テレフォンショッキング vol.6

2017-08-06

テレフォンショッキングをご覧の皆様初めまして、井戸田佳史(いとだ よしふみ)と申します。東大病院時代に一緒に働いていた内藤敬嗣先生(7月19日のブログに登場)の紹介でここに投稿させてもらうことになりました。英語のみならず日本語も得意ではないので北原先生のように面白く書けるか分かりませんが少々お付き合い下さい。

僕は現在、米国オハイオ州のクリーブランドクリニックに研究留学しています。2016年の9月から開始だったのでもう少しで1年という時期になってきました。教室はPathobiologyの所属ですがbossは肺移植のDirectorを勤めているDr. Kenneth McCurryで主にドナー臓器(心臓と肺)の体外潅流について研究しています。臓器の体外潅流は日本では一般的ではありませんが、ドナー臓器の長期保存や移植の際の虚血再潅流障害を低減させる目的で欧米では既に(臓器によっては)臨床使用されている装置もあります。僕たちの研究はドナー臓器を潅流装置に取り付けた上で薬剤を使用したり設定を変えたりして、臓器の機能評価をすることを主眼にしており、将来的には胸部移植全体のドナープールを広げるのに役立つ研究だと考えています。

元々研究室としては肺の体外潅流をやっていましたが、心臓の方も始めたい、ということでたまたま僕に声が掛かりこちらにやって来たという経緯があります。なので、心臓の体外潅流については全くのゼロからのスタートだったため来た当初から苦労続きで、研究室のメンバーを始め、他の研究室の方やオペ室の技師さんや内科の先生、獣医さんや実験補助員の方など、本当に色々な人たちにお世話になりながら研究を進めています。せっかちな性格の僕にとって最初はこちら特有のおおらかさ(良く言えば)にがっかりすることが多かった様に思いますが、今となってはつたない英語しか喋れない一介の研究者に対して本当に多くの人が親切にしてくれたなあ、という感想です。

CCで研究を始めてからいくつか驚いたことがありましたが一番はドナー臓器の摘出(プロキュアメント)に行ったときのことです。患者、家族の同意があれば人の臓器も研究に使いことが出来るため、臨床チームが使用しないドナー臓器があれば自分たちでドナー病院までプロキュアしに行って研究室に持ち帰って潅流するということもしています。その際は肝臓など他の臨床チームと一緒に手術に入る訳ですが、その段取りが極めて合理的だと思いました。具体的には手術開始時間ちょうどくらいに病院に行って、地元のOrgan Procurement Organization(オハイオ州だけで2団体ある)や他チームとの挨拶もそこそこにすぐにスクラブインします。帰りも臓器が取れ次第クーラーボックスに入れてThank youと言い残して颯爽と病院に帰ります。日本で手術の4−5時間前にスーツで集合して3次評価、ミーティングをして手術後またスーツに着替えて帰院していたことを考えると、全体的にこんな簡単でいいの?という衝撃を受けたのを覚えています。もちろんこちらは日本とはドナー数も移植数も桁が違うのでより組織立っているのだと思いますが、同時に日本が如何にそれぞれのドナー患者(臓器)を大切に扱っているということを改めて考えさせられました。

僕は子ども3人も含めて家族でこちらに来ているので、彼らの学校のことや普段の生活の中でもいろいろと驚かされることがあります。例えばアメリカの学校にはスナックの時間があって家からお菓子を持ってきて午後や日中に食べるけど、お昼ご飯も生徒によってはまたポテトチップスみたいなお弁当を食べることとか、留学している研究者が多い地域だからからかも知れませんが20人のクラスの中で純粋なアメリカ人は半分以下で多くが移民であることなどです。そしてアメリカの小学校はそういう生徒も語学で困らないようにESLのクラスが必ずあってサポートしてくれます。子供たちは英語や異文化に触れ合って日々成長してくれていると思います。

僕の研究期間は2年間なのであと1年程で終了になりますが、この間にUSMLEを取得してこちらで臨床経験も積みたいと思っています。

長文になってしまいましたがここまでお付き合いいただいた皆様ありがとうございました。また機会があれば投稿させていただくかもしれません。質問などがありましたら下記に直接ご連絡いただいてもかまいません。

井戸田佳史

yitoda30@yahoo.co.jp

コメント

  • 月岡 2022-11-06 at 7:44 PM

    井戸田先生書いてらっしゃったんですね。

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