はじめまして。筑波大学医学類5年の原由輝です。

 

この度、オーストラリアの臨床留学に関連した企画を立ち上げました。

今回は今年の3月にシドニーに1ヶ月electiveとして実習をしてきた慶應義塾大学医学部6年生の小粥智樹さんから伺ったお話と体験記の内容を一部抜粋して紹介致します。

(ここからは一人称小粥さん)

 

<実習に関して>
私が実習を行った Royal North Shore Hospitalはシドニー最大の駅である Central Station から凡そ 20 分という非常に立地の良い場所にありました。実習初日は朝 8 時に病院へ行き、Upper GI surgery のチームリーダーである後期研修医の先生に電話をして、落ち合いました。電話での英語は想像を絶する程早く、TOEFL の listening が易しいと錯覚してしまうくらい には、聞き取ることが困難だったのを覚えています。こうして現地の電話越しの英語の洗礼を受けた瞬間が、これからの4週間に待ち受ける様々な体験に対する期待感と緊張感を助長した瞬間でした。

オーストラリアの医者のヒエラルキーは 1.intern(医学部卒 1 年目 初期研修医)、2.resident(医学部卒 2 年目以降)、3.registrar(後期研修医 専門医のプログラ厶に入れるまではずっと resident)、4.fellow(専門医 日本で言う医員)、5.consultant(指導医)となっており、 日本や、アメリカなどの北米とも少し異なった階級システムになっています。オーストラリアは日本とは異なり、 全員が希望した診療科の専門医プログラムに入れるわけではない為、人気のある整形や外科、形成、皮膚科などはとても競争率が高くなっており、ストレートでresidentからregistrarになれる訳ではありません。私の所属した Upper GI team の構成はintern1 人resident2 人、registrar1 人の計 4 人態勢でした。

 

①回診<Ward round>
朝 7 時から凡そ 2 時間程かけて約 30 人の患者を見て回りました。回診時は患者リストの紙をくれますが、残念ながら、留学生はカルテには ログイン出来ない仕様となっている為、患者の細かい情報を知ることはとても困難でした。

 

②外来<Outpatient clinic>
 外来は 2 週間に 1 回、月曜日にしかやっていない為、外来見学の機会 はとても貴重でした。オーストラリアはイギリスのGP制度を踏襲している為、日本とは異なり、患者は直接病院に行き、専門医に診てもらうと いうことは出来ず、必ず国民各々にいる家庭医(general practitioner) の紹介状が必要です。その為、GPの段階で患者が溜まってしまっているため日本のように頻回に外来は設置されておりません。
二週目の月曜日には、初診患者の history taking を行い、registrar の先生に口頭プレゼンしました。

 

③手術<surgery>
オーストラリア英語では手術室のことを operating theatreと言います。私は完全に手術室=operating room だと思っていたので、“Go to the theatre!! Enjoy!!” と言われた際は何を言っているか理解出来ず、”What is the theatre?”と聞き返した時は、少し驚いた顔をされました。外科系のローテの人は手洗いをする前に、
SGG(Scrubbing Gowning and Gloving)sessionを受け、現地の人からのサイン入り許可証を貰わないといけません。私が受講した時は、手洗いビデオを見た後に1人もしくは2人ずつ皆の前で手洗いをし、デモンストレーションをするという流れでした。手洗いに関しては日本との差異 から慣れるのに少し時間が掛かりましたが、上手く出来なくても、女医さんが丁寧に教えてくれるので心配しなくて大丈夫です。

手術は基本的に1日に 1、2 件見学しました。私はUpper GI Surgery だったので、 laparoscopic cholecystectomy, hepatic resection,  Whipple procedure (pancreatic cancer), esophagectomy, Sandwich technique(hernia)などを見学しました。また先生方がそこまで忙しくない時はScrub inすることも出来ました。看護師の方もとても優しく、緊張していた私に気さくに話しかけて下さり、緊張が和らいだのを覚えています。
1つ大変だったのが、registrar の先生が手術に入っている時の電話対応です。”俺が手術に入っている時、携帯が鳴ったら、対応してくれ“と言われ、何回か電話対応をしましたが、電話越しの英語はこんなにも難しいものなのかと撃沈しました。重要な事柄に対して適当なことを言えば、その先生の責任になってしまう可能性があった為、全神経を集中させ、時には他の先生の力も借り、なんとは4週間電話対応をやり切ることが出来ました。

 

 

 

<日本との違い>

  • 女医の先生が多い

シドニー大学の学生に尋ねたところ、医学部の男女比は 1:1、もしくは女性のほう が多い学年もあるとのことでした。実際働いている人の中には妊娠している女性も散見されたのが非常に印象的で、これは日本では確実に見ることの出来ない光景であると思いました。

  •  
  • 人種の多様性

アジア系、アボリジニー系、ヨーロッパ系と非常に人種に多様性があり、各人種に対する生物学的、さらには宗教的な違いなども理解しておく必要があるなと感じました。

 

  • 働き方に対する考えの違い

オーストラリアでは残業なんてもっての外という考えが社会の根底にあり、実際医者に関しては残業が次の日の診療に悪影響を及ぼすということで、厳しく禁止されています。もし仮に残業を強制された場合や労働環境などが悪い場合には、すぐに労働運動を起こすらしく、実習期間にも、そのような労働運動(labor campaign)が病院内で行われていました(Increase your take-home payと書かれている)。

 

 

 

以上の内容をまとめて小粥さんに発表していただきました。

自分自身オーストラリアでの医療はどんな感じなのかすごく気になっていたので今回の企画はオーストラリアの雰囲気を知ることができてとても興味深かったです。やはり英語の勉強をして臨んでも英語がはやすぎてついていくのに大変であったことが伺われます。日頃からリスニングの勉強をし、医学英語を聞き取る練習をして自分も来年の海外実習に臨もうと思いました。

自分自身高校生の時、オーストラリアに1年間留学をしていたことがあり、小粥さんの話を聞いてとてもうらやましく思うとともに将来一度は働いてみたいなと思いました。

たくさんの写真を用いて発表していただいたのですごくイメージしやすかったです。

自分を含め今後海外実習を考えている学生にとってとても良い選択肢になったと思います。

 

今後もオーストラリアの医療について発信していきたいと思っておりますのでどうぞよろしくお願いいたします。