お邪魔いたします。シカゴ大学太田です。

 

野グソのみぞ知る。

 

かつて勉学に励み、努力を重ね、徳を積み、地位を確立した者のみが種々の過程、検閲を経て、初めて世に自分の思想や意見を発信できた時代は終わりを告げ、今や誰でもお手軽に発信できる時代になっていますね。限られた地上波テレビチャンネル、ラジオ、新聞、雑誌など時間の流れに正比例する情報量と高い棄却限界値に規定される少量の情報をこの世の全てだと信じて生きてきた私にとって、、、いや、正確には私は活字をほとんど読まない生活をしてたので、クラスの噂話大好きおしゃべり野郎門田くんと、中川家の礼二オカンのような井戸端会議ベースのうちのオカン情報、そしてもはや伝説となったNHK人間大学「歌う生物学」しか情報源として持っていなかった私はとても幅の狭い人間だったと思います。おかげ様で今でもカラオケのレパートリーは「生き物は円柱形」だけです。

 

今はどうでしょうか?もう情報が溢れかえってますよね。数々の媒体を通じて、事の真偽や善悪、賛否など関係なく誰でもリアルタイムに全世界に発信できてしまうこの状況は革新的に恩恵をもたらす反面、それを上手く享受できない者は情報の海に溺れ滅されてしまうという側面も持ち合わせていると思います。ネットを開けばもうそこにはあらゆる名言や格言で溢れかえっています。従来であれば人生で一度二度ほどしか出会えないような重みのある高貴な人物の言葉が、まとめサイトで箇条書きにされていたり、一生をかけて体験するようなことが人生何周分もご丁寧に映像付き字幕付きで見放題です。新しいレストランに行く前から、すでにそこでどんな料理が食べられるか、どんなサービスが受けられるか、何ならどのような味がするのか詳細に調べ尽くすことも可能なのです。過度の情報の探索は、対象への興味を逆に薄れさせたり、膨大な情報に疲弊してやる気を挫いてしまうこともあるのだと思います。情報収集と解析に全勢力を費やすあまり肝心の前進する力が漸減してしまうのです。切符の買い方、コンサート会場の入り方、USMLEの勉強の仕方、ひいては良い人生の歩み方など、あらゆることを自分自身は一歩も踏み出してない状態にいながらにしてグーグル先生がご教示してくださるのです。”前置き”の太田、”事前調査”の太田こと私自身が頻繁に陥るのですが、事前収集した情報をベースに物事の経過を事前に自分の台本へと投影してしまい、いざ物事に臨むときに予定調和から外れることを極端に嫌ってしまうのです。そして、不安のあまり予定調和から外れるであろうことを事前に予測感知し何もしてないうちから「ハプニング」を拒否してしまうのです。

 

お釣りはココから出てくるはずですよね?

この料理の写真は撮ってはいけないはずだけどどうしてあの人は許されてるんですか?

この券を持ってここに並ぶと優先的に入場できるはずですよね?

土日は当直しないってことになってると思いますけど?

コーヒーと一緒にサプライズで誕生日ケーキ出てくることになってますよね?

この時間に出港すればクジラが必ず見られるって言ってましたよね?

 

うおおおおおおおおおおおお!!!!息苦しい!!!思考の海がめんどくさい!!

 

結局情報化の恩恵を受け上手く謳歌しているつもりでも、私の人間の幅は狭いままだと内省しています。老若男女問わず現代の情報化社会に身を置いている人々は、やりたいことをやっているつもりでも、実際はやりたくないことをやらない、できないことをやりたくない、いや、できないと思い込んでいることをやりたくない人が多いのではないでしょうか?情報を集約し組み立てて自分ができることだけで組み立てた出来レースで予定通りの勝ちを拾うようなやり方では薄い自分の自己完結でしかないのではないか? と思うのです。

 

一昔前に美徳とされた「情報化」「情報先取り」の時代は今や事象の進行における必要最低限の基礎知識程度の扱いとし、未知のものを未知のままに抱えて前に進む能力、現時点で「情報化」されていない「聞いたことも見たこともない世界」に飛び込む能力が現代人に本当に必要なことではないかと思っているのです。人生において起こるいろんな困難やハプニングに対し、それらを楽しみ臨機応変に、そして自分の経験を基盤にさらに事前収集した情報で応用強化して立ち向かい、人生を満喫するのが大事なのではないかと思います。

 

さて、まあ前置きはこれくらいでいいとして。

皆さん、そろそろ「野グソ」の話しましょうかね?

 

何ですいきなり野グソって?って思いますよね?普通すぐにググりますよね? ええ、情報化を拗らせた頭でっかちで狭い胴体(実際の見た目は傍若無人のわがままボディ)の私はすぐググりますよ。

 

太「OK, Google!」

G「How may I help you?」

太「Search NOGUSO!」

G「・・・・」

 

グーグル先生ですら返す言葉を失うようなことが突然身に降りかかってきても、真っ白なスポンジのようにスッと受け止めスッと野グソできるまさに天然記念物級の「野グソシスト(Nogusosist)」がこの世にはいるのですよ。聞いたことも見たこともない世界に躊躇なく飛び込む心臓外科医のお話です。おっさんずラジオvol.6、どうぞお楽しみください。