challenger’s Live レポート

2018-01-22

初めまして。福井大学医学部附属病院 心臓血管外科の矢野啓太です。

 

このたびChallenger’s Live 2017の本戦に出場させて頂き(優勝ではありません)、北原先生より機会を頂けましたので投稿させて頂きます。折角ご依頼頂きましたので、僭越ながら普段の練習法をご紹介したいと思います。特にこれから医師になられる学生の方や、心臓血管外科医を志す研修医の先生、心臓血管外科後期研修医の先生方のお役に立てると幸いです。

 

1.Challenger’s Liveとは…

 

若手(10年目まで)心臓血管外科医による冠動脈吻合コンテストです。予選が東京会場と大阪会場で行われ、日本のtop surgeonによりご審査頂きそれぞれ上位4名が本戦出場となります。

 

2.普段の練習について

 

僕は普段EBM社のBEAT(電源入れたら血管が心臓みたいに動くスグレモノ)を使用して練習することが多いです。大学医局の自分の部屋に勝手にDry Laboみたいなのを作ってやってます。BEATにはYOUCAN(ようかん)というnative血管とIMA用人工血管を使用するのですが、それぞれに強度がいくつか用意されています。一番強い強度のものは、多少テンションがかかろうがものともしないのですが、特にIMA用人工血管で血管壁が厚く、実際よりも針を通しにくいように思います(とはいえ実際のIMAに針を通したことはありません)。僕は最初は最高強度のもので練習していましたが、ある程度慣れてからは最低強度のnativeおよび人工血管で練習していました。

 

ところがこの最低強度(EX2といいます)がまたくせ者で、すぐ裂けます。絶対実際の血管より弱いです。最初はあまりに裂けるので心が折れそうになりましたが、最終的には1吻合10分弱〜12分程度で吻合していました。Beatingの条件はHR80、ストローク3のいわゆる一番動く設定でやってました。糸は8-0です。業者さんに試供品をかきあつめて分けてもらったり、手術で余ったやつをもらったりしていました。

 

EX2の血管はあまりに強度が弱く、少し糸にテンションがかかるとすぐ裂けてしまいますが、ずっとやってると血管にストレスのかからない針の入れ方や抜き方、糸のさばき方が身についてきたように思います。また、裂けるのは大体同じところなので、自分の弱点もわかりやすいかと思います。

 

大体BEATを平日に一日1〜2吻合やるように努め、予選前にはブタの心臓を用いたwet laboも行いました。

 

他の本戦参加者の先生方にも伺ったところ、みなさん限られた環境で多様な練習方法をされているようです。BEATが無い施設もたくさんありますが、みなさん僕よりも上手に見えました。結局は環境がどうであれ工夫次第なのかと思います。

 

写真は大学の自分の個室に勝手に作ったDry Laboです。

 

3. Challenger’s Live 予選

 

さて、予選なのですが、予選はブタの心臓を用いた冠動脈の剥離と吻合を評価して頂きます。予選出場者同士でペアになりそれぞれが相手の助手をしながら試技前に練習を行い、本番となります。

 

本番中は誰でも名前を知っているような先生方が食い入るように吻合を見つめてきます。ものすごいプレッシャーです。個人的意見ですがプレッシャーの最大瞬間風速は医師国家試験を超えると思います。普段の練習ももちろんですが、事前に助手の先生とどれだけコミュニケーションをはかれるかも大事であるように感じました。僕は助手の先生に恵まれました。

 

4. Challenger’s Live 本戦

 

本戦もブタの心臓を用います。どういう仕組みかよくわかりませんがEF30%くらいの勢いでbeatingしますので、実際に開胸器とスタビライザーを付けて試技を行います。また、血液のようなものも流しているので、冠動脈切開で血が出てきます。本戦のレギュレーションに関しては年々変わっているようで、今年はブロアーやシャントチューブの使用はなしで、総血量を減らして対応しました。ただし来年以降はまた変わるかもしれません。

 

吻合の様子は別会場に控える審査員および観戦者の方々のところへライブ配信され、審査員の先生方のコメントが吻合中に直に聞こえますし、吻合中にコメントを求められることもあります。助手は今回のために上級医の先生方が来てくださっており、その先生にお手伝い頂いて試技を行います。練習時間はあるものの、助手の先生と練習を行う時間は与えられませんでした。

 

予選も本戦も手はめちゃめちゃ震えます。普段からしっかり練習をされている先生であれば、予選突破のためにはいかに練習通りに落ち着いてできるかが鍵であると思います。そのためにはこのような異質な雰囲気の中吻合を行う経験を普段からいかにできるかが大事だと思います。他の団体の主催でもこういうcompetitionはやっていると思いますので、それらに積極的に出場して経験を積むのもいい方法かと思います。

写真は本戦で僕がコメントを求められてテンパっている恥ずかしい所と、最後の集合写真です。今回本戦に先立ち北原先生が本戦参加者にチームWADA Tシャツ(Challenger’s Liveバージョン!)をアメリカから送ってくださいました。せっかくなので試技も着て行いました。

 

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