消化器内科 冨澤先生ブログ

2019-02-25

はじめまして、シアトルにあるワシントン大学で消化器内科医をしている冨澤裕(Yutaka Tomizawa)と申します。北原先生から執筆のご依頼を頂きました。

私は日本での卒後研修後に、ピッツバーグ大学で内科レジデント、シカゴ大学で消化器内科フェロー、そのあと更にペンシルべニア大学で消化器インターベンションフェローを終えて、縁があり1年半前から現職に至ります。日本人で米国消化器内科専門医を取得した先生は私を含め6人と少なく(私が一番若く5人目)で、米国に残っているのは3人です。

フェロー中にシカゴ大学院に通い臨床研究(疫学、生物統計)修士を取ったのですが、その際にLVAD患者の消化管出血を修士のテーマにし、太田先生に御協力頂きプロジェクトを仕上げ論文化しました。フェロー中は太田先生のオフィスに時折遊びに行ったり、美味しいご飯をご馳走になったりと本当に大変お世話になりました。北原先生とは直接研修期間が被りませんでしたが、その後に太田先生とご一緒した際にお会いしたご縁で今に至ります。

このブログ読者の多くは循環器外科の先生と思い、内科系と外科系での米国臨床留学での違いを少し書くことにしました。外科の場合は循環器外科か移植外科研修のための留学が大部分で、多くの方がフェローからの留学だと思いますが(外科レジデントからされた先生も個人的に存じてますが圧倒的少数と理解しています)、内科臨床留学を目指す場合はまずレジデントから入るのが一般的です。その大きな理由のひとつは、内科系フェロー(消化器や循環器など)に進む際にほぼ例外なくレジデント研修を終えていることを義務付けられるからです、というかそうでないとフェロー出願の願書すらまともに見てもらえません。私も個人的には米国で消化器内科の研鑽を積みたくて臨床留学を志したのですが、この理由により内科レジデントを止む無くやりました。フェローシップは文字通り専門研修で、その多くは大学病院でのプログラムとなります。フェローシッププログラムとしては、卒業生が米国のアカデミックポジションに就職することを期待しますので、専門医取得資格を満たさない者をフェローとして教育する意図を見いだせない訳です。米国には例外があるのが常で、レジデントを得ずにフェローだけをする例も科によってはありますが、内科系フェローで1,2の人気である消化器と循環器に限って言えば聞いたことがありません。ちなみに消化器と循環器が常に人気なのはそれぞれに手技(内視鏡や心カテなど)が付随するためにスタッフになった時の給料が内科系で1,2に高いからです。消化器インターベンション研修というのは、簡単にいえば内視鏡手技のEUSとERCPに特化した1年の研修です。これらの手技は消化器フェローが習得する手技とされず、超専門研修が必要と位置図けられています。他の消化器内科医が扱わない手技を取得するわけなので、インターベンション研修を終えて職に就くと、消化器内科医の中でも相対的に給料が高くなります。私と同時期に同じ職場に赴任した同僚(フェロー3年終了)と私(フェロー3年と超専門フェローの1年終了)とでは、提示される年俸額が異なります。循環器外科と同じで、あくまでその個人が何ができるかで評価されます。

研修内容を詳しく書くことは割愛しますが、自分が渡米前に受けた日本の消化器内科研修と比べ、米国のそれは質量ともに遥かに上回るものでした。米国フェローを経験したことで私の消化器病に対する理解と臨床力が飛躍したことを本当に実感します。生涯勉強はもちろんなのですが、独立して患者さんを自信をもって診ることができています。内科系専門(フェロー)研修の欠点としては、内科では専門科(私の場合は消化器科)は自分たちで患者を持たずにコンサルタントとしてのみ患者に接するので、フェローになった時から一般内科医としての知識や臨床の勘は抜けていく一方になります。例外的に一般内科と消化器内科の知識を兼ね備えた臨床の巨人のような方を見たことはありますが、それは本当に稀な例外的事項です。私が教えを受けた大学病院ファカルティーである多くの消化器内科指導医達も例外でなく、彼/彼女らは消化器内科専門医は更新していきますが、一般内科専門医の更新はあきらめて一般内科専門医資格を失う方が大部分です。しかし米国で診療する上ではそれで問題になることはありませんし、消化器内科医として保険診療・請求する分にも問題はありません。私個人は、せっかく遠回りして取得した資格ですので、米国一般内科専門医も米国消化器内科専門医とともに更新試験に臨み維持していく考えです。

内科系留学の情報は比較的多いですが、今まで他で書かれてないようなことを書いてみました。もし質問等がありましたらぜひ御連絡して頂ければわかる範囲でお答えします(ytomizawamd@gmail.com)。チームWADA唯一の消化器内科医として、今後もすこしでも皆様のお役に立てるよう頑張ります。

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