インターン生の3年平田翔です。私にとって実りの多かった今回の経験についてシェアさせていただきます。

 まず、米軍病院の存在すら知らなかった私になぜこの好機が与えられたかというと、大学の講義で留学に興味がある人は相談してね、と言っていたある教授に漠然と留学についての話を聞いたところ、たまたまその教授が三沢米軍病院のスタッフと知り合いで、よかったら繋いであげるよ、と言ってくださったからでした。アメリカで働くという選択肢を思いついて半年も経っていない知識0の私には、どれだけ有り難いオファーかは分かっていませんでしたが、好奇心だけでお願いしてみました。大学の事務に相談するように言われ、日程調整等の連絡は事務と米軍病院との間で行われ、結局私は2日間だけ行くことになりました。

 

 形式としては、低学年の病院実習でよくある先生の診療を横で見るというのが主で、初日はfamily practitionerの先生、2日目は初日と同じ先生、フライトサージャン(ここは空軍基地なので、それに関わる人を診る科)の先生、内科の先生でした。字面では淡泊なスケジュールですが、私はこの2日間で、アメリカで働きたい、少なくとも日本を出たいという意思を固めることのできたターニングポイントとなりました。渡米をリアルに考えれば考えるほど、日本の良さも見えてきて、ちょうど迷っていた時期でした。物価は安い、安全、清潔、丁寧、トイレと食事で日本の右に出る国はない!それでも、働いている人たちの表情や関係性、扉を開けて待っててくれる人たち、従業員のワークライフバランスを尊重したプログラムやサービス(従業員は歯科診療が無料など)を見聞きして、個が大切にされている環境であると感じて、私にとってそれは日本の強みを上回る魅力でした。「日本の医療現場」と聞くと、時間外労働、上下関係、過労死、教授の論文の手伝い、接待、など辛いイメージがある人も少なくないはずです。こういったことが苦手な私には、初日からこのアメリカ人だらけの病院がとても居心地が良かったのです。それは、エクスターンシップやフェローシップ担当の日本人の方の存在が大きかったと思います。とても優しくて明るくて、私は大好きになってしまいました。たくさん談笑して、私は勝手に友達になれたと思っています笑。(通常)一年間のフェローシップ中の日本人の方々にも大変良くしていただいて、ランチも2日間ともごちそうになって、ためになる話もたくさん聞かせていただきました。ここで私は学生のうちにCVを強くしておく必要性に気づき、また学生で論文を書けることを知りました。また、エクスターンシップのプログラムディレクターの先生から他の米軍病院へのエクスターンシップにも誘っていただけました。

 

 私はせっかく行くなら明確な目標を持っていこうと、iPhoneのメモにこんなことを書いてから出発しました。

  • 将来の働き先候補として雰囲気をみる。
  • アメリカ式の診察をみて、自分が身につけなければならない技能を把握する。
  • 自分の英語力や医学知識がいかに足りないかを痛感し、日々の学習の刺激とする。
  • スタッフの方や先生と知り合いになる。

 

それぞれどんなアウトカムだったかというと、

  • 最有力候補となりました!とても素敵な環境でした!ただ、志望科である皮膚科がないので、要検討。
  • 必要な技能は日本と大差ないと思いました。が、一人あたりにかける時間が日本は5分程度なのに対して、診察だけで20分くらいであることや、患者さんは基本的にfamily practitionerに掛かってから、必要に応じて専門家へ誘導されることなど、システムはかなり異なっていました。
  • 予想通り、英語力も医学知識もダメダメでした。はい、頑張ります。
  • 担当者の方とは仲良しになれたし、現役フェローシップの先生方やプログラムディレクターの先生とも繋がることができたので、合格とします笑。

 大満足のエクスターンシップでしたが、一方でもどかしさも感じていました。Family practitioner外来ではPCOSの患者さんが多いことに気づき、私は初日の夜、ホテルで病気が見えるとQAssistの該当範囲をさらいました。翌日も案の定PCOSの患者さんが来ました。しかし、医師免許のない自分には検査方法が分かっていても、治療法が分かっていても、傍観していることしかできなくて、「あれ、自分なんのためにここにいるんだっけ」と思ってしまったのです。正直なところ、米軍病院でのエクスターンシップや海外の病院でのクリニカルクラークシップに行く動機として、将来のための点数稼ぎという側面は拭えないと思います。将来アプライする病院であれば、自分の人となりをアピールできるし、向こうもそれを知りたがっている。そうでなくても、LORゲットやCV強化という大きなメリットはある。なので、私は今後も積極的にこのような機会があれば、参加していいと思っていますが、英語力を身につけても、医学知識を身につけても、やはり役に立てない虚無感のようなものは残るような気がしました。これをどう克服するかが私の今後の課題です。

 

 最後に、私が今回の体験で学んだ&感じた二つのことをシェアさせてください。一つ目は、面倒見の良い師によって道が開けるということです。コネがあってもそれを人のために使おうとする人ばかりではありません。そういうタイプの人を頼っても迷惑がられるだけです。でも、自分が過去に受けた先輩からの恩を覚えている人や、単純にお世話好きな人は、後輩を喜んでサポートしてくれます。成功する人の歴史には必ずその道を切り開いたキーパーソンがいるはずです。私は今回の病院を紹介してくださった教授にお礼に伺ったとき、論文を学生のうちから書くことができると知ったことを伝えたら、一緒に書こうかと打診してくださいました。私は、この人を逃がしてはいけないと直感しました。また、サポートしてくださる以上、一生懸命取り組みたいと思いました。二つ目に私が感じたことは、海外で働くことは難しいというのは決めつけ過ぎではないかということです。私は高校卒業後、アメリカの大学に交換留学ではなく、一般入学しました。このときも、ネットでは「難しい」とか「厳しい」という言葉が目立ちましたが、私はその大学を卒業するまで、そのように思ったことはありません。むしろ、日本よりずっと寛容でフレキシブルです。後から知ったのですが、エクスターンシップは通常、面接などを経て選ばれた人しか参加できないそうで、試験なしでの今回の1人でのプライベートエクスターンシップは非常に贅沢だったわけです。もちろん楽ではありませんが、道を切り開く方法はいくらでもあって、難しく思える道のりも、海外ならあっさり抜け道があったりするものかもしれません。

私の拙い長文を読んでくださり、ありがとうございます。少しでも参考になれば幸いです。また、質問等あれば遠慮無くご連絡ください。