ブログ後編

2018-12-31

現在、佐賀大学に所属している医師6年目の木塚貴浩と申します。以前ブログを書かせていただきました。

 

先日お世話になっている先生に講演&食事会にお誘いいただきました。他大学の先生方のお話を聞き感銘を受けていました。その先生方は消化器外科を専門とされていますが臨床と直結するような研究をし、学位を取られています。学位取得後も日々の臨床に疑問を持ち基礎の視点で問題解決することを頑張られています。

理想的だと思います。研究といっても分子生物学から公衆衛生など多岐にわたると思います。ただそれを臨床をしながら両立することが難しいです。分子生物学にしても臨床研究でも結果を解析し検討するまでするのは非常に大変なことだと思います。でもそれらに興味を持ちモチベーションとして頑張られている先生方は非常に尊敬します。

この前外来をしていると、携帯に電話がかかってきました。西濃運輸からの電話で荷物が大学に届いているとのことでした。少し待っていただき荷物を確認すると何の記載もない。しかしよくよく見るとアメリカからでした。疑い深いのですぐには受け取らずその場で配達員の了承を頂ききれいに段ボールのテープをはがしました。

中を開けるとFootFitterの文字がありました。何のことか全然わかりませんでした。学会でアメリカに行きましたので自分が何か買って日本に郵送にしたのかなと記憶をたどっていました。

 

以前の記事でもお伝えしましたが、今回シカゴに学会発表のために行きました。一人での学会参加となる予定でしたが、大学の研修医の大場健太先生が僕に自腹でついてきてくれると言いました。大場先生は2年位前、彼が大学生であったころなぜか仲良くなりました。彼も心臓血管外科医になりたいと奮闘しており非常に後輩ながら僕の相談役でありモチベーションを高めさせてくれる大切な友人です。その彼から学会に関してアドバイスをいただきました。

『一緒に行ってあげますから恥ずかしい格好をしないでください。』

僕は大学生の時マッチングの際に買ったリクルートスーツ一着しか持っておらず7年間、何か必要な時にはそのスーツしか使っておりませんでした。シューズは1980円で購入した革靴みたいな靴。彼はそのことを知っていたのでしょう。

その少し前、このブログで太田先生が靴磨きを語られていました。靴のことは当時ほとんど無知であり革靴は固いしかかとに豆ができるし歩きつらいので正直苦手でした。

しかしながらそのブログを読むうちになんとなく靴に興味がわくようになりました。

よし学会のためにいい革靴を買おう。少ない貯金で高い靴を買うことは本当に身を削る思いでした。まずは革靴の勉強を始めました。

ストレートチップ、ウイングチップ、プレーントゥ、モンクストラップ、ホールカット・・・。英単語を覚えるように靴の種類と形状、特徴を暗記していきました。

次に革の種類。コードバン、カーフ、スエード・・・。革に関しては見たこともなかったのでどの革がどのようなものなのかが想像つきませんでした。

愚かな自分は最終的にコードバンがすごいらしいくらいの感じで百貨店に向かいました。全く時間が取れず学会前に百貨店に行けるのはその日しかないという日に福岡の百貨店に向かいました。靴屋さんに到着。普段最寄りの地元の靴屋さんは店員さんが靴をセールしてきますが、百貨店ではみすぼらしい格好の僕にまず店員さんが寄ってきませんでした。

意を決して自分から店員さんにアウトレットのコードバンの靴ないかとお伝えしました。本当に鼻で笑われました。履きなれていない人が買う靴ではないと。まずは試しにこちらの靴でもと紹介された革靴が1万円前後のものでした。1万円以上の靴はテニスシューズしか買ったことのない僕としてはそれでも高価なのに、周りにある靴は10万円、20万円。くやしさがこみ上げてきました。こんなみすぼらしい僕には高価な革靴は向いていないといわれているようでした。悔しくなってその靴屋を後にし、他の靴屋さんを探すことにしました。フロアを歩いていると本当に素敵なコート、スーツ、鞄。そのほか普段興味も示さなかったものが目に入ってきました。全然自分が持っているスーツとも違う。全然自分が持っている鞄とも違う。どんどんとりこになっていきました。良いものは値段もそれなりといっても買う金もないし今日は靴を買いに来たことを思い出したところ、イタリアのブランドメーカーの人が話しかけてくださいました。誰も声をかけてくれないのにその店員さんだけが唯一話しかけてくれました。おすすめのスーツの紹介をされたので、靴はないですかと相談したところ奥から持ってきてくださった革靴がありました。試し履きをし、とりこになりました。これが欲しい。一目ぼれでした。価格を聞くと12万8000円。信じられない値段でした。そんなするのかと。その後も他の店舗も回りましたが最初に話しかけてくれた店員さんの一言が忘れられず購入しました。『イタリアでは良い靴は持ち主を良い場所へと連れて行ってくれるといわれます。きっといい出会いがあります。』財布の中には5万円しか持ってきていませんでしたが、いろんな思いがこみ上げてきました。最後は母に電話で確認し勢い余ってカードで購入しました。手が震えました。11月外は寒いのに汗だくになりました。結局コードバンではない靴を買い、帰りの電車では興奮と後悔の気持ち、やってしまったという気持ちで帰宅しました。

 

学会のために超高価な靴を購入しました。履いてみると履けば履くほど気持ちいい。素晴らしいフィット感。何よりも愛着がわきました。しかしながら人の多い学会。踏まれたり傷ついたりしないかものすごく気になりました。やはりすれ違いざまに大きなおじさんと靴が交錯したりしました。講演会場で座ると思わず前の座席の椅子にコツッっと当たったりしました。ホテルの部屋に帰って恐る恐る見るとやっぱり無数の傷が。日本に帰ったら靴磨きをしてみよう。だめかもしれないけど。

 

そうこう考えて磨く道具もなく靴は2週間手つかずのままでした。

そして荷物の話に戻りますが、その贈り物は明けてびっくり靴磨きセットでした。靴光たけみ様からの靴磨きセットでした。感動しました。本当にうれしかったです。心温まる手紙が入っておりました。太田先生はみすぼらしい自分のことを気にかけてくださって秘書の靴光様を通じあの誇り高きChicago Shoeshine Club(会員番号3)の会員にしてくださいました。Chicago Shoeshine Clubの名に恥じぬよう靴を磨いていくことを決意いたしました。

太田先生。靴光たけみ様本当にありがとうございます。学会も終わり11月あのシカゴでの出来事が思い出になりそうで、夢のひと時が懐かしく、でも現実に向かわなくてはならないという悶々としたこの時期にシカゴからクリスマスプレゼントがきました。ただシカゴを訪れた一人の日本人を気にかけてくれた太田先生。本当にありがとうございます。

この出会いは自分の人生を変える出会いだと思いますし確信しております。Chicago Shoeshine Clubの名に恥じぬようしっかり靴も自分も磨けたらと思っております。目標にしていたAHAでの学会発表。何度もやめたいと思ったし学会発表自体をやめたいと思ったこともありました。しかしそれを通して支えてくださった太田先生本当にありがとうございました。12万8000円の靴を買って本当に良かったと思っております。

 

P.S.部長の太田先生より靴磨きの動画をいただきました。素晴らしい手つきでそして音、躍動感。こんな風に靴を磨けたらと思いました。もちろんこのブログを書きながらあの動画をBGMとして聞いています。体にしみこませております。靴を磨くのは本当に楽しいですね。磨いて自分色に少しだけ変わった靴を見るとうれしくなります。傷も目立たなくなりました。

 

傷だらけで輝きを失っていた靴が少し輝きを取り戻したような気がします。

 

Chicago Shoeshine Clubを語るにはお粗末ですがいかがでしょうか。先端青色が少し濃くなった気がします。靴の皺がまたいい感じですね。

今年生まれて初めてアメリカに行きました。学生時代から若手心臓外科の会のホームページを何度も読み返し、臨床留学をされた先生のキャリアデザインにあこがれていました。しかし最近ではその目標に対する思い、挑戦することの怖さからなんとなく逃げてきてしまったと思います。

シカゴで太田先生からたくさんUSMLEやアメリカでの臨床やそれまでのステップのお話を聞きました。太田先生からは『30歳を過ぎとんでもなく頭が悪くなっている。』とお言葉をいただきました。でも頭が悪くなっても必死に頑張った話を聞かせていただき勇気をもらいました。残りのCSを頑張りたいと思いました。

『良いは持ち主を良い場所へと連れて行ってくれる。』

シカゴに行き日本から遠いところで、さみしいのではないかなんて考えていましたが、在米の先生方の話を聞くと本当に楽しそうでした。もちろん苦労もあってそれを感じさせない人柄なのでしょうが、それでも臨床留学をしてみたい。勉強を頑張りたいという情熱をいただけました。日本にいながらもあこがれる太田先生とつながれていることは最大のモチベーションです。心強いです。自分が40歳になったとき、太田先生のようにユーモアあふれ、かつたくさんの悩む人を勇気づけられるような人になれたらと思います。Chicago Shoeshine Clubの名に恥じぬよう将来たくさんの人にお返しができたらと思います。

 

太田先生!メリークリスマス!!

 

 

Best Regards,

Tako

2件のコメント

  • TAKO 2019-01-02 at 2:57 PM

    太田先生コメントありがとうございます。大変すばらしいクリスマスプレゼントをありがとうございました。ご指摘の通りErmenegildo Zegnaのsingle monkです。Ermenegildo Zegnaのスペルが書けないので先生のコメントをコピペさせていただきました。すみません。
    もっとメジャーなメーカーの靴もあったと思います。single monkは買うつもりありませんでした。
    しかし結果的にこの靴は値段以上の価値があったと考えております。
    再度送っていただくなんて申し訳ございません。そんなとんでもございません。お気遣いいただき本当にありがとうございます。
    もちろん黒のクリームとワックスも2019年しっかり使うために黒の革靴も購入できるように頑張ります。
    Chicago shoe shine clubに恥じぬよう心身靴磨いて今年は頑張ってまいります。
    今年もよろしくお願いいたします。

  • OTA 2018-12-31 at 2:07 PM

    なんだか太田愛がやばいですね。まあでも喜んで頂いたようで秘書の靴光さんもお満悦な様子でした。ってそんなことはどうでもいいんですが、先生の靴ってErmenegildo Zegnaのsingle monkですかね?見たことないデザインでかっこいいですね。ってそんなことも置いといて、重要なのはこれってネイビーカラーですよね?レストランでお会いして一見した時は暗かったので黒色だと思い込んでいました。したがいまして緊急業務連絡です。お送りしたセットは黒用のクリームとワックスが入っていたと思いますが、それでは磨かないでください。至急、適切な色のセットを靴光さんが手配し発送させて頂きます。ご面倒をお掛けしておりますが、しばらくお待ちください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です