ニュージャージー州より

2017-11-12

こんにちは。数年前に、若手心臓外科医の会のサイトへEmory Univ.とNorthwestern Univ.でのトレーニング体験記を掲載させて頂いたことのある池上博久です。ドイツで現在働かれている内藤志歩先生が大学の後輩にあたり、同じ医局出身という繋がりでこのブログに投稿させて頂くことになりました。内藤先生とは1年弱でしたが同じ病院で働く機会がありました。内藤先生は非常に努力家で、まさに彼女の名前の様に志に向かって歩んでいく強い意志を持っています。皆が知る厳しい世界ですが、引き続き目標に向かって進んでいかれることと思います。

 

以前は体験記という形で終えたことを振りかえっての情報を発信しましたが、このブログの様に現在進行中の状態から発信される情報は新鮮さがあり貴重なのだと思います。将来海外での仕事を考えている先生方だけではなく、現在海外で仕事をされている先生方とも情報を共有できる機会となれば有難いです。

 

現在、自分はニュージャージー州にあるRobert Wood Johnson University Hospitalという名前の大学病院で働いています。一昔前よりFacultyとして米国に残る日本人心臓外科医が増えてきましたが、やはり一部の米国胸部外科専門医の資格を持つ日本人心臓外科の先生方と違い、私の様に米国専門医資格を持たない人の就職活動は非常に困難を極めますし基本的にはほぼ不可能というのが正しい認識だと思います。私の場合は、2015年から約2年半働かせて頂いたColumbia Univ.の先生方の多大なお力添えなどなどがありたまたま就職に辿り着くことができましたが、専門医の資格なしに自分の様に無謀にも米国でFaculty Positionを狙うことはかなり運にも左右され、賭け的な要素が多分にあると思います。

 

新米のsurgeonが最初に直面する大問題の一つは、自分の手術症例がないということです。おそらく世界中どこでも循環器内科や救急科をはじめとする他科からのコンサルトがあっての心臓外科だと思いますが、米国では基本的には心臓外科のDivision宛に紹介があるのではなく個人のsurgeon宛に紹介がきます。他院からの紹介の場合でも、心臓外科医個人を循環器内科医がよく知らない時にはどうしてもChairman, Chief, Professor, Directorといった肩書きのある先生方宛に紹介がいってしまいます。ということで、若手心臓外科医がこの死活問題を解決するためにまずは循環器内科に自分の存在を知ってもらうことが先決になります。まずは知ってもらって、とりあえず1例でも送ってもらって、いい成績・結果を残して、あわよくばまた送ってもらうということを目指します 。あとは、自分のon call中に来た緊急症例などを確実にいい成績でこなしていくことも大事になると思います。一人一人のsurgeonが個人経営の店を開いているような状態なので厳しい部分もありますが、逆に言うと会社の社長(日本で言うところの大学の教授や市中病院の部長)ではなくても自分の努力次第で症例を獲得することができます。この様に努力が比較的ダイレクトに反映される仕組みは非常にやりがいを感じさせてくれる部分でもあります。まずは自分を知ってもらう為に写真付きの自分の紹介レターをきれいな紙に印刷して地域の循環器内科医宛に数百通送ってもらいました。次は自分が院内や院外の循環器内科が集まる場(カテーテルカンファレンス等)に実際に顔を出して自己紹介をしに行こうと思っています。当院には院外の地域の医師と院内の医師との架け橋を専門の仕事とするPhysician Liaisonという部門があります。現在そこの担当者と打ち合わせをしながら挨拶まわり計画を立案中です。アメリカ人医師は普通ここまでしない様ですが、専門医資格のない外国人である自分は少しでもプラスαをしないと足りないのではないかと思っています。最初は開心術週1件程という状態でしたが、最近はようやく開心術週1.5件程に増えようかとしています。 開心術週5-6件ペース を 目指して頑張りたいと思いますが、現状は写真の様にベッドサイドでECMO入れたりしてます。知らない間にICUのresidentが写真を撮っていい感じで加工して送ってきてくれました。こんな感じの非開心術症例は週に4-5件あります。。

コメント

  • たけべ 2017-11-12 at 9:04 PM

    アテンディングのそういうのあんまりないんで、参考になります。

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