・自己紹介
はじめまして。University of Kentucky Nutrition Department で大学院生一年生をやっている伊藤美沙です。私は、もともと医学部を卒業し、循環器内科医を志しており、インターベンションを中心に日本で研鑽を積んでいました。ところが、いろいろ思うところがあり、卒後5年目の夏に日本をでて、現在アメリカで栄養学部で学生をやり直しております。
たまたま、ネットサーフィンで週刊北原をみつけ、非常におもしろかったので、北原先生にコンタクトを取ったところ、今回ブログを書かせていただけることとなりました。
ここでは、留学の動機、入学手順、卒業に必要な事などをご紹介しようと思っています。
アメリカの大学院でPhDをとった方は自分の周りを探してもいなかったので、情報集めに苦労した思いがあります。私の経験が皆様の参考になれば幸いです。
・動機
Q1 なぜ留学をしようと思ったのか?
幼少期のころから留学には漠然と憧れていました。海外ドラマのERをみては「カーター先生かっこいい」「カーター先生みたいになりたい」と胸を熱くしていました。実際に医学部5年生あたりとなると、周りの賢い同期たちはUSMLEを勉強し、「オレは将来世界に通用する○○医になる」と宣言するのを傍で聞いていました。なので、いつか留学するぞ!と決めていました。
Q2 なぜ臨床留学ではなく、研究留学?しかもポスドクでもなく、大学院生から?そして、なぜ栄養学部??
最初からこの形でいくとは自分でも思っておらず、紆余曲折ありました。結論からいえば、「アメリカの教育をうけて、栄養学と研究の仕方を手っ取り早く学びたかったから」です。(のちに“手っ取り早く”というのは大きな誤算だということは入学後に痛感することになります)
さて、どういう形で教育を受けるのか?
まず、臨床留学をしたいかどうかです。当時は非正規フェローという道を知りませんでしたので、前述した賢い同期から話をきくと、レジデントからやり直す方法しか知りませんでした。
レジデントもっかいやるの!!? と自問自答して
それはヤダ
即決でした。一般循環器のレジならまだしも一般内科は辛い。(内科認定医の試験でもそれは再確認しました。循環器の点数以外ひどいものです。興味がうすいので勉強が苦痛でしょうがありませんでした)そして、レジデントをもう一回やるだけのモチベーションがないことに気づいたのです。つまり、なんとなくかっこいいからだけではきっとアメリカでやっていけないと。
なので、純粋に「なぜ留学したいか?」に立ち返りました。例えば、外科医なら、「もっと症例を経験したい」「日本ではまだレアな術式を学び日本で普及したい」「銃創を含めた救命ができるようになりたい」などが挙げられますよね。一方で、内科医なら「ティアニー先生のように診断がバシバシできるようになりたい」「家庭医になって日本でもっと制度を普及したい」などが考えられます。私がなにをアメリカで学びたいか?それは栄養でした。
普段の外来でよく思うんです。動脈硬化の最大リスクである糖尿病患者にやせなさい、スイーツ食べるな、運動しろ、塩は1日6gまでとかアドバイスという名の命令をいっておきながら、もし自分が患者だったら「そんなんできてたらそもそも糖尿病にはなっていない」って反発するだろうなと思っていました。かといって、やせるいい手段を知っているわけでもないし、ぶっちゃけ栄養についてはよく知らない。栄養のスペシャリストといえば栄養士さんだけど、病院の栄養士さんにいろいろ突っ込んできいても「そこはお医者さんのほうが詳しいんじゃないですか?」と言い返されてしまう。自分で調べてもいまいち自信がない。自分全然栄養わかんないなと痛感したのです。
また、こんなエピソードもありました。
当直していて、40代メタボの心筋梗塞(MI)の患者がきたときに、「この人はなるべくしてMIになっているよね」と自分でいって、ハッとしました。わたしはこういう人たちが患者にならないようにする診療をしているのだろうか?栄養が動脈硬化予防に大事なのはわかりきったことです。ただ、具体的にはどうしたらいいかといわれるとガイドラインに沿ってアドバイスはできますが、それもなんかコレジャナイ感がありました。内科医の腕の見せどころは診断だけでなく疾患の予防なのではないかと思うようになり、全く予防医学的に栄養がわからないことがわかり、こりゃ、本格的に栄養勉強しないといけない気になってきたのが医者3、4年目ぐらいでした。
ということで、栄養を自分で勉強してみるものの、いまいち自信がでないのは独学だからというのもありますが、論文をよんでいても本当かそれ?と思っていたからです。ここで新たな発見をします。わたし論文の鋭い読みもできないし、そもそも研究ってよく知らない。
以前の上司の指導のもと臨床研究はかじった事があるのですが、その時も統計もわからないし、そもそもこんな方法でいいのかなど全くわからない事だらけでした。(もっと医学部でこういうこと教えてくれたらとも思います。あまり真面目な生徒ではなかったので、実はそういう授業があったけど自分が認識できていなかっただけかもしれません)
ということで、わたしは、栄養と研究を学びたいと思うようになりました。その時は医師4年目でしたので、大学院ならきっと両方学べると思い、いろいろと日本の大学院を調べてみました。でも、なんかちょっと違うと悶々としていたところ、アメリカで研究をしているY
先生に「YOU アメリカ きちゃいなYO」と言われ、まさに青天の霹靂でした。その手があったか!と早速調べると自分のやりたいことが盛りだくさんのプログラムがわんさかあるではありませんか。多分、肥満大国といわれてるUSAはそういう需要があるからなのかもしれません。
ということで、最終的に、私は、栄養と研究を学びにアメリカに留学すると決めました。
あと、日本ではMD, PhDって普通で、わたしもそういうものなんだと漠然とPhDはいつかはとるものと思っていたので、アメリカで栄養と、研究を学べてPhDも取れて英語も学べて、多分論文とかプレゼントかも学べるなんて一石二鳥どころかむしろ一石でその辺の鳥全部うちおとせる!ととらぬ狸の皮算用をしていました。
自分が所属する研究施設の一部
吹き抜けてて気持ちいい
UKグッズの売り方がもはやハイブランド
(UKはケンタッキー地元民から愛されまくっており、その辺のスーパーでもUKグッズが手に入ります)
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