外科レジデンシー面接

2018-01-29

初めまして、在沖米国海軍病院 横山裕次郎と申します。先月シカゴ大学にて施設見学をさせていただき、今回ブログ投稿の機会をいただきました。予想外に長くなってしまいましたが、お付き合いいただけると幸いです。

私は山梨県立中央病院にて初期研修医、その後同院心臓血管外科にて後期研修医として3年間、計5年間働いたのち、現在在沖米国海軍病院にてアメリカ式医療を学びつつ、米国外科レジデンシー、その後の心臓外科フェローシップを目標としております。先月外科レジデンシーの面接のために渡米した際に施設見学の機会をいただきました。なんの縁のない私を快く受け入れて頂き大変感謝しております。またセントルイス、ニューヨークでも手術見学や日本人心臓外科の方々とお話しする機会をいただきました。実際に米国の病院を見学することは初めてで大変貴重な経験であり、また太田先生、北原先生をはじめお会いした方々はとても魅力的であり、より一層米国でトレーニングを受けたいという気持ちが強くなりました。

外科レジデンシーについてとその面接体験談を述べさせていただきたいと思います。まだ結果が出ておらず成功談ではないこと、細かい間違いなどあるかもしれないことをあらかじめご了承ください。私は現在ACGME Accreditedの一般外科レジデンシーのマッチングに参加しております。期間は5年間であり、それを終えたのちに胸部外科のフェローシップに入ることを当面の目標としています。直接心臓外科フェローシップに入るのに比べるとかなり遠回りに感じますがそのメリットはやはり専門医を取得できることと、トレーニングの量と質がある程度確約されていることだと思います。米国では外科はその給料の高さからか人気のある科であり、内科などに比べるとかなり競争率が高いと言われております。実際の申し込みですが私は約170の申込めるプログラム全てに応募しましたが面接に呼ばれたのはわずか2つでした。大学病院プログラムで1000以上、一般的な市中病院のプログラムでも600-700程度の申し込みがあり、実際に面接に呼ばれるのは80人程度のようです。その中で実際にポジションを得られるのは3-7人程度であり、日本人は取れても一年の仮ポジションがほとんどであり、その場合は翌年就活をしないといけません。その中でも正規のポジションを獲得できるのは全体で40%程度だそうです。応募者の大半はアメリカの学生であり、よくなんの縁もなくVISAもなく英語も拙い私を面接に呼んでくれるところがあったなと思います。

個人的な印象ですが面接に呼ばれるのに重要な要素はVISA、高名なアメリカで働いている外科医の推薦状、コネクション>卒後年数、USMLEの点数>英語力だと思います。VISAに関してはどうしようもないですが聞いた話ではVISAなしの状態で申し込んだらほとんど面接に呼ばれなかった候補者が、翌年Green cardを取得して同じ科に申し込んだら10数個面接に呼ばれた、とういう事があるようです。推薦状に関しても、同様の事が起こるようです。あまり関わりが少なくてもアメリカで高名な外科医というのが重要なようです。日本人の感覚から言えば長く一緒に働いた日本人の先生からの推薦状が一番説得力があると思うのですがどうやらレジデンシーに関しては違うようです。上記2つがないIMG(アメリカ国外の医学部卒業者)はアメリカに知り合いの外科医がいて、その外科医に直接プログラムに掛け合ってもらわない限りは、足切りのような感じになってしまうようです。卒後年数に関しては早いところで3年、多くのところで5年で切っているプログラムが多いようです。USMLEが平均以下だと多分どこにも呼ばれないかもしれませんが、両方とも250点以上などの好成績を残せていても、少しは増えたかもしれませんがあまり変わらないのかなという気もします。英語力に関してはStep 2CSを一回で受かってさえいれば確認するすべはないのであまり関係ないと思います。

実際の面接ですが、一つ目はペンシルベニアの市中病院で、IMGのレジデントが多いプログラムでした。同じ日に面接を受けたのは20人程度でありIMGとAMG(アメリカ医学部出身者)が半々くらいでした。朝にカンファレンスルームに集合し、簡単にプログラムの説明があり、その後3回の個人面接がありました。8時から13時くらいまでかかり、面接を終えた候補者から解散でした。待合室で待機しているところも観察されていると言われており、会話の輪に入っていけるかかなり不安でしたが両隣が気のいいインド人であったことあり、なんとか楽しく会話することができました。IMGが多いといってもアメリカ育ちであったり、一年間アメリカの病院でローテーションしていたりする人がほとんどで、ほぼ皆native English speakerであり、VISAなしnon-native IMGは私一人のようでした。しかし実際に外科医としてトレーニングを受けていたのも私一人で、周りは皆驚いていました。実際に面接で聞かれた内容ですが、色々対策を立てていたのですがあまりそれらは聞かれず、沖縄のアメリカ軍のことや、大学一年の時のよく覚えていない一般教養のことなど、とりとめもないことが多かったです。日本とアメリカの外科トレーニングの違い(アメリカではレジデンシーやフェローシップを終えると独立した医師として働く)はよく聞かれ、もっとうまく説明できるよう用意しておけばよかったと反省しました。

次はニューヨークで面接があり、こちらは前日にプログラム主催のディナーがありました。一般的にはレジデントと候補者のカジュアルな食事会のようですが、やはりここでも行動は見られているようです。当日ほぼ時間通りに会場に訪れましたが、いたのはプログラムディレクター一人でした。お偉方はあまり参加しないと聞いていたので予想外でしたが、今どんなことやっていて今までどのような外科トレーニングを受けてきたかなどできるだけアピールしました。その後徐々に他の候補者、またfaculty memberがやってきてその度に同じような話をしてアピールしました。後から考えると、他の候補者とレジデントと日常会話のようなものをするのに比べたら、話す内容が決まっていたので英語に関してボロが出なくて好都合だったと思います。こちらのプログラムはアメリカ人だけどカリビアンの医学部に通っている学生が多く、VISAを持っていないのは私だけのようでした。その翌日にこちらも病院説明の後、個人面接が3回ありました。こちらはかなりスタンダードな質問が多く、用意した回答を使うことができました。さすがに英語をずっと話していて非常に疲れてしまい、後半は部屋にレジデントなどプログラム側の人が誰もいなかったので、誰とも話さず座っておりました。

アプライから面接までを経験して思うことは、やはりコネクションなしでは面接に呼ばれることすら非常に困難ということでした。多分秘書のレベルで、IMGであったり、目を引く推薦状がなかったり、実際にその病院にローテーションをしたりなどがない限り、振り落とされてしまっていると思います。実際多くのIMGは推薦状を得たり、コネを得るために数ヶ月単位でローテーションを行っているようです。しかし、運良く面接に呼ばれさえすれば、かなりチャンスはあるとも同時に感じました。他の候補者との違いを十分アピールすることができますし、面接官は皆日本での外科のトレーニングをかなり評価してくれている様子でした。

マッチの結果は全ての科一斉に3月中旬に開示されます。落ちた時のことを考えると途方にくれてしまいますが、果報は寝て待てといいますので、今後のことは結果が出てから考えようと思っております。

かなり長文になってしまいした、お付き合いいただきありがとうございました。

 

コメントはまだありません

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です