4. 医療サイドの「ニーズ」、工業サイドの「シーズ」、およびマーケティング
シミュレーターの共同開発を始めるにあたり、シミュレーターを作るということは医療界にとってどれくらい需要があるのか?どれくらいの人が使うのか?どれくらいの精度のシミュレーターがあれば良いのか?どれくらいの値段であれば買うのか?今後どのような広がりが見込めるか?それぞれの企業の技術でどこまでそれが実現可能か?のディスカッションを重ねました。つまり医療サイドの「ニーズ(何がしたいか?)」と工業サイドの「シーズ(何ができるか?)」のマッチングと、「マーケティング(どう売るか?どうしたら売れるか?)」から始めました。
何度もディスカッションを繰り返すうちに、工業はおろか社会のシステムに関して全く見識のなかった僕も徐々にその概要が掴めるようになり、そうなってきた頃から工業に関わる人だけでなく、いわゆるビジネスパーソンという人たちともビジネス談義ができるようになりました。「餅は餅屋」とは言いますが、互いの領域をある程度理解することで、相手の領域の話を自分たちの領域の言葉に「翻訳して理解する」、自分たちの領域の言葉を相手の領域の言葉に「翻訳して説明する」ことができるようになってきました。
5、医療技術の発展は工業技術の発展の後追い?!
3Dプリント技術を応用して心臓モデルを作るわけですが、モデルを作るには設計図を作らなくてはなりません。工業界において、設計を行う概念が2D(二次元の製図・図面)から3D(3次元の製図・図面)に時代が変わったのが15-20年前だそうです。医者がCTを3Dで見られるようになったのが数年前だとすると、3Dデータという概念自体が医療界では工業界から10年ほど遅れているのだ!」と言われたことに衝撃を受けました。でも良く考えると、新しい工業のテクノロジーは(使えるものかどうかはわからないにしても)次々と生まれている中で、「それをどのように医療に応用するか?」と考えてみることが、医療界における技術革新(テクノロジーの進歩)に繋がっていくのだろうな、と妙に腑に落ちた瞬間でもありました。
(続く)
写真は胸郭モデル+チームWADAのコラボレーションです。共同研究者により開発された胸郭モデルは2015年度にグッドデザイン賞を受賞しました。このコラボレーションでパリコレでも目指しましょうか。
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