先日、冠動脈バイパス術をさせてもらった時の事です。
手術を見たことがない研修医スティーブンが第二助手で入ってくれました。前立ちはMr.ミルソンがやって下さいました。60歳代の元部長で、普段は穏やかでとても優しいけども、手術中は豹変して物凄く怖くなってしまう人です。スティーブンはテンションが上がってずっとなんやらかんやらしゃべっていました。Mr.ミルソンも機嫌よく見ていてくれました。
LIMAをLADに吻合するにあたって、ミルソンが「LADのどこつなぐ?」と聞いてきたので「狭窄は中枢にあるんで、この辺りですかね」と言って吻合をしました。
プロタミンも入れて出血を確認している時に、研修医君がおもむろに
「今日はなんで狭窄よりも中枢につないだんすか?末梢に狭窄結構ありますよねこの患者さんisn’t it?」
と快活かつ無邪気に尋ねてきました。その場がシーンと静まり返りました。えっ!?まさか!?と思いアンギオモニターを確認しようと顔を上げるとそこには、「狭窄は中枢だって言ったよなユウスケ!!」と言わんばかりに顔を紅潮させて猛り狂わんとするMr.ミルソンの顔がありました。
俺やってもうたのかーーー!?
と思いながら、恐る恐るアンギオを確認すると、私の記憶通りLADの末梢には狭窄はなく、代わりにLCXの末梢に狭窄がありました。研修医君に「これLCXだよ!LADじゃなくて!!」と言うと
「OK! That’s all right!!」
と無邪気な笑顔で返されました。
Mr.ミルソンは「面白いジョークだ」みたいな感じの事を言って、好々爺に戻りました。
手術が終わって、1人昼食を食べながら「何がThat’s all rightやねん。。。」とエセ関西弁でつぶやきました。
2件のコメント
先生のブログはユーモアがあって面白く、将来オーストラリアで働きたいと思っている僕にはとても励みになります。
ポジティブなコメントありがとうございます。1人暮らしだと寂しいので、ブログが唯一の生きがいなのです。