ChicagoにあるNorthwesternの中野穣太と申します。University of Chicagoの北原先生よりこちらのblogへの投稿をお願いされ、お初に書かせて頂きます。北原先生と同じU of Cの太田先生の深い内省の伴ったpostを前に何を書けば良いのだろうとしばし途方に暮れていましたが、このblogを読まれている海外特にUSでの研修、就職に興味がある若手?心臓外科の方に向け、あるいは、こちらに来る前のかつての自分に向けたつもりで書いてみようと思います。
- 時期
これはUSMLEをいつ取得するかによって左右されると思われます。大きくは大学生の間にとる、日本での研修中に取る(かなり困難かも)、大学院の間(自分はこれでした)、あるいは研究留学の形で渡米後にという4パターンがあるようです。研修を始めるにあたってはStep 1, 2CK, 2CSの3つが必須ですが、後の事を考え自分はStep 3まで取得してから渡米しました。今思うと大学生の間に取っておけばここまで回り道をすることもなかったのかもと思わないでもないですが、日本での研修が身につかなかった、役に立たなかったわけでは決してないので、難しいところではあります。ちなみに自分は39歳で渡米しましたが、年齢不問というのはUSの優れた点の一つであり、この間一緒に知り合った病理医の方も40代半ばで渡米されたとのことでした。若くして渡米することのmeritは計り知れませんが、かと言って年齢を言い訳にして諦める必要もないように感じます。若くして渡米できた場合、residentからするというのも考えるべき選択肢の一つとなるのではないかと思います。正規の研修が始めることができれば、余程のことがない限り、USに残ることが約束されたも同義だからです。Residencyに入ることの大変さはさて置き。
- 目的
一番の目的としてあるのは手術経験を積むということになるかと思います。施設によって、attending surgeonによってどれだけさせてもらえるかは変わって来るので注意が必要です。しかしもっと大事なのは自分の力量がどれだけあって、それを示すことができるかということです。そういう意味でUSに来る時期は、日本での研修との兼ね合いになると思います。Attendingになって殊に思うことですが、できない人にはさせられない、できる人はより手術をさせるため更に手術が上手になるということです。あとこれは目的とは違うかもしれませんが、異文化に触れる、外から日本を見るというのも経験してみないとわからないことでしょう。
- 場所
施設の情報を集めることは非常に大切です。個人的にはこのことに少し無頓着すぎたという反省があります。目的でも申しましたようにそれぞれの施設で手術ができる範囲に差があります。もちろん手術のcomplexityにも施設で差がありますが、初めから難しい症例をさせてもらえることは当然ありませんので、いきなりそういう症例ばかりの施設に行くのもまた考えた方が良いかもしれません。また施設を選ぶにあたって、直接の競合となるresidentやfellowがどれくらいいるのか、あるいはadvanced fellowが自分の他にいるのかということも大事な要素となるでしょう。また既婚であった場合、まず家族がUSに合うかどうか、その都市に合うか、日本人はいるか、日本食は入手しやすいかどうかなども重要となります。自分は初めUtah州のSalt Lake Cityにて研修しましたが、幸い大変親切な日本人の方々に助けてもらい、なんとか生活のスタートを無事きることができました。
また初めてUSに来るにあたっては、こちらは日本と違った意味でコネ社会ゆえに、誰にreference letterを書いてもらえるか、どれだけresearchのbackgroundがあるかも採用されるかどうかに関わって来ると思います。
- 期間
これは人によってまちまちのようです。サクッと経験を積んで日本に戻るのであれば、2年でも良いでしょう。職を得るつもりならば、一般的には3年以上は研修をする必要があると思われます。北原先生のように超優秀であれば別のようですが。自分はUtahで2年、Northwesternで2年advanced fellowshipをしてから職を得ることができました。Advanced fellow(要は外国人部隊ということですね)のsalaryは60-80kですので、独り身でない場合は貯金との相談ということにもなると思います。特に子供がいた場合、pre-kやkindergartenなどの費用も馬鹿になりませんし、NYやCAなどでは住居費もものすごく高いと聞きます。田舎だといいかというと、車が移動に必須となりますので一概に安く済むというものでもありません。自分も渡米早々家内用と自分用に2台車を購入しました。
- 進路
もちろん自分の経験をもとにしか語れないので、advanced fellowshipをした場合という前提で書きますが、USに残るか日本に戻るかということが最大の分岐点になるかと思います。自分は残りたかったので、Northwesternでの2年目の研修が始まる前から行動を開始しました。具体的には多くの日本人が目指すようにColumbiaの門を叩きました 。皆さんもご存知のように、Columbiaではattendingはもとよりresident/fellowの質も高く、得られる手術経験の豊富さのみならず、多くの卒業生たちはUSで職を得ていることから(太田先生もその一人ですね)人気が高いのだと思います。しかし自分はColumbiaにて更にもう1年研修できないか可能性を探りましたが、残念ながら?採用には至りませんでした。さて困ったことになったなぁと思っていましたが、その時に太田先生から指南いただいたのが、周りの人々に職を探していることをアピールすることだということでした。実際にattending達にアピールもしましたし、CVも50近い施設に送りましたが、芳しい返事はもらえませんでした。しかし幸いその後Northwesternのattendingからこのまま残らないかとjob offerをもらうことができ、職を得ることができました。
自分の知見、経験では、正規の道でない以上こうしたら職を得ることができるという正攻法はないということです。そういう意味では池上先生も先日書かれていたように、博打といってもいいかもしれませんし、自分で決められない以上、選択というのは正しい表現ではないのかもしれません。目指したけれど、いろいろな事情や運で日本に戻ることになるということもあるでしょうし、初めから日本に戻ること前提という人もいるでしょう。個人的にはUSに残りたかったし、大変ではあるものの少なくともchallengeしてみる価値はあると思います。
- その後
さてattendingになって1年ちょっとですが、直接の紹介はまだまだ少ないものの、とりあえず1年目の目標の手術件数は達成できましたし、成績も悪くなかったとほっとしつつ、また2年目、まだ2年目ということで気を引き締めているところです。Researchも軌道に乗せていかないといけないし。個人的にはまだO-1 visaなので、permanent residencyも欲しいといったところでしょうか。また機会があればもう少し日常的な、実際的なことも書かせていただこうかとおもいつつ(州のlicenseのことも)、太田、北原先生とも“長いし面白くもなんともないpostやなぁ”とぼやいている声が聞こえそうですが、初めてにて少し真面目に?書いて見ました。U of Cと違い見学に来る人も少ないNorthwesternですが、興味がありましたら、いつでもご連絡ください(jotanakanoアットgmail.com)。毎年2-3人のadvanced fellowの枠があります(先日かくゆうじ君もこちらにpostしてましたね)。もれなくMC3 ringのMcCarthyやCox MazeのCoxにも会えます。
Dr. Jim Coxと共に
3件のコメント
元気にやってます。変なボスですが、独り立ち前の勉強とおもって頑張ってます!
ご無沙汰してます、そのうち遊びにいきたいです。
ぼくは面白く読ませていただきました。アテンディング生活1年目の様子も是非教えてくださいー
こちらこそご無沙汰です。そちらはどうですか?こちらの状況もまた機会をみて書かせてもらいます。