Thomas Jefferson University Hospitalの大平です。Challenger’s Live仲間の月岡先生に近況を何か投稿してくださいとお話を頂いたので記させていただきます。月岡先生とは同じ年で本戦に進出し、練習を見て同じ年度卒なのにかなり上手い先生がいるなと思った記憶があります。夜久教授から教えてもらったのですが月岡先生は惜しくも準優勝、自分は少数票ながら3位だったようです。Challengersの良い点はこういった同世代の先生方と繋がりを持つことができたこと、および練習すれば意外とやればできるという自信を得ることができたことかと思います。
大動脈弁置換術が最初の開心術となる場合は多いように思います。高齢者、高リスク症例を対象にTAVR/TAVIがかなり増えてきているとはいえ重要な手術手技であることに変わりありません。弁置換はAS、感染性心内膜炎、解離や形成不能なARがよくある症例なのかと思います。遮断時間を数分でも縮めたいということであれば、やはり運針など全てにおいて無駄な動作を省くということに尽きると思います。ASの除石灰は症例毎に異なり、内胸動脈の剥離同様に実際の症例を経験する中でないと学べないことが多いです。しかし運針に関してはドライラボで練習できます。慣れている先生のAVRを見ていると術者側からであれ、助手側からであれ一発で運針決めていることが多いですよね。以下はよくあるSupra annularに関しての記載です。弁輪に刺入した針を持針器で針を取りにいくか、攝子でとるかなども好みがあるのでしょうが、弁輪にかけた糸をそのままのone motionで人工弁に抜いてくるのでなければ、個人的には持針器で取った方がそのままsuture holderに収めるのには早いと感じています。Rootが極端に小さい症例やMICS-AVRで視野が悪い場合には右冠尖、特にRCCのnadir前後のところで難しい症例があります。これはMVRをSupraでやろうとする時に、Exposureが悪いと前尖側の運針が難しくなるのと同様と思います。verticalから少しずれた順手もしくは逆手のように持つことが可能な場合は上手いことへガールやらカストロを回せると思うのですが、12時の位置に近いところはカストロないしヘガールのフックの真逆の(持針器に対して針の長軸方向に平行に持ち、針と持針器は90°みたいな)持ち方でかけてくるか、へガールなら持針器と針の角度はそのままに順手で掌を完全に助手側向けて針を引っ掛けてくることになるかと思います。針は直針ではないのでこういったところは少し練習が必要かと思います。どうしても弁輪に90°で刺入しようとするとそういった持ち方を習得する必要があると思います。結局これらの角度を術中に考えたり、針を持ち直すことが余計な時間を喰うことになるで、事前に十分と練習してイメージというか自分の中での得意パターンを持っておくことが重要な気がします。
僕は模型を作ったり、ブタを買ったりというような煩雑なことは面倒なので練習はドライラボのみです。止血ガーゼやティッシュでも何でもいいのですが弁輪にみたてた三角形を書き、運針を練習するというのが一つです。記憶は確かではありませんが、名古屋第一日赤の伊藤敏明先生に教えていただいたように思います。オリジナルは楕円形を書いて行うコロナリーの練習法だったかもしれません。
もう一つ今でも結構やっているのはスクラブを着ている時に、スクラブの大腿部分を使う方法です。左大腿内側にできる服のヒダがLCCの弁輪(特にnadirから左右の交連に向かう部分)とほぼ同じ角度になりますし、。右大腿だとNCCとほぼ同じです。自分で適当に服のヒダをいじると仮想弁輪が作れるます。左足を右足の下に組むとRCCのnadirから左側、逆に足を組めば右下腿はRCCのnadirから右側弁輪に近い角度になります(文章だと伝わりにくいですが)。この練習のいい点は深さと弁輪の3Dが模倣できるところです。あとAortotomyですが、これもスクラブ着で似たような傾斜を見つけたらそこで練習できます。Aortotomyを術者側と助手側から縫う施設の場合は連続縫合が順手となるので、さして問題ないと思います。術者側の人間(もしくは助手側の人間)しか縫合しない場合はAortotomyの手前側は体を頭側に振って順針で上がってきて対面の意図と出会い合わせに縛るか、手前を逆手で上がってきて助手側の糸と同じ方向で結び目ができるかのどちらかです。Aortotomy手前の運針は左大腿内側を使うととても良い角度となります。このプレーンは僧帽弁で右側左房切開を閉じる練習をすることもできます。深いところで持針器を回す、攝子で針を取るのを練習したい場合に最適です。手間取ると意外と遮断時間および止血時に時間を喰う重要な部分かと思います。
MVRの練習は以前に坂口太一先生がトイレットペーパーの芯を傾けて固定して、僧帽弁輪に見立てると良いと言っておられ、特にEvertingでやるのには持針器を針の角度の位置関係を把握するのにとても良い練習方法だと思いました。
自分で執刀した後にドライラボの練習に立ち返ると、課題点も含めさらに見えてくるものが違う気がします。あと自分が助手もしくは外から眺めている時に手術を見る際の、術者の先生の動作を見る見方が変わります。AVRの遮断時間が60分も50分、ないし45分でもアウトカムはたいして変わらないと思うのですが、複合手術ではその時間が重要になってくることがあります。私自身も発展途上であり毎回もっとスムーズに早く終わるにはどうしたら良いか考えながら手術に臨んでいます。それは違う、こう思うなどまた何かお気づきの点などあれば御指摘いただければ幸いです。
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