疾患を専門にしようと考えられていたため、Med-Pedsを選択されたそうです。また、Med-Pedsは様々な年代の患者に携わることができるため選択されたそうです。
IMGがMed-Pedsに応募する際、Internal MedicineやPediatricsにも応募することが一般的とされていますが、伊藤先生はMed-Peds専願でアプライされたそうです。伊藤先生は約80プログラムある中、約40プログラムにアプライされ、10プログラムほどから面接に呼ばれたとのことです。面接に呼ばれる可能性が低いと言われている有名大学病院や、専門に進みたいと考えていらしたため、完全なコミュニティープログラムには応募されなかったとのことです。
その年にどうしてもマッチしたいのであれば他科を併願することも選択肢としてありますが、状況に応じで専願にするか併願にするかを決めるとよいのではないかとのことでした。
10プログラムから面接のオファーがあるとは、IMGからするととても多いと感じます。10ヶ所ものプログラムに面接に呼んでいただくことができた、伊藤先生のマッチへの秘訣や願書におけるご自身の強みをお聞きしました。
最初に挙げられた点は横須賀海軍病院での1年間の米国臨床経験でした。この1年間をどう位置付けてレジデンシープログラムに伝えるかがポイントですが、伊藤先生はtransitional year として位置づけ、アメリカの方式で動く米軍病院で1年間経験を積み、米国の病院システムでの経験があることを伝えられたそうです。他にもUSMLEで高得点を取れたことや卒後3年目での応募が良かったのではないかと仰っていました。
最後に
伊藤先生が仰っていた、どの分野に本当に興味があるのか、またその時点でわかっていることでどこまで決断できるか。可能性をオープンにしつつ、少しずつ領域を定め狭めていくことが大切という言葉がとても印象的でした。
また、日本の医学部卒業生のマッチも不可能ではないと思うというお言葉に大変励まされました。
Med-Pedsで実際に長年ご活躍されている伊藤先生から、直接貴重なお話を伺うことで、目指すものがより明確になり、今後の計画が立ち、何をすべきかがわかり、これからも頑張ろうという意欲がさらに湧いてきました。
選択肢が広いMed-Peds、十人十色の医師としてのキャリア、そして無限の可能性を秘めた人生。様々なことを経験しながら、自分の夢や目標は何か、それを成し遂げるために何をしなければいけないのか、将来のことを考えながら、目の前のことをコツコツやっていきたいと思います。
伊藤先生、この度はお忙しい中、貴重なお時間を割いてご丁寧に質問に答えてくださり本当にありがとうございました。深く御礼申し上げます。
Med-Pedsに興味がある方はぜひこちらのウェブサイトを参照してください。
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