整形外科医 留学ブログ

2019-04-08

ケンタッキー州のLouisvilleでSpine surgery fellowshipをしている小倉と申します。留学やアメリカ生活、ビザのことを調べているうちに北原先生のブログにたどり着き、北原先生と連絡を取らせてもらった縁から、今回記事を書かせてもらうことになりました。心臓外科にかぎらず、留学自体に興味がある人もこのページを見るとのことで、整形外科の臨床留学に関して記事を書かせていただきたいと思います。あくまで私的意見も入っていますので、そのへんは気にせず読んでいただけたら幸いです。

まずは私の現在の住む町について書きたいと思います。私は1年間リサーチ、1年間臨床のprogramできており、現在はリサーチの期間です。臨床に関しては外来見学や、早朝回診についていったりはしていますが、実際に手術室に入ったり、患者管理をするのは数か月先になるので、この辺の詳しい話はまた半年後くらいにできたらなと思います。

住んでいる場所ですがLouisvilleというケンタッキー州の中では一番大きな都市です。あまり有名なものはないのですが、ケンタッキーDerbyが年1回開催されること、バーボンの産地であること、University of Louisvilleがバスケットボールの競合であることくらいでしょうか。観光で来たとしても1-2日あれば十分すぎる規模の都市です。大きな町ではありませんが、私的には結構気に入っています。NYやLAのような大きな都市とはまた違った魅力があり、いわゆるthe Americaを体験できます。人生の大半を東京に住んでいた私にとっては広大なアメリカを体験できるこの町は結構すきです。田舎だからか親切なひとが多いですね。ちなみにケンタッキーはトランプ支持者が多いようですが、Louisvilleだけはちがうみたいです。

もう1つよい点は物価が大都市よりだいぶ安いことです。給料は日本の時の半分くらいになりましたが、ぜいたくしなければ十分やっていけるほどの物価です。あとは病院のカフェテリアのバッファローチキンサンドがとてもおいしくてはまっています。今では週末にもバッファローチキンを食べにいくほどとりこになってしまいました。

さて仕事ですが、リサーチといってもいわゆる基礎研究ではなく、こちらのデータを使った臨床研究をやっています。リサーチはレントゲンの計測、治療成績を検討して論文作成をするのがメインの仕事なので月曜から金曜の朝7-8時から始まり、16時半-17時には帰宅できます。ボスには臨床が始まる前にたくさん旅行してこい、とことあるごとにいわれるので、たまに旅行にもいっています。まだシンシナティ、シカゴ、ナッシュビルといった近場にしかいっていませんが、3月末に兄の住むNYに旅行に行きます。

そろそろ本題の留学について書きたいと思います。北原先生のようにおもしろい記事は書けないので、少しでも後輩の役にたつ記事が書けたらと思い、ここからは真面目路線で書いていきたいと思います。

まず、ネットを検索していても内科、小児科、心臓外科や研究留学に関する情報はわりとあるかと思いますが、私の知る限り整形外科のアメリカ臨床留学に関する情報は皆無だと思います。

整形外科のアメリカ臨床留学の情報が少ない理由としては3つあると思います。

1 心臓外科のようにアメリカにこなくても日本でそれなりの症例数がある
2 学生時代からUSMLEの勉強をしている人は内科や小児科に行く傾向がある。整形外科に行く人は極端に少ない
3 外国人がアメリカのresidencyに入るのは総じて難しいが、整形外科はpreliminary positionもなく、アメリカ人の中でも人気があり、最難関の1つである
1 はあっているようであっていないと思います。整形外科は大きく分けると上肢、下肢、脊椎、腫瘍にわかれますが、アメリカの5年間の整形外科residencyでは各分野をバランスよく、最低限必要な症例数をこなせるようになっていますが、日本では行く病院によってかなりばらつきがあり、総症例数もアメリカに比べると少ないと思います。フェローシップもしかりで、脊椎手術をフェローが数百例、多い病院だと500例/年執刀できるのが一般的のようです。日本では脊椎外科の場合は多くても200例/年ではないかと思います。自分の経験では手術の上達には適切な指導者の下で、ある程度まとまった症例数をこなすことが非常に大切であると思っています。一部の天才的な人は別かもしれませんが、少なくても私はそうでした。日本で脊椎の手術がなかなか上達せずに悩んでいた時期がありましたが、東京から静岡の病院へ異動となり、良い指導者に巡り合え、年間200例の執刀を約2年間つづけさせていただいた結果、かなりの上達を感じることができました。アメリカの「フェローに徹底的に手術をさせる」システムも私が経験した静岡のシステムに近いと感じています。
2 これは真実だと思います。実際に私が勉強を始めたのは卒後5年目です。学生時代は筋トレして、ランチにタイカレーを食べて、部活して、バイトしての毎日だったので、USMLEの存在すら知らなかったかもしれません。私の知る限り、整形外科でECFMGを持っているのは私以外に3人しかいません。
3 これが整形外科のアメリカ留学を難しくしている一番の原因だと思います。私はUSMLEを勉強し始めた時にはすでにPGY-5でIMGかつold graduateだったので、レジデンシーのマッチングにはかなりのハイスペックをそろえる必要があると考えました。Step1,2CKとも250オーバー、PhDもとり、publicationもnature系も含めて10個近くそろえましたが、全米中の150プログラムに応募した結果、インタビューすら1個も呼ばれませんでした。こちらにきてからわかったことは整形外科の場合、ほとんどの施設で外国人の書類には目を通さないようです。

ただ、整形外科レジデンシーに入るのが100%無理とは思いません。個人的にはグリーンカードがあればチャンスがあるのではないかと思っています。かつアメリカ人とのコネがあり、卒後5年以内でUSMLE高得点であればさらに可能性は高まるのではないでしょうか。だれか後輩がチャレンジしてくれたらうれしいです。

以上の理由から、アメリカでの整形外科の臨床留学を希望する場合、フェローから開始するのが現実的と思っています。

整形外科、脊椎外科の臨床がどんなかんじなのかは、私のclinical yearが夏にはじまるので機会があればそのあとにでも書かせていただけたらと思います。

何かご質問があればyojitotti1223@gmail.comに連絡いただければとおもいます。

2件のコメント

  • 月岡 2019-04-08 at 6:37 AM

    小倉先生、月岡祐介と申します。私は野球部で、先生とは学生時代、試合で何度か対戦させて頂き、少しだけお話させて頂いたことがあります。また、双子のお兄様(浩一先生)には在学中、大変お世話になりました。小倉浩一先生もNYに留学されているのですね!
    非常に興味深い記事をありがとうございます。続きの記事も楽しみにしております。

    • Yoji 2019-04-09 at 11:04 AM

      月岡先生、コメントありがとうございます。そういえば東大とたまに試合しましたね。またどこかであいましょう!

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