怒られた手術

2018-05-15

ある日輸血を使っちゃいけない人の冠動脈バイパス術がありました。チーフのとこにこういう人達が集まってくるので、移植とかLVADとか解離とか、輸血なしで挑んでてほんとすごいなと思います。輸血使わない症例の時はチーフは胸開けるところからいるのですが、その日はなぜか姿をくらましていました。時間も勿体無いので胸開けてみたりしてみたんですが、遅れて手術室に入ってきたチーフが「なんで始めてるんだよ」と上島竜兵ばりにめちゃ怒ってました。「俺が来るまで待てって言っただろ」(言ってない)「時間配分も大切なんだ」「輸血使えない人に対してはだな…」と手術中事あるごとに思い出しては怒っていました。ところがいざバイパスが始まると、術者側から縫いづらかったのか、「ヒロ、そっちの方から縫って」と言ってきました。胸開けたことあれだけずっと怒ってきたのに、何事もなかったかのようにバイパスの吻合をやれと。「え、いいの?輸血使えないんでしょ、吻合とか大事じゃないの?自分でやらないでいいの?」と思いつつなんとなく縫いました。こういう感覚って日本では味あわなかったものですね。理屈的には吻合部からの出血はその場で止めれるけど、骨からの血はずっと出続けるし、人工心肺前はポンプで回収もできないから、時間配分も含めてできるだけ完璧にコントロールしたいいうことなのだと思いますが。なんとなく縫って、その後めっちゃ血を止めて手術は終わりました。

その後肺移植がありましたが、いつも通り手術後に十二指腸に胃管をいれて終わりました。

2件のコメント

  • 北原 大翔 2018-05-16 at 5:01 AM

    沁みます。

  • 真匿名 2018-05-15 at 11:39 PM

    はずかしめの刑を受けるほど成長する、怒られるほどよく考えて動くようになる、やられればやられるほど強くなる、ナメック星でのベジータのように

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