Team WADA学生インターン、富山大医学部3年の西岡です。前回(9月)に引き続き、12月も海外の患者さんを招き、アメリカ人が日本でがんの治療を受け、がんサバイバーとしてどう生きてきたのかというテーマで、日本とアメリカを対比しながら自身の経験をお話しいただきました。

個人的に患者さんの語りを聴くという団体(https://medipathy.one/)をやっており、その中の一企画として、Team WADAインターンとやっております。

今回お話しして頂いた患者さんは、40代男性のアメリカ人、悪性リンパ腫の方です。

 

【患者さんの経歴と病歴】

・アメリカの大学を卒業後、世界各国で働く

・ケニアで日本人の奥様と出会い、結婚、来日

・07年、長男誕生

・08年、悪性リンパ腫に罹患

・14、18、20年に再発

現在、日本の医学部で教員をされ。また国内外の患者団体の立ち上げ、運営もしていらっしゃいます。コロナが落ち着いたらスカイダイビングをやりたいらしいです。

 

以下からは患者さんのお話から、僕が記憶に残っているポイントを書いていきます。

 

【やってよかったセカンドオピニオン】

08年、日本での働きに慣れた矢先。がんの宣告。その時、長男は1歳。深い絶望感に襲われたのはもちろんですが、なんとしても治療しなければという気持ちが大きかったそうです。

はじめ診断された病院「んー。1ヶ月くらいは入院しないといけないですね。」

患者さん「セカンドオピニオン行ってもいいですか?」

病院「え?私たちの診断気に入らんの?」

患者さん「えーアメリカでは当たり前ですよ。むしろ医師側も推奨していますし。」

・・・・

セカンドオピニオンの病院「んー。入院する必要はないですね。」

患者さん「マジ?」

 

結局、患者さんはセカンドオピニオンを受けた病院で治療を受けました。後からわかったことですが、はじめ診断された病院には、患者さんの病気に特化した専門医はいなかったそうです。アメリカでは、自分の専門外もしくは近くにより優れた専門医がいる場合、医師側から患者にセカンドオピニオンを薦めることをお聞きしました。

 

 

【治療は決まっているものではなく、決めるもの】

医師「R-CHOPしましょう」

患者さん「R-CVPじゃダメですか?心疾患の既往歴がありまして。」

医師「ですが、かくかくしかじかでR-CHOPの成績が良いですよ。」

患者さん「わかりました。R-CHOPでお願いします。」

 

R-CHOPは有名な悪性リンパ腫の代表的な化学療法です。ドキソルビシン(アドリアマイシン)は心毒性があり、患者さん自身は心臓疾患の既往歴があることから、R-CHOP療法は敬遠したかったそうです。ですが最終的に、治医と交わした言葉や丁寧な説明で、R-CHOPを納得して選択する決断をしました。

決まった治療法をただ受けるのではなく、悔いのないように自分が納得して治療を受けることが大切。そのためには情報提供者である医師の態度も必要とおっしゃりました。

 

 

【患者だろうがQOLは大切】

14年に再発をした時の話です。

患者さん「エリック・クラプトンの東京コンサート。行きたいなー」

主治医「そんなに行きたいですか?」

患者さん「はい!大ファンです(でも免疫下がっているし外出許可でないだろうな。。)」

主治医「まぁ、いいでしょう。気をつけてくださいね。」

 

患者だから治療優先、黙って寝とけではなく、QOLを考えての外出許可は、単調な入院生活の中でもとても記憶に残っているそうです。患者ではなく、人間としてQOLは大切にしてほしいとのことでした。

 

 

【日本とアメリカの医療の比較】

日本の良い点

・医療費が安い。

日本だと、リツキシマブ(R-CHOPのR)は$900(約10万円)でここから保険が効く一方、アメリカは$15,000-$25,000(約170万〜300万円)とのことでした。

患者さんは日本でがんになってよかったわ〜とブラックジョークを飛ばしていましたが、僕は笑って誤魔化しました。

 

アメリカの良い点

・細分化されたスペシャリスト

日本だと、血液内科が血液がんを専門とするなど臓器別専門医がいますが、アメリカは、悪性リンパ腫のスペシャリスト、白血病のスペシャリストなどさらに細分化されているそうです。一回でスペシャリストアクセスすることは難しいですが、セカンドオピニオンを医師側が推奨することで、スペシャリストへの円滑なアクセスを担保しているそうです。

 

・がんサバイバーシップの充実

がんは治療して終わりではなく、その後どう生きるかも重要なポイントとなってきます。アメリカの専門病院は、がんサバイバーを支援するセンターを完備しているところが多く、治療の一環として見なされているそうです。しかし、日本はサバイバーシップの認知度は低く、専門病院内でも小さいコーナーを用意しているだけなど、差は大きいとのことでした。

 

 

【闘病は続く。未来の医療者へ向けて】

悪性リンパ腫は再発しやすいがんのため、多くの薬を日々飲んでいらっしゃいます。おそらく再発への恐怖というものもあるでしょう。患者さんから最後にこの言葉を頂きました。

・For medical students

-Take a proactive role with a holistic mindset

-“Knowledge is power. Unity is strength. Attitude is everything.”

-Read “What’s a good doctor? ABC of being a good doctor”

・For medical professionals

-Remember we’re human beings, not just disease

-Patient not only understands, but comfortable to ask the hard questions

-Be prepared to offer appropriate support info.

 

次はいつになるかわかりませんが、気が向いたらまた企画しようと思います。

海外の患者さんに興味のある方は、TeamWADAインターンの応募まで!

また、日本語版にも興味ある方は、ぜひ(https://medipathy.one/)こちらのサイトからご連絡いただければと思います!