北原先生 寄稿文

2017-12-04

お初にお目にかかります。シカゴ大学の循環器内科、心不全セクションにリサーチフフェローとして所属しております、今村輝彦と申します。シカゴに来て一年と少し、北原先生に何度も催促され、ようやく重い筆を執りました。

 

現在は、シカゴ大学の近く(北に歩いて15分程度)のハイドパークという地区に住んでいます。ご存知の方も多いかもしれませんが、米国は安全な地区と危険な地区にくっきりと分かれます。シカゴは、ダウンタウン(大きなビルや博物館が立ち並ぶ中心部)は安全といわれていますが、それから南へ行くと治安が急激に悪化します。ダウンタウンから南へ20分ほど車を走らせるとシカゴ大学のあるハイドパークという地区にたどり着き、この、大学のある周辺の一角のみが比較的安全といわれているものの、特に南や西には、一歩でも足を踏み入れたら、大変なことになるらしいです。実際、シカゴ大学からダウンタウンへ北に向かう路線バスに乗ったことがありますが、自分ひとりだけアジア人で、ただならぬ殺伐とした空気を肌で感じました。携帯電話をいじっていたら、隣のおばさんに隠すように小声で指示されました。隙を見せていると、容易に取られてしまうらしいです。

当然、安全と教育はお金で買うものです。アメリカはお金がすべてです。一年目はダウンタウン周辺に住んでいましたが、資金が底をつきかけたために、一年目の契約の終了とともに、ハイドパークに引越ししました。家賃が日本円にして約10万円下がりました。ダウンタウン周辺と比べると、そこはかとなく殺伐としたような雰囲気を感じるのと、子供の小学校の宿題がほとんど無くなって、去年、幼稚園で習っていた事と同じような事を今年も繰り返しているような気もしますが、生活ができなくなっては元も子もないので。とはいえ、引越しの前に小学校の評価はウェブサイトで細かく事前に調べ、比較的良い評価の地区を選んでいます。そうでないと、大変なことになっていたらしいです。

 

お金の件は本当にシビアであることは、留学中の皆さんは誰でもわかっていただけると思います。日本からフェローシップを頂いていますが、シカゴの高い家賃と車代でほとんど消えました。博物館などもたくさんあるのは教育上、良いのですが、いかんせん高くてなかなか行けません(これも、時々無料の日があるのでその日を選んで足を運んだり、図書館で無料券を借りたりして節約しています)。

 

子供の同じ小学校に、一組だけ日本人がいます。なんと息子が4人います。しかも全員顔がそっくりです。米国では子供の人数によって最低限用意すべき部屋数が指定されているので、彼らは3ベッドの部屋を借り、車も6人乗れる大きなものを用意しなくてはなりません。フェローシップの額は家族の人数は当然無関係なので、もはや貯金を切り崩している状態のようです。子供の数に関して、色々と考えさせられます。子供が多くて留学を断念したという話もよく聞きます。我々は子供2人を連れてきましたが、4人もいたとすると、大変なことになっていたと思います。

 

息子4人というと、実は私もそうでした。静岡の田舎で、家が貧しかったので、大学受験に関しては、塾禁止(というか目ぼしい塾はない)、自宅から通える範囲の公立大学(たぶんひとつしかない)、私立大学の受験禁止、受験に落ちたら就職、という厳しいルールが課せられました。私の場合は東京に下宿させてもらえたのですが、私以外の弟達に対しては、私の下宿先から通える範囲の公立大学(数える程しかない)も可、というルールが追加されました。

教育の問題は奥深くて、白熱しやすいテーマです。夫婦喧嘩のネタとしても格好のテーマです。少なくとも、自分の経験だけを元に、自分ができたらから子供もできるはず、と決め付けるような発言は控えようと思います。

写真は、本文とは無関係ですが、先日イリノイ州周辺の日本人研究者の会でプレゼンテーションアウォードを受賞した際のものです。右ではなく左が私です。透明でよくわからないのですが、盾をもらっています。基礎研究者の方々の生活はもっと壮絶です。基本的には自分の子供には研究者は薦めないようにしようと思いました。

 

 

 

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