少し投稿に時間があいてしまっていたのですが、最近リクエストをいただいたので、今回は私がなぜアメリカへの留学を目指したか、また私なりの英語の勉強方法についてつらつら思い出を語りたいと思います。いつものように長文ですので、お時間があるときにお付き合いください。

 
私が薬剤師の留学に興味を持ったのは、薬剤師2年目の頃でした。それまでは、一度たりとも留学や、アメリカへの旅行すら考えたことがありませんでした。新人薬剤師が調剤や混注業務などの基礎を一通り学び、病棟業務に従事し始める頃でしたが、当時の職場のマンパワーやタイミングの悪さなどが重なり、最初からほぼ一人で一つの病棟をカバーしなければならない状況でした。当時配属されたのは、循環器内科病棟で、あまり循環器疾患の知識もないまま、また抗血栓薬や抗不整脈などのハイリスク薬も扱わなければならず、患者さんの病態や検査値をどう適切に評価するか、いろいろな本や文献を読み漁っても実臨床になかなか活かせず、毎日悩んでいました。
 
そんな時に、当時カリフォルニア州で病院薬剤師をされていた岩澤真紀子先生の日経メディカルの連載を見て、アメリカの薬剤師のトレーニングシステムこそ、まさに自分がやりたかった事だと思い、留学を目指すようになりました。
 
それからは、アメリカの薬剤師になる方法、薬剤師としてトレーニングを積む方法を調べ、岩澤先生や他の留学された薬剤師に直接お会いしてアドバイスを頂きました。できれば最短最小コストルートでいきたかったのですが、莫大な時間やお金もかかり、英語力ゼロどころかマイナスの私にとっては壁だらけのアメリカの薬学部への入学、Pharm.D取得が私にとっては実は近道なのではないかと思い、アメリカの薬学部入学を目指して、早速英語の勉強を始めました。
 
ですが、当時の病棟薬剤師の業務量は膨大で(今もでしょうか)、チームカンファレンスや勉強会などを入れると夜の9、10時帰宅は当たり前、かつ、その頃には血液内科病棟の担当がメインになりその面白さにどっぷりはまってしまっていたこともあり、英語の勉強は細々と続けていたものの、英単語帳1日1ページと、全く進みませんでした。さらに、その頃になると、学生実習で指導しなければならない立場になり、短い期間でどう学生に指導すべきか悩み、でもやっぱりアメリカには行きたいなと、漠然と思い続けている状態でした。
 
転機があったのは、2014年秋にJapan TeamOncology Programという、テキサス州のMD アンダーソンがんセンターの教授の上野直人先生が創設された、英語で行われるワークショップに参加した事でした。米国留学経験があった当時の同僚が教えてくれて、存在は以前から知っていたのですが、躊躇して参加できずにいました。そのワークショップで選抜されると、MD アンダーソンがんセンターで5週間研修できるという特典があるのですが、参加するためには英語のエッセイや推薦状が必須で自分にはまだ無理だなと思っていました。ですが、偶然にも知人がMD アンダーソンで働いていると知り、エッセイや推薦状の書き方などを教えてくれました。薬剤部長の推薦状も無事に頂けて、有難いことに、そのワークショップに参加できることになり、とにかく万全の態勢で臨もうと、英語の勉強を進め、お世話になっていたMRさんに固形腫瘍についてのわかりやすい資料などを頂いてワークショップに臨みました。
 
ワークショップの内容が気になる方には実際に参加していただくとして、そのワークショップで多くの事を学び、また背中もどんと押され、若干勢いでですが、その2ヶ月後には病院を退職しました。これも偶然が重なり、ワークショップで選抜して頂いて、MD アンダーソンへ研修に行く事も出来ました。
 
大好きだった血液内科病棟の業務を離れるのには、大きな決断が必要だったのですが、このままだといつまでも留学費用も貯まらないし、英語の勉強にも集中できないと思い、思い切って退職し、その後は調剤薬局などでパートタイムなどでつなぎ、MDアンダーソンへの研修前に行った2ヶ月の語学留学などを経て(実はそれが初めての渡米でした)、病院退職2年後にようやく薬学部への留学を果たすことができました。
 
ちなみに英語ですが、アメリカに来る前は、冗談抜きでHello以外話す事もできない状態でした。留学のためにお金をかけずに英語を話せるようになりたいと思っていたので、英会話スクールなどには通わなかったのですが、結局は結構なお金をかけた語学留学でかなり伸びたと思います。例えば日本人が比較的得意とする文法も、ネイティブから学ぶと細かなニュアンスによる単語選択などを学べて、私には効果的でした。また、常に英語を話さなければならない環境に身を置くことで、間違いを気にせずとにかく話すことが大事という事も学びました。語学留学とは別に、留学の必須条件である、TOEFLの勉強も役に立ちました。TOEFLではアカデミックな内容も扱うので、ただ話せる事を目標に英語を勉強するよりも、ある程度の点数獲得を目標に勉強した方が、英語力の向上スピードが早かったと思います。未だに英語は発展途上で、リスニングすら危うい時もありますが、それでもなんとかなります。
英語がネックで留学を躊躇している人がいたら、こんな英語がダメダメだった人でも留学できるんだ、と思っていただけると幸いです。