テレフォンショッキング vol.7 CABG徒然

2017-10-12

テレフォンショッキングをご覧の皆様初めまして、大平卓と申します。井戸田先生からの紹介です。今年7月からPA州PhiladelphiaのThomas Jefferson University HospitalにClinical Fellowとして留学しており、現在Cleveland Clinicにおられる田中大造先生、東京大学に帰学された嶋田正吾先生の後を引き継ぎいだ形です。実際の留学内容など興味がおありの方は個人的にお尋ねください。(Suguru.Ohira@jefferson.edu)。留学に本格的に取り組みだしたのは医師6年目の2012年に西村崇先生を頼ってColumbiaを訪問した後くらいからです。当時Fellowをされていたのが当blogでもお馴染の太田壮美先生、西村崇先生(残念ながら先日夭逝)、山根健太郎先生(Jeffersonの元fellowで現Penn州立大学)の御三方で、先生方の活躍ぶりを見てこれではいかんということで、なんとなくやっていたUSMLEの勉強に再度取り組み始めました。試験勉強、就職先探し、書類準備に共通しますが、考えたらすぐに行動に移してみることが大切かと思います。試験日を予約してしまう、Directorにコンタクトをとる、書類をすぐ提出してしまう等です。

さて日米の大きな違いといいますと、CABGが挙げられると思います。日本は”Off-pump, Skeletonization, 両側内胸動脈”が三点セットといっても過言ではありません。欧米ではOn-pump, Pedicle ITA, SIMAが基本です。吻合の糸ですが、私が働いたことがある日本の施設は基本的に8-0 proleneだったのですが、こちらでは7-0が多いように思います。「うちの日本のボスは8-0を全ての末梢側に使っている」と術中にDirectorに言ったら「全部8-0だなんて何てpainfulなんだ!」と言われました。ITAが細いまたは薄い時や、nativeが薄っぺらい時は8-0を使いますが、基本は7-0です。また7-0結節でITAを縫っているsurgeonもいるようです。ITAのセットアップですが、今の施設は端側で基本的にITAの角は落とさずにそのまま縫っています。ちなみに私の日本のボスである夜久均先生は側々吻合で、先端はクリップでした。側々ではGraftのToeを回るのが少し難しいですが、長さ決めは容易で個人的には8-0側々吻合は7-0端側に比して追加針が少ない印象です。あとこちらのSurgeonはもっとザクザク縫うのかなと勝手に思っていたのですが、結構細かい(いわゆるピッチが細かい)です。あとで止めるのが難しいからだと思いますが、懸念があれば迷わず追加針を入れています。7-0で糸を締めると巾着効果が出やすく、よりdog earとかdimpleが出来やすかったり、on-offの違いもあるのかもしれません。ただ基本的に遮断解除後に追加針を要することはありません。こちらではCABGが基本的な手術という位置づけかと思いますが、先日も超ハイリスクCABG(70代、TVD+LMT、Porcelain aorta, 左鎖骨下動脈狭窄+、術前にcrushして挿管、ESRFで挿管後に増悪して透析まで!!)という難症例があり、日本だったら確実にOPCABもしくは無理くりPCIだろうなというcaseでした。こういった症例に対応する際にOff-pump, Aorta-no-touch, Skeletonizaton, Compositeを用いたmultiple arterialといったテクニックはsubspecialtyとしてのcoronary surgeryとして重要であろうと実感しました。またHybrid時代ではRobotまたはMICSによる確実なLITA-LADというリクエストもあるものと思われます。

吻合法に関してはAttendingそれぞれです。Dry laboのキットは机上練習に優れ、針の角度、持ち替えの練習をしていればOnでもOffでも問題なく入れると思います。夜久先生には持針器で針を取りに行けと教わりましたが、これはOff pumpの要因も大きいように思います。攝子で取った方がArrestのときはワンテンポ速いかもしれませんが、一度攝子で取り損ねると結局遅くなります。あまり論じられることは少ないですが、個人的には中枢側、特に胸が深い体格の大きい人の場合などは運針の範囲が限られて難しく感じる角度があります。中枢は概してDistalより先にやらせてもらうので、これをスムーズにこなすことは重要でDistalの練習ばかりではなくProximalの練習も意外と大切かもしれません。Chiefには手の中でカストロを転がせ、と言われますがどうやってもOPCAB的な鎌持ちというかフックみたいな持ち方で押すような運針でないとAorta側の運針が難しい時もあります。Dry laboでは練習できないことにcoronaryの同定、剥離があります。これもSurgeonによって異なり、Arrest前にマーキングする人と止めてから同定する人がいます。特にCxの枝が複数本ある場合、埋没している症例、RCAの最終枝、対角枝が何本もある場合はCAGを実際の心臓に投影して把握する能力が必要です。CABGが得意なSurgeonはそうでない人に比べてこの同定、exposure, positioningが優れており、結果的に短い遮断時間となる印象です。もちろんOPCABだとcoronaryをど真ん中で切開する難易度は上がります。

太田先生、北原先生のシカゴほど日本からのアクセスは良くありませんが、Philadelphiaまでお越しいただければPhilly在住の他の施設の先生方ともども地ビールを用意してお待ちしております。

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