ヘパリンが通じない手術

2018-05-12

ある日、冠動脈バイパスをする手術がありました。心臓手術ではほぼ毎回ヘパリンを使用します。その日もいいタイミングのところで麻酔科に「ヘパリン プリーズ」と言いましたが、「え、なんて?」と言われました。その後も

「だから、ヘパリン プリーズ ヘパリン」

「え、何?」

「ヘパリンだよ」

「ソーリー ヒロ、なんて言ってるかわかんないわ(申し訳なさそう)」

「ヘパリン プリーズ ヘパリン プリーズ ヘパリン プリーズ」

「ヘパリン?(お前の言ってるのはヘパリンのこと?の意)」

「イエス ヘパリン プリーズ」

という無駄なやりとりがありました。僕が発したヘパリンと彼が発したヘパリンの発音の違いを僕は一生わかることはできないのだろうな、と思いました。実習生のTSUSHIMA君には、僕が例えあの場で「カステラ プリーズ」と言っても、賢いやつなら「それってヘパリンのこと?」と聞いてくるはずだ。要は言葉というより物事をいかに知っていて次のアクションに何が必要かをわかっていることの方が大事なんだ、と強がりを言ってみました。

「ヘパリン たくさんいれていいの?」と聞かれ、「アイ ニード」と言ったら「私のこと呼んだ?」とアイリーンが遠くの方で言ってました。手術は終わりました。

 

 

北原 大翔先生(m3.comアゴラでコラム、MediGateで週刊北原を連載中)への質問はこちらまで↓

メール:kitaharahiroto@yahoo.com

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