ある日の夜中、日中にラザ(胸部外科レジデント的な人)がオペした人が再開胸になったよー、というグループメールに起こされました。大変やね、ガンバ、ラザ。と心の中で小さく応援しながら二度寝に入ると、ラザから「ちょっと手伝いに来てくれない?」というメールが直接来ました。物凄く行きたくなかったですが、しょうがないので手伝いに行きました。
ラザは先週に引き続き2回目の再開胸止血症例であったため、本人はさぞ凹んでることだろうしここは大人の優しさ(実際にはラザの方が10個くらい上ですが)見せてやろうかな、と思っていました。
が、ラザは開口一番「この出血は胸骨からじゃないから俺のせいじゃないんだ、ウィアード(なんか変)だぜ」とかぬかしてました。こいつタフネスが半端ないな、と思いました。ここはひとつ、助手の位置から胸骨から出てる血を見つけて、サクションとかでチューチュー吸いつつ、「再開胸のほとんどは胸骨からの出血というしょぼい理由だ、わかったか」という名言を放ってやろうと思っていました。
が、いつも強気のラザがなぜか今日はやや控えめで「これはヒロが術者の位置にいた方がいいんじゃないかなぁ」と術者の位置へと誘導してきやがりました。術者の位置に立つのはめんどくさいしとても嫌でしてが、断る理由もないのでやりました。胸を開けたらバイパスで繋いだ静脈グラフトの枝のクリップが外れていて、そこからものすごい勢いの動脈血が出てました。「あー、あー、やられたわー」でした。
なんとかしようとしたけどダメだったので、最終的にはポンプを回してなんとなく止めました。そのあと出血傾向でとめどなく血が出ている状況の中で、ラザはもう帰りたくなったのか「プリティドライだね」とか言ってました。「どこがプリティやねん」と心の中で関西弁ツッコミをいれ、実際には何も言わずその後も無視して止血を続けことなきを得ました。
そんな感じで久しぶりに病院で夜を過ごした翌日は朝から肺移植でした。なんだか時間のかかる肺移植だったため夜に終わりました。肺移植の最後の締めには、胃管を十二指腸まで入れるという修業が待っています。アージェー(thoracic担当の中量級の山男みたいな看護師、エージェーなのかアールジェーなのかアージェーなのかわからないので、とりあえずアージェーと呼ぶことにした)が「ヒロ、ついにお前の本領を発揮できる時がやってきたな!ほら、胃管だ、内視鏡の誘導なしで入れてくれ!」と毎度のことながら肺移植最大の盛り上がりが起こりました。
胃管をブラインドで十二指腸まで入れる男達のロマンは未だ潰えていません。手術終わったらすぐ家帰りました。
コメントはまだありません